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『明日の名前(多分、普英。)』text ver

※独がEUさんになる話です。
こちらにあります、注意書きと経緯を読んでもOKですよ、というお方のみ続きからご覧ください。

続き

嘘だろ、神サマ、そりゃ無いぜ。
そう、思った。

【明日の名前。】

会議室は今、かなりの人数が揃っていて、ざわざわと賑わっている。
プロイセンはこの所大忙しの弟であるドイツのサポート役として、その会議に出席する事になっていた。
自国の事でさえ色々とあるというのに、EUの筆頭国の片割れを勤めているドイツは元からの真面目な気質も相俟って、この所てんてこ舞いである。
働き者の弟が過労で今にもぶっ倒れそうだったのもあって、プロイセンは自国で検討して来た資料を元に、ドイツと会議前の打ち合わせに身をやつしていた。
「…ふむ。まあ、それが妥当だろう。助かった」
「いーって事よ。それよりお前マジ大丈夫かよ」
仮眠を取らせたのもあって、随分マシになっているが、どことなく顔色がよくない。プロイセンの言葉に「問題ない」と苦笑したドイツに向かって、プロイセンは軽く息をついて「あまり無理すんなよ」と背中を叩いた。そんな遣り取りの最中に、軽やかな足音と共ににこやかな笑顔を浮かべたイタリアが走り寄って来て、視線を向けた。
「凄いよ~~~!今日俺会議に間に合っちゃったよ!遅刻したはずなのにまだ皆揃ってないなんて初めてだよね!急いだかいがあったよ!」
思いっきり矛盾した事を幸せそうに告げるイタリアに、プロイセンは思わず軽く噴き出した。隣のドイツは小さく唸って眉間に皺を寄せて、何というべきか迷っているようだ。
だから、「褒めて褒めて~」と辺りに花を散らすような笑顔でドイツに懐いているイタリアに向かって、プロイセンは笑いながら真相を告げてやる事にした。
「あー、そりゃヴェストに謀られたんだよ、イタリアちゃん」
「ヴェー?」
隣のドイツに「おい、兄貴」と諌められたが、プロイセンはケセセと笑いながら「開始時刻は10時からだぜ」と続けた。イタリアは「ヴェッ?!」とその場で飛び上がって、「じゃあ俺騙されちゃったの?!」と驚いている。
「ウヴェー、酷いよ~~~!朝7時からとか早いと思ったよ~~~」
ぴょこぴょこ跳ねながらドイツに訴えかけているイタリアに、謝りながら「だが今日だって実際には遅れているではないか」と酷くもっともな事を言って説教モードに入ったドイツを横目で見ながら、プロイセンは微かに笑みを零した。最近忙しくて眉間に皺が入ってばっかりだったが、イタリアといる時はやはりどこか砕けた感じがする。元気にああだこうだとイタリアに構っているドイツは余計な肩の力が抜けている。友達というものはいいものだ。
少しばかり二人の様子を眺めていたプロイセンだったが開始時刻が5分前に迫っているのに気がついて、声をかける事にした。出来ればもう少し話させてやりたい所だが、仕方ない。
「ヴェスト、そろそろ時間だぞ」
「ああ、もうそんな時間か」
時計を見たドイツが辺りを見回すと、イタリアが「ランチは一緒に取ろうね~」と声をかけて、それから小さく手を振った。
「じゃあ、また後でね、EU」
「ああ。寝るんじゃないぞ」
「善処するであります!」
「日本風に言ったって容赦はせんぞ」
「ヴぇー」
ドイツに声をかけて踵を返しかけていたプロイセンは、そんな二人の和気あいあいとした会話を聞きながら、しかし青褪めてその場に立ち竦んだ。
(今、なんつった?EU…だって?)
冗談だろ、と言い聞かせた心臓は、嫌な早さで脈打って、プロイセンは茫然とした体で口を開いた。
「イタリアちゃん」
「なあに?」
どの言葉が問いかけに相応しいのか、分からずに喉を詰まらせていると、イタリアが小首を傾げてプロイセンに向けて呼びかけた。
「どうしたの、ドイツ」

to be continued?

普英とかいった割りには英が出てこない罠。
因みに鉛筆落書きクオリティな、漫画バージョンはこちら。(※同じ話です。)