僕も同じ気持ちだ、と。」



『Call』







 12月の風はとても冷たい。

 月は花など1輪も無い墓地に花束を贈る。


「全く、長い任務を与えてくれたよ、お前は」
 墓碑銘は夜神月と書いてある。
「どうかな、少しは気に入ってくれたかな?Lの名前を受け継いだから、せめてお前の眠る場所の名前くらいは、僕の名前にしたくてね。」
 どうかな、贈るものはそれぐらいしかなかったから、と月は笑う。
「死神がいるくらいだから、幽霊にだって会えても良さそうなものだけど。お前は出て来てくれないし。だから、お前に一言も言ってやれないし。」
 そう言って月は枯れ木の前に座る。
「しかし、リュークの口を割らせるのは、滅茶苦茶苦労したよ。規則、規則だってね。でもまあ、あれだけ楽しませてやったんだから、少しくらいは見返りがあったっていいだろう?そんなワケであいつは人間に格下げされたよ。面白いな、死神界のルールっていうのは。それで、あいつに押し付けてやった。僕の後釜を。あれで退屈しないで済むんじゃないか?結構大変だからな、Lは」
 目を閉じる。
 北風が頬を嬲って、いつかのLの手が思い出された。
 冷たくて、とても気持ちの良かった、手。

「さあ、役目は終わる」



 最後は、彼の、自分の墓標の前で。



 月は息を引き取った。































「お疲れさまでした」
「・・・本当にお疲れだったよ。」
「でも、退屈しなかったでしょう?」
「・・・・・・・・・お前、まだ根性が悪いよ」
「夜神くん程ではありませんけど」
「でも、L。お前の推理は外れてるよ」
「そうですか?」
「ああ。だって、お前がいないった」
「・・・・」
「本当にお前にはムカツイてるよ。デスノートで自殺しないように。殺されないように、僕の名前を3回間違えて書いていきやがって」
「はあ・・・すみません」
「しかも、自分一人べらべらと。僕が一言も話す暇も与えずに。」
「・・・時間がなかったもので・・・」
「それでこんなに遅くなってしまった」
「・・・・」
「でも良かったよ。お前は幽霊になって出て来てもくれないし」
「無理でしたので」
「まあ、触れないんじゃ、満点じゃないから。今があるから良かった。僕は完璧主義者なんだ」
「そうですね。それで・・・どうするおつもりですか?私殴られたりするの、嫌ですよ。」
「・・・馬鹿だな。肝心なところで疎くてどうする。僕のあれからの生き様をみてたんじゃないのか?」
「いえ。下のことは見れないんです。ただ、話しに聞くだけ」
「そうか。でも、僕の言動でわからないか?鈍いな」
「ええと、それは」
「一回は、一回だからな」


「!!!!!!」


「僕も同じ気持ちだよ。L」



 月は晴れやかに笑った。
 Lはびっくりして、唇を抑えた。顔は真っ赤だ。


「僕も本気なんだ」


 かつて、不意打ちのようにされたキスの仕返しをした。
 それから、棒立ちになっているLの手を掴む。

 やはりLの手はひんやりしていた。
 それがとても月を安心させる。


「L。L。お前が好きだよ。本当に全くもって、器用なんかじゃない、お前がね」





Call −Fin−

2005.07.07


……………………
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