それで、それぞれの料理が煮込みの段階等に入り、飾りつけに移った。
 飾りつけを作って、たまには暖炉の傍で温まって。Lが日本の七夕という行事の話しをしたので、何故かツリーにお願いごとを書いてみたり、ツリーのてっぺんの星を金色にするか銀色にするかで争ったり。(因みに今回ばかりはニアが勝った。てっぺんには金色の☆がぴかぴかと輝いている)
 飾りつけが終わった頃に料理は程よく出来ていて、デコレートをしたり(ニアの担当だ)味見をしながら(専らLが担当した、甘いものに関しては)完成にこぎつけて、ちょっとしょぱかったり、ちょっと甘すぎたりする、それでも美味しいと感じる料理を飾り付けしたツリーと散らかったままの床を娯楽にして平らげた。
 いつもは普通の料理はあまり食べないLが完食したので、ご褒美にケーキを二切れあげる。
 お腹が膨れてホットチョコレートを飲み終わる、穏やかな時間が訪れた頃、外はちらちらと雪が降り出した。
 Lが「雪です」と呟いて、ニアが「ホワイトクリスマスですね」と言い添えた。
 メロは「本当だ」と言って窓の外を眺めた。昔は院の子供たちと雪合戦とかをしたものだ。勿論、この場合はメロが一位だった。

「二人とも、外に出てみましょうか」
 Lが言って、メロとニアは顔を合わせた。
 外は寒いだろう。何しろ氷点下。それに外はもう真っ暗だ。雪の降るのなんてきちんと見えやしない。
「きっと綺麗ですよ」
 言ってLが緩やかな表情を向けるものだから、ニアもメロも頷いた。
 寒いのは分かりきっているので、コートを着込んで、外に出る。
「雪だ」
 メロは思わず声をあげた。雪が降っているのは分かっていたけれど、積もっているとは思わなかったのだ。一面、敷き詰めるように白い絨毯が広がっていて、息を呑む。
 何時の間に、こんなに。
「まるで異世界のようです…」
 隣のニアも現状の光景に呼吸を詰め、それから呆然とするように吐き出した。
 外は夜であるというのに、月明かりも伴って白銀に一面が輝いている。
 その夢のような世界をじっと食い入るように見つめているメロとニアに酷く静かな声がかかった。
「ニア、メロ。申し訳、ありません」
 ゆっくりと繰り出される言葉は何かの魔法がかかっているように、二人を縛る。
 「何が」とメロは問いたかったが、寒さのせいか強張った唇は開いてすらくれない。
「仕方ないことではありますが―…あんな形で意思を継がせる気は無かったのですが」
 「何のことだ」一瞬で頭はパニックに陥った。
 何、何を言っているのか、Lは。
「それでも、嬉しく思います。…とても、嬉しく思います」
 高潔な声が背後から聞こえる。
 きっとLは今、事件を前にした普段とは違う顔をしているのだろう。…いや、先ほどまでのLが普段とは違うLなのだ。どちらも同じLではあるけれど。
「あなた方はどうか、無事で」
 祈りの言葉に背筋が震える。そんな言葉、まるで最後のような。
「それでは、とても楽しかったですよ。…もうお帰りなさい」
 どういう意味だ、と思った。Lがやって来た筈だ。僕らのいるワイミーズハウスへ。
 そう思って、違う、と判じる。ここはワイミーズハウスなどではない。
 ニアを視線だけで見遣る。彼も大きく目を見開いていた。
 そうだ、僕が。僕らこそが客人だったのだ。
 家は遠ざかる。暖かい光も心の温もりも残して。
 彼は遠ざかる。力と指標と気高さを贈り物にして。
「愛してますよ、メロ、ニア」
 ゆっくりと脳内だけに優しい言葉は残り、消えた。


 朝日がメロの瞼を刺激した。
 目を覚ますと頬の一筋がとても冷たかった。
 組織のアジトの中、調度のいいベットもあの頃の硬いベットには及ばず、凍るように冷たい。メロは苦く笑って、窓の外を見た。
 うっすらと白いそれは朝日に輝いて、溶ける。
 ああ、高潔であった彼のようだ。
 メロはそう思った。
 多少食い意地は張っていたし、我侭なところもあったけれど。
 優しく包む、その白さは積もる事も叶わず、人の足に踏みにじられ、陽光に溶けて混じる。
 強く手を握った。
 虚無感と、激しい寂寥感が襲う。4年が過ぎた今でも堪えきれない。
 堅く詰めた息を出来るだけゆっくりと吐き出す。
 歪んだ視界に火傷を負った手が見えて、唇も歪む。

 彼がいなくなった時に欠いた優しさや、暖かさはあの家に置いていこうと思う。
 これが僕らへの。オレ達へのクリスマスプレゼントと言うのなら。
 全てが終わればあの家に置いたものを取りにいけるだろうから。
 きっとまた会えるだろうから。

FIN



………………………
・あとがき・
クリスマスなのに!!
吐き気と頭痛とその他もろもろと格闘しながら25日早朝?水野です。
ますます呆けた頭で最終手段的にコレを書き出したのが24日の事。どうもこうも見返して修正なんぞかけられません。それなので、辻褄があってないところがあったらごめんなさい。そして更にごめんなさい。そしてもっとごめんなさい。
何かもう何にたいして謝ってんのか分かんないけど、Lたんが○んだ事になってるのが一番ごめんなさいでした。あー…。生きていて欲しいとは思いますし、生きていると思っていても、いや、そう思っているからこそ、書いてしまったのロンリー。
とんだクリスマスのプレゼントもあったもんだ。
そして、カップリングですらないと来た。妙に長いし。
ここまで読んでくださって本当に有難うございました。
日ごろの感謝も込めて。
有難うございます、メリークリスマース!キリスト誕生万歳!=Lたん万歳!

水野やおき2005.12.25

↑という感じだったようです。2007.5.21。(笑)
かなり微妙なテンションです、いつもですが(笑)うわ、恥ずかしい!
そして、この時点ではまだメロもまだ…でしたので、凄い二人にエールを送っていたのを思い出しました〜。
今はもうお疲れ様でした!ですが…。なんだかセンチメンタルです★
しかし微妙なお話でしたが、少しでも…こう、暇つぶしにでもしていただければ幸いです!!
最後までどうも有難うございました!
再アップ2007.5.21




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