【kiss】



すん、とLが鼻をひくつかせる音がして、月はLを見る。
「…L?」
 すんすん、と今度は月の肩に手をかけて、鼻先を月の髪にくっつけた。
「甘い匂いがします」
「…シャンプーの匂いだろ…」
「触っていいですか?」
「…いいけど、別に」
 そう返事を返すと、Lは最初は指先で、今度は手の平も使って、月の頭を撫ぜる。
 時折匂いも嗅ぎながら、Lの手は月の首筋に移行した。
 首筋をなぞり、耳を確認し、頬を撫でる。
 ぺたぺたとLは月が怪訝な顔をするのに構わずに、月の顔を触診し始めた。
 瞼、眉、鼻梁に、唇。
「…おい、一体何なんだ…」
 月がLの手を捕まえて、そう聞くと、Lは瞬きをしながらこう答えた。
「月くんの形を覚えておこうと思いまして」
「僕の?」
「なんとなく、気配で月くんだと分かるのですが、月くんの形とか、匂いとか。覚えておきたいじゃないですか」
 またLの顔が月の顔の近くにやって来て、今度は小さな接触があった。
 Lの黒髪が月ほ頬を優しく撫でる。
「何故そう思う?」
「何故と言われましても。私は目が見えないので…」
「いや、違う。そういう意味じゃなくて…。もし、ここに知り合いがいたら、そうしたか?」
「?…知り合いにもよりますけど、してるでしょうね」
「…あ、そう」
 がっかりしたなんて気付かせてはいけない。月は全身に気を配って言う。
 Lに、惹かれている。それはもう気付いた。
 それが、友人という関係以上になりたいんだという事にも、もう。
「好きな人の事を知りたいと思うのは、当然の欲求でしょう?まあ、他の人なら、ここまでしませんけどね」
 首筋に暖かな息がかかった。月は思わず捕まえているLの手を強く握った。
「月くん?」
「…じゃあ、もっと知ってくれ」
 今度はそれはどんな意味だと野暮な事は聞かなかった。
 心臓がドキドキと波打った。
 胸いっぱいに広がる充足感に、熱くなる。
「L」
「わ」
 名を呼んで、Lの手を開放する。代わりに、膝立ちになっていたLを自分の膝の上に抱き寄せた。
 いきなりの変化に戸惑って固まった体に手を沿わせ、頬に手の平を沿わせた。
「僕を」
 唇を触れさせる。
「これが、お前が今触った、唇だ」
 仮死状態にひっくり返った動物のように動かないLに、月は微笑を浮かべる。
「L」
 壊れ物を扱うように、優しく触れた。
「ラ、月く…ん…」
 戸惑ったようなLの声。最後は震えを含んだ甘い響きを伴った。
 ん、ん、と鼻にかかった甘い声が進入した舌が動くのと同じにLから漏れる。
 頬に触れた指先で、Lの輪郭をなぞると、Lの肩がぴくりと震えた。
「僕も、お前をもっと知りたいと思っていたんだ」
 やり場の無くなったらしい、月の服を掴む手に、触れる。
 Lのやせ細った手の平を、指の先を確かめるように触れた。
 ついっと引き寄せて、唇で触れてみた。
「もっと、もっとね」
 小さな息を繰り返している、Lに月は微笑を向ける。
 どんな女の子にも向けた事の無いような甘い笑顔で、声でLに向かう。
 Lは息を整え、顔をそむける。「こんなつもりじゃありませんでした」と呟くLに「もう遅いよ」と声をかけた。
「…こんな風に女の子も口説いているんですか?」
「そんなわけないだろ?」
「そうですね、そうだと有難いです。凄く心臓がドキドキします」
「僕もだ、L」
 Lの手を自分の心臓の上に招く。「一緒ですね」と柔らかい声が唇から漏れた。
「月くん…」
「L、そこは僕の鼻先だよ」
「目標を誤りました…」
 月の笑いを含んだ声に、Lが多少憮然とする。
「いいよ、何度も繰り返せば、間違うことも無い」
 言って、月は心臓の上に留まっているLの手をゆっくり這わせて、確認させる。
「もう一回してくれるか?」
「…何度でも。」
 Lの唇が静かに近寄ってくる。
 月もLのように、目を閉じた。



懺悔。
18禁かなんかになる予定でしたが、目標を誤りました(笑)
キスだけで終わってしまったー。
いや、「キスシーン書いてなかったなー、それじゃ、やっぱりそこから入れないと!」とか思って書いたんですよ。そしたら、長くなりすぎた。
おおう。
エロたん…じゃない。Lたんは目が見えないので、きっと感度が物凄いことになっています。月はじっくりとLたんの隅々まで触って、逆に触らせるといいと思います。Lたんは確認するために触っているので、予想もつかない動きをしてくれると思います。
月・L・フォー!(何事!?)
…Lたんをシーツの上で泳がせたい、今日この頃…(いつもだろ、と言われそうです)

2006.05.03


残酷ピエロは3度啼く

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