窓の外に雪の子が舞っていた。


『降り積もる事も能わず』


 くすくすと控えめな笑い声が室内に響く。
 メロは眉間に皺を寄せて、笑い声の主を振り返った。
「L。笑ってないで、手伝えよ」
 Lがふらりとニアとメロの所へとやって来たのはクリスマス当日の事。
『こんにちは、ニア、メロ。クリスマスパーティーをしましょう!』などと、ふざけた事を抜かして、彼は笑顔と共にやって来た。
 メロは正直、幾つになったと思ってるんだと思ったが、Lの言う事では逆らえない。無論逆らうつもりも無い。
「メロ、飾りを踏んでいます」
「ぁあ?」
 色とりどりの飾りが床に散らばっていた。中にはニアの手作りのものも混じっている。メロにしてみると、そんな細かい作業をよく自らしたいと思えるものだな、と思った。
 午前中に現れたLは問答無用でニアとメロを外へと引っ張りだした。引きこもりなニアもこの時ばかりはずるずると引きずられてゆく。外出の目的は今現在手にしているクリスマスの為の物資の調達だ。
 キッチンからはいい匂いが立ち込めてくる。それもこの飾りつけの前にメロ達が格闘した成果だった。この飾りつけが出来上がる頃にはそちらの準備も整うだろう。
 メロは調理中、火傷を負った。ニアは器用な癖に指を切った。Lはといえば、その間中、にこにこ笑っていて、つまみ食いをしただけだ。大方は。
「この飾り全部つけられるか?」
 床に散乱した飾りの他にも、その内焼きあがるカナッペやジンジャークッキーなどもぶら下げなければならない。大きな、大きな3人では大きすぎる程の見事なツリーではあるけれど、飾りも相当あるので、そのスペースがあるかどうかもよく分からないと、メロは足蹴にしてしまった銀色のふさふさから足を退けながら思った。
 だからよした方がいいと言ったのだ。今日のこの一日の為にこんなに買い込んで、絶対に余るのは目に見えているのだし。
 そう思う一方で、メロも唇を緩めざるを得ない。
 そういう何気ない事が胸に沁みるほど幸せだったからだ。
 ロジャーもワタリもいない。院の子達も今日はいない。
 けれども、いつもと変わらない顔のニアがいて、それから、Lがいる。
 にこにこと笑っているLがいる。
 それだけで、幸せ。
 後でホットチョコレートを淹れようと思う。
 きっとLが喜ぶ。



………………………
・あとがき・
どうも、水野です!
実はコレ、2005年のクリスマスにアップしたLMN作品(メロ視点)なのですが、サイトを移転した際にアップが遅延してそのままになってました…。
2部の展開にニアメロ頑張れ!という意味も込めてグラグラしながら書いたのでラストがハッピーエンドではないのですが、まあ、いいか…。(よくねえよ)
とにかく、再アップです。
今、春だよ…!orz
後、6回くらいですが、宜しければお付き合いくださいませー。
(因みに題名の『能わず』は『アタわず』と読みます(確か)。意味合いは『〜出来ない』という意味だったと思います)



再アップ2007.04.25


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