STAGE:1
【僕とボディーガード】#11


「何で、黙ってた?」
 二人きりになって、静まり返った静寂の中、月は窓の外の夕日を眺めながら、背中越しに座っているLにバイクから降りようとした時に気付いたことを告げる。
「僕が試そうとしているのに、気付いていたんだろ?真実を言えばお前が汚名を着ることは無かったんだ。だろ?」
 そして、口許を歪めて苦笑する。
「…隠した理由は何?やっぱり僕なんて守る価値が無いから、ついでと思って辞めようと思った?」
 とんだ皮肉だが、Lが月が計画をたてる前からこうするんじゃないかと勘付いていたように感じた。
 そんな子供、確かに守りたくないわけだ。
「きっと、僕のせいで、皆はウチを辞めることになってしまうと思うけど―、お前は責任なんか感じなくていいよ。僕のボディーガードが嫌なら、その上でやめて、いい」
 黙ったままのLに、月は次々と言葉を投げかける。
 言いたいことだけ言い切って、月が押し黙ると、部屋には再び沈黙が落ちた。
「…それじゃ、もう会うことはないと思うけどー…、粧裕を助けてくれて、ありがとう」
 その沈黙に耐え切れずに、口の中の苦さを噛み潰すように吐き出して窓の桟にぐっと力を入れた。歪んだ顔をいかに見られないようにして足早に部屋を出て行こうとすると、やっとLが口を開いた。
「月くんこそ、私が辞めたほうが良かったんじゃないですか?」
「僕はっ!…そんなことー…」
「『今は思ってない』、ですか?」
 ピタリと止まって振り返ると、少しだけ頭を傾けたLのシルエットだけが見えた。
 先ほどまで夕暮れのオレンジの太陽ばかりを見つめていたせいで、Lの表情は読み取れなかったが、月は頷いた。
「私のスタイルは変わりませんよ?糖分は山程摂取しますし、月くんの観察だって続けます。片時と言っていい程、傍から離れることもないですし、疲弊してしまうのでは?」
「…分かっててそれを実行するのか、お前はー…。それとも、もしかして、僕に断って欲しいと思ってる?ならー…」
「そんな事は言ってません。いつ私がそんなことを言いましたか」
「けど、お前最初に会った時に『嫌だ』って言ったじゃないか」
「でも、引き受けると言ったはずですよ?」
「嫌々なら、お前に悪いと思ったんだ…」
「殊勝なことも言うんですね」
「…やっぱり嫌なんじゃないのか…?」
 先ほどから決定的な一言をくれないLを月は懐疑的に凝視した。陽光で焼けた視界が段々と細かな明暗を取り戻して、Lの表情がやっと月の目にも認識できた。
「今は『嫌』だなんて、言ってませんよ、夜神くん」
 柔らかい、表情が目に映った。
「私が黙って辞めようとした理由、教えましょうか?優秀なボディーガードが守るのは、何も身体だけじゃないんですよー…」
 初めて見る優しげな表情が一転して、ニヤリと口角が上がる。
 胸をトンと指さして、人の悪い笑みをLは浮かべた。

 ―心も―


 その時、僕のLに対しての感情は…、
 初対面の時よりかは、少しはマシ。
 …かな?



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・あとがき・
月くんのLへの心象が少しよくなった所で、第1ステージ終了ですー!
第2ステージからは、ウハウハ男子寮・共同生活ですよー!(笑)
でもまだ全く進んでないので、しばらく『裁きの剣』の連載をいたします!宜しくお願いします!!
ジュワ!(逃)

2007.06.27 update


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