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※月くんが犬です。 【飼い主】 "くぅん" 可愛らしく鳴く子犬が足元にじゃれついて来て、私は困ってその子犬を無言で見下ろした。 "くぅん" 何とも愛らしい茶色の子犬に、「私、小動物は苦手なんです。君ぐらい可愛ければ、貰い手は沢山ありますよ」と囁いてみたけれど、通じないのか"きゃん！"と嬉しそうに鳴いて私の足にすり寄った。 一歩、 二歩。 ５０歩まで子犬を引きずって、はぁ。とため息をつく。 待遇、よく無いんですからね、と諦めてその子犬を家に連れ帰ったのが、５年前の事である。 はぁ。 私はまた、溜め息をついた。 子犬の成長は、早い。 「りゅーざき！またお菓子こぼして！」 ５年も経てば立派な成犬だ。手はかからない子犬ではあったが、昔は私があれこれと世話をしていたのに。 「竜崎！だから出したら片付けろって言ってるだろ？！」 今は小姑のように私のする事なす事に口を挟む。 その体躯は最早私と同じくらいに立派に成長している。 「…月くんうるさいです…」 「お前が飼い主らしくないからだろ？！」 「…昔はもっと可愛いかったのに…」 ボソリと呟くと今では立派な成犬の月くんは、キリリとした形の良い眉をつり上げて、口元に笑みを刷いた。 「…ふーん。そういう事言っちゃうんだ、竜崎ってば」 あ、しまった、やばい。と思った時には後の祭りだ。 「じゃあ、たまには飼い主らしい事、して貰おうかな？」 「お、お断りいたし…」 むぐ。 『ます』まで言えないまま、やにわに口を封じられた。 「…ん、ん」 思わず喉を鳴らす。 「…可愛い、竜崎」 にこやかな笑顔で言われて、私は半眼で睨み返す。 これじゃあ、やっぱり立場が反対だ。 盛って押し倒してくる、立派な体躯の犬の髪を梳きながら、 飼い主の務めとやらを果たすべく、私は掠れた声を上げた。 おわり。 ……………………… 懺悔。 拾われるＬはよく見かけるので、月くんを拾ってみました(笑) 大人になると人間に成長するという大変凄い犬の設定です★ 2007.08.18 NOVEL [0]back |