手料理を作るのに決まったのは、Lの『手作りの方が愛情が篭っていて美味しい筈です。いつもワタリの料理は美味しいんですよ』があったからだ。
 メロはそれがワタリが作って、尚且つ愛情が篭っていたからで、素人が集まって幾ら愛情を込めた所で同じようになるはずが無いと思った。
 けれども、まあ、たまにはそういうのもいいだろう。昨今では料理の出来る男の方がもてる。…まあ別に好いてもいない相手に好かれたいワケじゃないけど、それは有意義なことかもしれないと思ったので、参加する。
 Lと一緒にいる時間はそれだけ貴重で大切なものだったから。
「Σおあ!ニア!お前何細工作ってんだよ!人参でロボットを作るな!てゆーか、材料が減る!いや、その前に勿体ないだろ!食べ物で遊ぶな!!」
 3人で(主にLは指を咥えて背後から見ているだけだったが)ローストビーフやら何やらの下準備に追われて、シチューに入れる人参の細工を施しているニアの悪戯に気づくのが遅れた。
「おい、L。見てたんなら止めろ―ってイチゴを食べるな!」
「…きっとこっちの方が美味しいのに…」
「…いえ、このイチゴが誘ってまして…」
 あまり悪気を感じていなさそうに呟く二人に、メロの額に血管が浮かぶ。
「ごめんなさい、メロ。反省してます」
「…私もです」
 Lが言い、ニアもそれに続く。二人とも、メロが本気で怒りかけているのを察して素直に謝った。
「じゃあ、Lはオーブンに入るケーキの監視をきちんとしてろ。Lの好きなイチゴケーキになるんだからな、焦がすなよ。…それからニア。お前は普通に切れ。どうせ煮崩れするし、シチューの中からロボット型の火の通ってない人参なんて嫌だからな」
 分かりました。
 二人とも折り目正しい返事をしてから、与えられた仕事に戻る。
 何だかんだ言って、いつもメロが大方を仕切る羽目になる。こういう場合は。
 それでも、だけど。
 メロはこれに飽いた事は一度も無い。
 数分後、メロはちらりと見遣ったニアの手からだらだら出血しているのを目撃して、叫び声をあげた。そして自分はその際に火傷を負った。
 ニアの言い分は「簡単な作業ほど真理に近くて難しいんです」だった。



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・あとがき・
最後に落とすのがとても怖い水野です。
落とすといっても、びみょーな代物ですが、なんでクリスマスにこのままホンワカと終わらせなかったんだ…という気分です。
なんだ、病んでたのか?アレー?



再アップ2007.05.17


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