■【裁きの剣】■ 05

「やっぱり俺がやる!」


【裁きの剣】



「…メロ、声が大きいですね」
「…」
エデンの市場、活気よく賑わう人々の群れの中、L、メロ、ニアは旅の必需品を検分していた。待ち人がやって来る迄。
何時もの格好だけでは目立つ為、今日は薄めの上着を羽織っている、Lもメロも。
しかし、メロの声のお陰で先程よりも少し視線が多い。
「移動しましょうか」
Lは手に持っていたものを店主に返すと、一際人の多い通りを選び、それから細い路地に入った。
「…う…Lゴメン…」
小さくメロが謝って、Lは苦笑する。ニアが何か言いたそうにしていたが、それを己が口にするのはお節介かとそのままメロを促す。
「それで?何をメロがやるんですか?」
Lは聞く、ニアは嫌な予感がした。
「夜神月には俺が近づく」
強い決意を秘めたように、メロの声は堅い。
ニアは片手を頭にやった。頭痛がする。
Lはというとパチパチと何度も瞬きをしていた。
「無理だと思います」
「何で?!」
さらりと否定されてメロが飛びつく。
「…何故と言われても…、無理でしょう。」
「メロには無理です」
ニアにも否定されて、メロはぎっと睨んだ。
無言の『お前は黙っとけ!』という視線に、ニアは多少カチンと来た。
しかしLが先に口を開く。
「分かるでしょう?」
静かに聞く。メロは俯いて「だから…」と呟いた。
「めちゃくちゃ我慢するし…」
「メロは顔に出るから無理です。…そんなにLが夜神月にキスしたのが不愉快でしたか?それが己に出来ると?」
「…出来るさ…それが必要なら」
ニアと目を合わせようとしないメロが声低く押し出して、ニアの目がすぅっと細くなる。
Lは昨日のアレを見られていたのか、と納得した。
「…大丈夫ですよ、メロ。そういうつもりでキスしたワケではありませんから、嫌では無いですよ」
Lは何の気なしに答えた。するとメロの形相が更に激しくなる。Lはしまったかな、と思う。どうもこの子達には気を張らない故、時折思ったままを口にしてしまう。
「…それは…それはさ…え…えるが夜神月の事…を…きっ…嫌いじゃ…無い…いや!言わなくていい!!でも、L…っ!いや…えっと…やっぱり俺がっ!むぐ!」
『俺がやる!』ともう一度言おうとした口を無遠慮なニアの手が塞ぐ。
「少し黙って下さい。…L、メロを借りていいですか。貴方なら本来一人でも大丈夫ですし、先にメロを黙らせます」
いいですね?
体全体でメロを封じ込めるニアに、Lは苦笑した。メロは顔を真っ赤にしつつじたばたしている。待ち人ももう現れた事だし、ニアに任せるのが適任だとLは頷いた。
同時に悲し気な顔になるメロの頭を撫でてから、背後に目をる。ニアにズルル…と引き摺られて消え行った後、声がした。
「相変わらずですね、メロ様は」
「ワタリ」
すうっと影から現れた壮年の男にLは微かに笑う。この老人の気配がLは大好きだった。小さな頃から一緒にいて、Lが覚えた最も基本的な事は全て彼に習ったのだ。
「ふむ…、まだLは猫背のままですか?」
小さく咎められ、Lは半眼でワタリ…と小さく呟いた。
「ではどこかで何か召し上がりながらお聞き下さい。まだお食べになって無いのでしょう?」
「…ワタリ…」
「おやつは食後に一つだけですよ」



「っ!」
ドッ…とメロの体がニアごと壁に押し付けられた。ニアよりメロの方が運動神経がいいのでニアが体ごと体当たりのように仕掛けるのは仕方のない事だった。
そして、やっとそこでニアはメロの口を解放する。もう少しこのままだったら噛まれかねない。
「…に、すんだよ!この野郎!!Lを説得し損ねただろうが!」
先ずは先手を打つのが勝利の原則としても、時には後手に回った方が良い時もある。
ニアは静かに口を開いた。
「そんなにLが好きですか?」
「ああ!大切だよ!!だからあんなヤツと一緒にいさせたく無いんだっ。お前だって分かるだろう?!」
「確かにそれは分かります。私だって夜神月とLを二人っきりにしたくはありません。…今はそうですね、今はよくても…きっと」
「だろーが!Lはなんだかんだで優しいからな!絶対傷つくんだ!しかも、もしもだぞ!もしもの、もしもの、もしかしたらの話だぞ!」
ニアは『もしも』が長すぎると思ったが大人しくそのままメロの言葉を待つ。
「もし、想ってなんかみろ!苦しむのはLだ…っ」
「…では、止めますか?」
「…………」
「止めてしまえば、傷つかなくとも、済むのでは…?」
ニアの言葉にメロは顔を歪めた。
「本気で言ってんのかよ、お前…。…この、冷血漢…。いや、違うな…、俺も…もしLが本気なら…どっちでもいいさ…。…でもアイツはダメだ」
きっぱりとした答えに、ニアは一度目を閉じた。
「メロは、自分の手でLを幸せにしたいのですね。Lが望むのなら、何時でも。…冷血漢は貴方もですよ、メロ。…私の気持ちはどうなります?いざとなったら捨てて行く癖に」
思いの他、ニアの目線が寂しそうで、メロはうっと言葉に詰まった。
しかしニアはふてぶてしかった。それからふっと笑う。
「まあ簡単に捨てさせなどしませんけどね。…それにやはりLが一番適任です。いざと言う時メロよりもLの方が腕に長けているんですから」
むぅっと膨れ上がったメロにニアは捌け口を提案する。
「そんなに言うなら、Lから一本取れば私は文句を言うのを止めましょう」
本当だな?!と意気込むメロにニアは口元を上げて笑い言う。目はマジだ。
「…ええ。ですが、夜神月と何かあった暁には殺しますからね」
思わず引きつった顔で硬直するメロに、ニアはいつもの無表情で「では行きますか」と呟いた。



To be continiued




■懺悔■
びば3角関係!
3角関係はあまり好きでは無いのですが(切ないので)、異様に楽しいですね!多分3角っぽい4角だからですね!(うん?)
ニアはメロの事だけでブチ切れると楽しいです。笑って無い目でメロに何かあったら、それがメロの策通りであろうが何だろうが、さっくり殺りますよ、的なお方だと面白い。(私が)

最初は月Lだけでどうしようと思いましたが、ニアとメロが頑張ってくれて私は嬉しいです!(何か他人ごと)

ワタリも出てこれて嬉しかったです!

水野やおき2005.06.25



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