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【ぐー】 本日の猿野天国は非常にイライラしていた。 イライラして血管が切れるかとも思った。 『それ、凪さんが嫌がるんじゃねえか？』 沢松に言われ、（沢松自身は自分がそれを見てイライラするから凪の事を持ち出したに過ぎないが）必死で治した（と思っていた）ハイテンポの貧乏揺すりが復活してしまった。 机の下でタカカカカカ、とドラムノスティックで連打してるような音。 そろそろ机をひっくり返してしまうかもしれない。 それで怒られたら、あの犬のせいだ、と猿野は眉間に皺を入れたまま、足だけでは飽きたらず、指でもテーブルを叩いて気を紛らわせた。 何が、 『デートしよう』 だ。 そんな薄らっ寒いものするつもりはねえ！と食パンをヤツの顔に投げつけた（食べ物は大事にしましょう）のは勿論猿野で、それを食い下がって約束をとりつけたのは犬飼冥。 そいつが遅れて来るなんてどういう事だ。 本当は別れ話しか？もしそうならこっちから離婚状を叩きつけてやる！と注文していたコーヒーの最後の一口を飲み干した時、外の方に賑わしい女のコの声を聞いた。 もうもうと砂塵を纏ながら、やってくる一団。 中心（？）には犬飼冥。 後ろから追っかけてくるのは、地獄の底まで追っかけ隊の女のコの群れと、男一匹辰羅川。 （アイツまで追いかけてるのか…） どうやら、華武のビデオ時の発言は本物のようだ。 まあ、犬飼冥の本当のライフスタイル冥の1日（INエロ版）を知っているのは自分だけなのだが。 人を蹴散らせながらサイの群れのような一団が自分のいる喫茶店に直進しているのを見て、猿野の頬は微かに引きつった。 （おいおい、まさかこのまま入ってくるとは言わねえよな…） いつもは撒いて来る犬飼だが、今日はそうも出来なかったようだ。 （ん？なんだ？） 追っかけ隊がレベルアップしてるのかと思えば、どうやらそれよりも犬飼の動き辛さに原因があるようだった。 （何でタキシード…） 白いタキシード。 しかも赤いバラ付き。 「…」 気絶してもいいだろうか。 このまま裏口から逃がしてくれないだろうか。 春だとはいえ、もう暑い。 犬飼は汗を垂らしながら、バタン！！と喫茶店のドアを開いた。 客の皆様はそりゃもう、なんかもう、本職（ヤ○ザさん）のドンパチに巻き込まれたかのように顔を引きつらせて驚いていた。 「…さ、猿野」 「・・・・・・」 はっきり言って今のこいつと話ししたくねえなあ、と思い少し後退る。 外では何で猿野？！と言うブーイングで五月蝿かった。 中に混じって、辰羅川の犬飼くーん！猿野くーん！という、なんか情けない感じの辰羅川の声が聞こえて怪訝に思い、声の主を探す。 何故か外の辰羅川は必死に謝っていた。 「猿野。俺と結婚しろ！！」 WHY？ してくれ、の依頼では無く。 しろ、とはどういう事だこの野郎、とか的外れの事を思っていると。 「１６歳になったら結婚していいらしい」 くらあぁ・・・。 なんとなく、外で必死に謝っているらしい辰羅川の理由を理解した。 情報源は間違いなくアイツだ。 そして、多分博識なヤツが間違えたわけではなく。 このアンポンタンが間違ったに決まっている。 「・・・っ！！！」 迷惑この上ない告白にふるふる怒りに震えていると、このバカ（犬飼）何を勘違いしたのか。 「猿、そんなに感動するな。よし、誓いのキスだな」 つかつか近寄って。 ぶちゅ――――（嫌な音） ちゅ―――。 レロ。（舌入りました） 「・・・ふ、ぅん」 人が固まってるのをいいことに舌を引きずりだされて、強く吸われて思わず甘い吐息が漏れてしまう。 万物が凍りついたんじゃないかと思ってしまった。 「ぅ、ん」 このバカ犬、頭は悪い癖に身体能力は高め、エロテクニックは最上級。 1年付き合ってのに、すぐにキスだけで溶かされてしまう自分がムカツキ。犬飼が腹立たしい。 腕の中でくたっとしてきた猿野を、犬飼は普段は見せない感じのごっつええ笑顔で。 「可愛いぞ、猿野」 ぶしー！（沸騰中） 「な、なななな」 「よし、このまま新婚初夜だな」 っていうか、初夜じゃねえし。 宣言と同時に押し倒されてしまった。 「いつも通り可愛い声聞かせてくれ」 （『いつも』とか言うなよ！このバカー！！！！） 上着をたくし上げられ、晒された素肌に色付いたピンクの突起に思いっきり吸いつかれて体が跳ねる。 「ぁっ！」 ふと、なんか悲鳴の代わりにギンギンと光る目で此方を注目している追っかけ隊と目があった。 「・・・・っつ/////！！！！！」 しかも手は性急に下肢に伸びている。 ぷっつんと何かが猿野の中で切れた。 「こんんのおおおおバカ犬ぅぅぅぅ！！！結婚は十八からじゃあああああ！！！」 下からの強烈なアッパーに犬が紙切れのように吹っ飛ぶ。 べぐしゃ！と嫌な音をたてて潰れた犬を一瞥して、ドアを突破して猿野は逃げた。 何故か今まで一度も聞いたことの無い婦女子の熱い黄色い声を聞きながら。 「・・・その前に男同士は結婚できないのですが・・・・」 辰羅川の正論は黄色い声にむないくかき消された。 ＥＮＤ 続く≫ ≪new[3] NOVEL back≫ [0]TOP。 |