七転八倒堂

【昨日と今日の条件】

昨日と今日と明日と。

一体どれ程違うと言うのだろうか。

「おーい、犬」
「何だ、猿」
「猿って言うな」
「お前こそ犬って言うなよ」
不毛な会話を挨拶のようにお互い交わして、屋上に寝そべる。
「…お前、授業はどうした」
「そりゃこっちのセリフだっつうの」
犬飼の言葉に空を見上げていた天国が犬飼を見る。
「…眩しいし暑いしよ。授業出てた方が幾分ましってもんだろー？」
「俺は体育だ」
「…あー、そりゃダレるわ」
苦笑して納得したような天国に犬飼は頷く。
「でもお前さ、水泳だべ。水の中だぞー？気持ちいいじゃねえか。あ！ははーん！お前さては金槌だろ！」
けけっと笑う天国を犬飼は睨みつける。
「違う」
「そのガングロも泳げないから浜辺に横たわってた結果だろう！さすが名探偵猿野様！」
仁王立ちで笑う天国を犬飼の手がぐいっと掴み、引っ張る。
「バカと煙はなんとやらだな、全く。そんな所で突っ立ってたらすぐに見付かるじゃねえか。」
「あ？うお、危ねえ！」
急に身を低くする天国の体と犬飼の肌が少し、触れる。
「…で、お前は何でサボってんだ？」
「あー？俺はさあ、あれだよ。現国の先公が嫌なんだよ…」
別に成績が特に悪いと云うワケでは無いが、苦手だと思っている。
「お前んとこも同じだろ？『昨日と今日の条件は何だ？』ってさあ…昨日は昨日、今日は今日だろー…」
げえ…と舌をだす天国に犬飼は口の端を上げる。
「こういうの、辰っつんが得意そうだよなあ…。お前も苦手な感じだろー？」
同類じゃあ！と少しバカにした(自分だって同じだろうに)天国に、犬飼はふん、と鼻を鳴らす。
「分かんねーのか？」
「な、何だよ、お前分かるのかよ？！」
口をぱくぱくさせて慌てる天国の額を押す。
「昨日はお前がいなくて、今日はいる。それだけの事だろ」
「…っ、犬、不意打ち過ぎだろっ！」

どうやら現国が好きになりそうだ。

END

　

†後書き†

暇だったので打ってみた突発SS、いや、たまには更新せねば…
2004.05.29

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