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【幸福】 一体どれだけの人が幸福と呼ばれる日常を送っているのだろうか。 うっすらと目を開けると、陽の光を受けた地上が仄かに光っていた。 ゴールデンウィーク真っ只中の５月４日。 それが自分の誕生日である。 両親はなんていい時期に生まれてきたのだろうと笑うが、牛尾自身は別に自分がいつ生まれてこようが関係なかったし、むしろ損をしている気分だった。 休みの日に生まれてこなければ、きっと損得も打算も無い友人達の『おめでとう』がその日に聞けたんじゃないかと思う。 ゴールデンウィークなんて、家族や友達と、どこかに行こう！と盛り上がっている最中で、誕生日なんて思い出してくれもしない。 別にそれくらいで拗ねてしまう程でも無いが。 確か、中学の間は屑桐が屋上で『おめでとう』、と言ってくれた。 紙飛行機を飛ばしながら。 それまでの自分はそれが一番印象深かった。 青い空に一筋の紙飛行機。 真っ白の軌跡。 それきり、紙飛行機が届く事もない。 屑桐は長年の夢通り、プロ野球選手になった。 活躍は自分の耳にも届いている。 財界の中でも結構屑桐は有名だ。 大学に通う傍らで、父の仕事を請け負い、一番幸せなはずの今日という今日は見栄や欲得だけの名ばかりのパーティーでお愛想を振り撒かなければいけない。 一番の苦痛が待っている。 朝早くから、目覚めて、７時になって、簡素な朝食を取り、テレビを見る。 自分の部屋には文句をいう父も母もいない。 朝のニュースで、今話題の野球選手、をやっていて笑む。 もしかしたら、懐かしい友人の姿を見られるかもしれないと思ったのである。 自分達は高校３年の時、ある事件をきっかけに仲違いをした。 自分は、もう恨んではいない。 屑桐は違うだろうけど。 紅茶を一口飲み、画面を眺めていると、屑桐は自分の思い通りにあっさりと出て来た。 変わらない顔に思わず微笑む。 変わらない物言いに笑ってしまう。 もしかしたら、最高の誕生日かもしれない。 『それでは、屑桐選手、ファンの皆様に一言ありますか？』 『・・・ファンではないが、そうだな。仇敵に一言。 白い紙飛行機をお前に』 その後のアナウンサーの困ったような言葉も、全く耳に届かなかった。 「有難う、屑桐」 きっと自分は今一番の幸福を味わっている。 END †後書き† 屑牛？小説～。 短い挙句にワケわからん。 とりあえず、誕生日という事で急遽思いついたネタ（牛尾さんが幸せなネタ）を２０分程度で書き上げてみたが、こんなに短いのに２０分もかかったのかと呆然とする水野。 とりあえず、牛尾さんハッピーバースデー！ っていうか、こっそり心の中でマ○助に捧げてみる。 水野八百起 ２００４．０５．０４ ≪new[3] NOVEL back≫ [0]TOP。 |