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【生与奪権】 「御柳…お前顔色が悪いんじゃないのか」 ぼけー、と。屋上のコンクリートに大の字になって空を見上げてると、突然声と一緒に彼…華武校きってのエースピッチャーにして、現在野球部部長屑桐無涯の顔が太陽を遮った。 それに御柳は逆光と、その光に慣れた目のせいでまっくろに見える屑桐の顔にピントを合わせようと目を細めた。 「オハヨー、屑桐さん」 「…何が『おはよう』だ、馬鹿者め。今は昼休みだぞ。今の時間ならば今日和が適切だろう」 律儀に挨拶のレクチャーを返してくれる屑桐に御柳は『く』と口の端を持ち上げた。 「もしかして貴様ずっとここで寝ていたのではあるまいな」 「寝不足はお肌の敵なもんでー…」 相変わらずぼへーとした口調で言うと、やっと見なれて来た屑桐の眉間に皺が増えるのが分かった。 「あはは、何、怒ってんすか？ちゃんと朝練出たのに？」 「それはお前にしたら感心だがな。授業にもちゃんと出ろ。学生の本分だろうが」 「オベンキョ嫌い～。屑桐さんが教えてくれるなら別だけどねー。恋のＡＢＣ！教えてくれね？」 アハハ、と笑うとドス、と軽く腹に蹴りを食らった。 「…げほっ…屑桐さん容赦ねえ…」 「貴様が殺してくださいと言ったからだ」 「言ってねーっす…（泣）屑桐さんのイケズ」 「…もう一度食らいたいようだな？」 「わー！！もういいっす！！いいっす！」 慌てて起きあがって、腹を庇う。 「ふん。分かればいいんだ」 鼻息荒く、隣に立ったままの屑桐がやっぱり太陽を遮ったままなので、少し涼しい。 「…」 少しまたぼんやりとそのまま眼下に広がる町並みを見下ろす。 「…」 「それで。」 「？」 「お前、体調が悪いんじゃ無いのか？」 相変わらず平坦な声で言われて、突っ立ってる屑桐を見上げる。 「そんな事ねーっしょ。俺健康優良児だもん」 「…気分が悪いならこんな所で寝てないで保健室で寝たらどうだ」 「…アンタ人の話聞いてる？」 「ちゃんと飯は食べているのか」 「…」 全くこちらの言葉なんか聞くつもりじゃ無い屑桐に芭唐は不愉快そうに顔を顰めた。 （…この人、人にはいつも『ちゃんと人の話は聞け』って言う癖に―――…） と、はたと気付いて、屑桐の顎のラインをマジマジと見る。 （俺の『話』は『話』じゃねえんだ…） 嘘の言葉だから、この人は無視しちゃってくれてんだ、とちょっと可笑しくなって口を僅かに開く。 「ねえ、屑桐さん。」 「なんだ」 「アンタなら俺を殺してくれる？」 アンタのその潔い球のように。 「人の話しを聞けと言ってるだろうが。」 呆れたように、さっと真紅の目が王者の威厳を纏って此方を向いた。 「答えはＮＯだ。」 「そうか」 ちょっと残念だった。 アンタなら俺を殺してくれると思ったのに。 一片の肉片すら残さずに。 「それよりも。早く昼を食え」 （おいおい、人が折角シリアスに決めてたのに、『それよりも』だってよ） 皮肉な気分になりながら、「へいへーい」とバブリシャスガムを口に放りこむ。 「まさかそれで終わりだと抜かす気ではあるまいな？」 「終わりっすけど。」 「…これはお前の自前だからな」 ぼさっと購買部で買って来たらしいパンと飲み物が膝上に落ちて来て、目を瞬く。 「…これ、屑桐さんのじゃねえの。」 「それはお前のだ。俺には自分の弁当がある」 嘘だ、と思って、そういえば、緊縮財政、主夫屑桐が安上がりですむ弁当以外を食べているのを見たことが無いと思い出す。 「…」 「死ぬのは、いつでも出来る。腐るのもな。一番大変なのは、生きる事だ。期待してるぞ、４番バッター」 「…」 そんな言葉を屑桐からかけてもらうのは初めてで、ぽかんと口を開いてしまった。 「ではな」 そう言って踵を返した屑桐の体の端からさあっと太陽が照らしだして、御柳は再び目を細めた。 「日陰で食えよ」 バタン、と扉が閉められて、息が口から漏れる。 「っは！あはははは！！」 確かにアンタには俺を殺せないよ、と笑い上げる。 とても愉快な気分だった。 久しぶりに、爽快。 気付かなかったが、真夏の太陽から御柳を守ってくれていたのだ。 そういう経験なんていうのは、全く無かったもので、凄く新鮮に感じた。 「いいね…あんた、いいよ」 紙袋の中から出て来たヤキソバパンを齧りながら、呟く。 「やっぱり。俺を殺せるのはアンタだけみたいだよ」 END ＝懺悔＝ ちょっとよく分かりません（いつものこと） うふふ～。あはは～。芭屑お題以外で書くの初めて～！ もっと書きたいなあ。芭屑好きだー！！！ 腹痛い～！！（一緒に叫ぶな） 続く≫ ≪new[3] NOVEL back≫ [0]TOP。 |