■【裁きの剣】■
09
熱が体の中を侵食する。 目が眩むような奔流の中で、縋れるのは相手の体のみ。 溺れて、耐えて。 最後に抱きしめるのはー… 【裁きの剣】 「…っ、…っッ」 喉が震え、唇がわなないだ。 「…ェル…」 彼の中に半ば埋まり、そしてそれ以上動け無いでいる月は困った顔でLの名前を囁く。 『早く来て下さい』 その言葉を鵜呑みに、後孔をあまり馴らしもせずに埋め込んだのは月だ。 しかしー…Lだって頷いた。 『もう大丈夫です』 確かに情事の最中、そう聞いた。 …それが、どうだろう?言葉で表すのならば、れっきとした・立ち往生というヤツである。 「……わかって、います…っ」 Lの目は、情と苦痛に攻めたてられて潤み、吐息は苦しげではあるが、チラリと甘くもある。しかしそんな状況でもLの目の奥は冷静さを失っていないのだろう。 はぁ、と悩ましい吐息を聞いて、月はずぅん…と下半身に熱が増すのを感じた。 「…………」 途端にLの苦し気な顔と、恨めし気な視線が振り返る。 「…………ごほっ」 「…っ!」 微かに感じる気まずさに、月は小さく咳払いをして誤魔化すと、Lが小さく息を呑んだ。 「…月くん…わざとですか…」 Lに動くな、と言われた事を思い出し、月は眉を潜める。 しかし、それでは何時まで経ってもこのままだ。Lの呼吸もかなり整って来た。 月は思う。 試合に負けた仕返しをされていたとて、もう時効じゃ無いのか? それに、ただただLの体を気遣って待つのは、もう限界だ。 「…悪いね、L」 「!」 振り返るLの肩越しの視線がびくりと逸れた。 四つん這いになるLの床石に置かれた手がギュッと強く握られる。 「やっぱり、痛みを紛らわせるには、更なる痛みか、快楽、だろう?」 ぬっと伸ばされた手は、硬度を失いかけたそれに伸ばされる。 「…っぁ、…も、少しくら…い…」 待つ事が出来ないのですか? そう続くと思われる言葉の欠片に月は小さく苦笑する。 こんな間抜けな体勢のまま、ここまで我慢した事こそに目を向けて欲しいものだ。 「お前はどれだけ、僕を試せば気が済むんだ?…それにもう、充分待った筈だ。そうだろう?初めてじゃ無ければこんなに待たなかったし」 「…ッ…ぁっ…」 優しく、痛みを労るように撫でれば、Lのそれは少しずつ熱を持っていく。 「本当に計算違いばっかりだ…。僕だって、お前が締めつけ過ぎる所為で痛いんだよ…。その癖に、そこまで強固に閉ざしてるだけかとも思えば、熱くて蕩けそうに誘うんだからやってられない。…お前本当に初めてだろうな?」 「………っは…、ぁ、月くんには、お喋りが…過ぎます…ょ、…それに…私を…なんだと…思って…ッ…ンっ!」 ビクリ!とLの体が小さく震えて月の一部を深くまで飲み込む。 「…ァ…もぅ…二度と御免です…こんな事は」 「ぁあ…僕もこんなセックス二度と御免だね。みっともないったら無い。…こんな風に我慢して…」 次第に荒くなるLの息と連動して、月を内包する熱い肉の襞も動き出す。 「…でも、まあ。一度くらいなら、こういうのもいいね」 もっと奥へと、煽動するように収縮を繰り返す襞は意図的に誘っているようにしか思え無い。 「…私は…一度でも…御免こうむっ…てます…よっ」 背筋を猫のように弓なりに反り上げながら、Lは憎まれ口を叩く。 それはそれでなかなか楽しいモノだが、出来るならその生意気ばかりを言う唇を塞いでやりたいとも思う。 「…もうこんなにしてる癖によく言うよ」 きゅうきゅうと月を縛り付ける、Lの最奥を抉るように穿つ。 「…ーァッア!!?」 大きく、Lの体がビクついた。 「…やっぱりこの辺が好きなんだな?」 喉の奥をついたような喘ぎ声に月はほくそ笑む。Lが今、どんな表情をしているかが見れないのがとても残念だ。 「〜〜ッ、…っ、ぁっ、ぁっ…」 奥にあるしこりのような前立腺を擦るように体を動かす。 Lの唇から、憎まれ口では無い、掠れた声が絶え間なく滑り出した。 「………」 それをきっかけに月もお喋りを止める。もう、充分だ。今はただ快みたい。 Lの背中をゆったりと撫でる。 陽がある内に外にでる事が少ないからだろう。Lの肌は綺麗な象牙色で滑らかだ。 髪から伝った水滴が、背中を滑り落ちて消えて行く。 ツキに淡く照らされたそれがやけに綺麗で、月はLの肩口に唇を寄せた。 そっと、砂糖菓子に触れるように口付ける。 その様子をせわしない息遣いの中、静かに見守っていたLが、その瞬間、少しだけ、震えた。 もう、余裕も何もあったもんじゃ無い。 痺れゆく思考を制御する事をやめて月はLの腰を手繰り寄せる。 「…いいね、とても」 体が怠い。 もしかしたら、空気に鉛が仕込んであるのかもしれない。 Lはそんなありもしない事を思いながら、体を僅かに動かす。 未だに水分を含んだ髪が頬にかかった。それをぞんざいに払い、体の向きを変える。 鳶色の糸の束が目に映り、Lはそれを眇て見た。 遠いツキの光がほんの少しだけ部屋に光源をもたらす。 やはり重いままの指先で至近距離にある月の細い髪の毛を梳く。 頬のラインが明らかになり、端正な顔がよく見えた。月の腕はLの頭の下と腰に沿わされている。 「…困りましたね」 ぽつりとLは呟く。 一度寝たからと言って、判断を誤るほど自分に可愛げは無い。そんな事は百も承知だ。だから尚の事困っているのかもしれなかった。 Lは梳いた月の髪から指を離す。そっと体を起こした。チリン、と足元の鈴が小さく鳴った。しかし月はぴくりとも動かない。 眠りが深いのは、自分の褥の上で安心しきっているのかもしれないし、ただ単純に疲れているのかもしれなかった。 (複雑数奇そうに見えて、直情型…ですね) クールを装ってはいるが、定めた目的の為にはどんな手段も厭わない。 熱くなれるものが少ないだけに、一旦熱くなるとソレに対する執着心は人並みでは無い。 Lは小さく溜め息をついく。 月は突如消えた体温に、不信をいだき探るように寝返りを打った。そしてそのまま、隣にいた人物の事は忘れたようにシーツを掴み、また深い眠りについたようだった。 「…本当は…………」 呟きLは身支度を整えて月の寝間を退出する。 朝に一緒に目覚めるのなんて、恋人同士だけでよい。 「お休みなさい。良い夢を」 冷気が入らない内にLは幕から滑り抜け、声はシン…と冷えた夜に吸い込まれた。 To be continiued …アトガキ… 寒い…。最近の夜は温度が下がってまいりました…。風邪をひかないようにしないといけませんね。 因みに月達もこれくらいな水温の予定です(どれくらいだよ) しっかし肝心なところをよくもこうもすっ飛ばせるもんだな、と我ながら感心しています。 すげえよ。どうしようも無いとこが。 何かどっちもイくとこが書けませんでした…。挙げ句に予定では部屋で第2ラウンドも終わったとゆー設定です。 Lたんがその後で目ぇ覚ましましたよーというワケです。 結局まったくェロくならない挙げ句にェロ部分が終わりました…。 でも、リベンジチャンスはまだあるんだぜぃ☆(笑) その時こそ、ちゃんとぇろく出来るのかはなはだ疑問ですが、まあ先の事は考えないとします。 水野やおき 2005.09.22 ≪back SerialNovel new≫ TOP |