七転八倒堂

「おい」
つかつかと歩み寄ると、猿野の驚いたような顔と、口角をあげた兎丸の顔が目に映った。
「なぁに？犬飼くん。僕今兄ちゃん口説いてるとこなんだから、邪魔しないでよ」
その言葉に眉を寄せる。今の言葉遣いはギリギリだと思う。
猿野の言葉が脳裏を掠めたが、ぐいっと猿野の頭を自分の方へ寄せて口を開く。
「俺のだから、手ぇ出すな」
「…ちょっ、犬！」
「あはははは！」
驚いたような焦りの混じる声に重なって、笑い声が響いた。
「何がおかしい」
「だって～」
「ようやく言ったNa」
「遅かとよ」
「まあ、別に言う必要なんて無いけれどね。」
「まあ、そう也。しかし」
「見ていてイライラするのだ」
「…な、な…？」
「皆さん気づいてるっすよ？」
どもる猿野の隣で珍しくいた子津が、笑いかけた。
「あはっ！気づくなっていうのが無理だよー。僕らがどれだけ、お猿の兄ちゃん見てたと思うの。ね、司馬くん！」
こくり。司馬が頷いて、二人呆然とする。辰羅川が小さく溜め息をついていた。
「…もう、あのままだったら僕が兄ちゃん奪ってたよ？」
「…お前ら…」
猿野がいまだ呆然とした顔つきでそれぞれに笑みを掃いている顔を眺めた。
「僕らが、お猿の兄ちゃんが不利になるような事すると思う？」
「猿野くんも犬飼くんもここにいて貰わ無いと困る存在だしね」
「ふん。犬飼なんていなくとも僕一人で抑えられるのだ」
「…鹿目くん…」
「…だから、お猿の兄ちゃん泣かしたりしたら容赦ないからね？お猿の兄ちゃんも、幸せになんないとダメだよ」
毅い目が二人を射止めた。

一拍置いて顔を見合わせる。

「「…ああ！」」

心の中の棘はもう
無い。

END

　

†懺悔†

暦様999HITリク、ここまで読んでくださった皆様、有難うございました！
リクは犬猿の猿総受け風味ー…でしたが…あんまりそんな感じになりませんでした…(沈没)
最近はこういうのが多いですが、如何でしたでしょうか。多分…思い描いていらしたのと違うんじゃ無いかと思うのですが(てゆか私がそう思う)、少しでも楽しんで貰えれば幸いです。

2005.04.06
水野やおき

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