■【タイム・リープ〜凍結氷華〜】■ 03

※軽度の性表現が混じります。


いっそ竜崎がこのまま永遠に起きてこなければいいのに、
と思った。


【タイム・リープ】
〜凍結氷華T〜#3


竜崎のように膝を抱えて、さながら体育座りのような格好で月は唸った。
あの瞬間から心臓がドキドキしっぱなしで、絶対にこのままじゃ心臓に悪い、と思っても心拍数は緩まる気配がない。
竜崎は一体何を分かったというのだろうか。月が竜崎に恋をしているということが分かったのか、はたまたそうでないという事が分かったのか。
月の方が恋愛経験は豊富だというのに、竜崎の方が分かったのか、と思うと悔しいのか、恥ずかしいのか、よく分からない気分だ。
起きて、竜崎は何と答えるつもりなのだろう。
(ああ、くそ!!なんだよ、もう!)
そう考えると心臓は更に加速を極めて、ついでに顔は青くなったり赤くなったりと忙しい。まるで自分が自分ではなくなったようで、狼狽した。
「それで結論ですが」
「!?」
思わず「ぎゃあ!」と思わず叫んでしまうところだった。
色々と考え込んでいる間に竜崎が起きてしまったらしい。ちょっと早くはないかと片手で心臓を制しながら腕時計をみやったら、既に3時間が経過していた。…なんてことだ。
もっと寝ていても、いやむしろ永久に起きなくても…と思いながら「うん」と相槌を打つ。その声が乾いて上擦っていたので、あまりものみっともなさに頭を抱えたくなった。
いつも月は部屋をよく把握するために火の番の時は竜崎の席に移るか、枕元に移動する(つまり部屋の隅に寄る)のだが、今日は竜崎が用意した自分の席から一歩も動けないでいた。反面、竜崎はというと緊張の欠片もなく、立ち上がってぼりぼりと足の指先で足首を掻いてから、自らの席へと移動し、ついでのように言い切る。
「分かりました。いいでしょう」
「うそ」
「…嘘を言ってどうするんですか。それにそう仕向けたのは月くんでしょう。嘘にしたいのなら私はそちらでも構いませんが」
「いや、よくない!」
乾いた声で不信を零すと、竜崎がそれをさらりと肯定しようとするので、慌てて遮る。竜崎は一つだけ息を吐くと、独特な形でピッと指を3つ立てた。
「…ですが、こちらにも条件があります。一つはSEX、多くても3日に一度です。二つめは中には出さないよう。それから三つめはアナルの使用をお願いします。いいですか」
「…え、あ、うん…」
「では、とりあえず、外の様子を見にいきましょう。低気圧の目はすでに去ったはずです」
そう言って竜崎は今までと何も変わらない様子で立ち上がった。けれど、月は立ち上がることが出来なかった。
「月くん?」
コートを着込もうとしている竜崎が怪訝そうに月を振り返る。
「…あのさ、竜崎」
月が口を開くと、月の言いたいことを先取りした竜崎が露骨に顔を顰めた。
「…その3日の内の1回って今からでもいい?」


「夜だけと付け加えるべきでした」という竜崎に、「今度からそうする」と答えた月は、おもむろに立ち上がると竜崎を壁に押し付けて、その唇を奪った。
竜崎の直接的な言葉に思わず反応してしまったそこは、しばらくご無沙汰だったのもあって、既にめきめきと硬度を増していた。
腰を竜崎に擦り付けるようにしながら、貪る。ぴちゃぴちゃと舌を絡ませあいながら、竜崎の分厚い服の裾から指先を忍ばせた。
ピクリと竜崎の体が反応する。今までの条約だったら叩き落された挙句報復を喰らっているところだが、竜崎はそのまま月の愛撫に応えた。
そろりとわき腹に指を滑らせる。あばらが浮いていそうな薄い躰を昇ると、なだらかに膨らんだ胸に辿りついた。
(男でも揉まれると感じるのかな?)
思ったよりも柔らかいすっぽりと収まる乳房を優しく揉む。再び竜崎の体がピクリと反応し、胸の飾りを撫でると今度はあからさまに身を竦めた。
くりくりと円をかくように指の腹で撫で回すと先がきゅっと尖がって、その先端を摘むと竜崎が月の体を押しのけるようにして「はっ」と喘いだ。
「感じる?なんだかおっぱいがあるみたいだね。鍛錬不足じゃない?」
そもそも人体なのだから、体の構造もそう違うわけではないのだなと改めて思う。
月が竜崎の唇を舐めながら耳元にこそっと笑いを噛み含めそう話しかけると、竜崎が「失礼な」と呟いた。
そのまま首筋に唇を落としながら尚も竜崎の胸を弄る。しかしあからさまに熱を帯びる竜崎の吐息とは裏腹に、いっかな昂ぶりは感じなかった。
(ええい、こうなったら…)
月はこうやって竜崎の体をまさぐっているだけではち切れそうなのに、と閉口しながら体を少しずらしてズボンの中に手を滑り込ませる。下衣も数枚重ねているので少しばかり苦心してその指先を進めると、目的のものにぶつからないままに、ぬるりとした感触にゆきあたった。
「!?」
思わず手を引っ込める。
「え…りゅうざきって…」
恐る恐る顔を離すと、ヒクリと体を揺らした竜崎が「やっと、気付きましたか」と口にした。
「見られたくないもの、…そうか…竜崎って両性具…いたっ!!」
だん!と足を踏まれて月は思わず飛び上がる。
「ったー!何するんだよ、足癖悪いな…!そりゃ言われたく…痛い!!」
更にじりっと踏み潰されて足を引っこ抜くと、少しだけ怒ったような不機嫌顔の竜崎が「本当最低です」と押し出した。
「どうしてここまで来て半陰陽という結論が出るんですか。失礼な男ですね…。私は列記とした女性です。性染色体はXXです」
「ええ!?ちょ…えええ?!」
「大体胸を触ったときに気付きませんか?」
「え、だって…、あ、ああ。あれ胸…、!」
再び竜崎の足が動くのに気付いてさっと避ける。竜崎がチ、と悪態をついた。
「いや、だって。ほら、男だってあれくらい胸があるやつだっているよ?お相撲さんみたいな体格のやつなら、竜崎よりもグラマー…」
今度は避ける間もなく頭突きを喰らって脳内に星が散る。
お互いダメージがあるはずが、平然としている竜崎に向かって月は「この石頭め!」と心の内で罵りながら、いきなりの新事実にうろたえた。
(だって、勘違いして当然だろ?!っていうか男にしか見えないじゃん!!!)
未だズキズキする頭を竜崎の肩に預けるようにして、もう一度確かめるように手を這わす。形を確かめるようにして指でなぞると竜崎の体がふるりと戦慄いだ。
(確かにこれは女性器だよな…。…道理で勃たないはずだよ…)
ゴクリ、と唾を飲み込んで柔らかく潤っているそこに指先を埋め込む。竜崎が息を呑んで「止めてください!」と声を荒げた。
「なんで!?」
そこは確かに受け入れる体勢で、狭いが確実に月の指先を飲み込んでいる。驚いて問うと「何でじゃありませんよ」と睨みつけられた。
「するのならアナルで、と約束したでしょう」
「でも…」
「でももスモモもないです」
そんな微妙な言い回しをよく知ってるな、と思いながら埋めたままの指先をどうするか迷っていると「ダメったらダメです」と最後通牒をたたきつけられた。
「だから嫌だったんですよ。しかし、こればかりは守って貰わねば困ります。妊娠なんてしてられないんですからね」
「あ…」
「分かりましたか。どっちも同じ穴なんだからそう変わりはありませんよ。これが私にできる最大の譲歩です。それも嫌だというのなら、監禁してでも止めさせます」
「……分かったよ。今は我慢するよ」
「今は…ってどういう意味ですか」
つぷりと指を引き抜くと竜崎が一度目を細めてから真意を問うように月を見遣るので、月はイタズラっぽく「そりゃあ」と答えた。
「もっと、人が増えてもいい状況にして、僕一人でもなんとか出来る状態にしたら、だろ?このままじゃ人類絶滅しちゃうんだから、竜崎に沢山産んでもらわないと」
竜崎が絶句するのに、月はくすくすと可笑しそうに笑った。



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