■【Lovers】■ 11

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇side 普

「あかん。イタちゃんとドイツが完全にやられてもうた」
と言ってスペインとフランスが立ちあがって席を離れる。
それを見送ってプロイセンは本日何度目になるか分からない溜め息をついた。
「…やってらんねー…」
なんだその笑顔は、とイギリスを小一時間問い詰めたい。プロイセンの時にはもう少し時間がかかったというのに、どうだ。ものの十数分の出来ごとである。やってられない。
(ああ〜〜〜ちくしょ〜〜〜〜)
プロイセンは短い銀髪をバリバリと掻きまぜて、むしゃくしゃした気分を散じさせた。
あの表情と唇の動きからして礼の言葉を言ったのが分かった。それだけに遣る瀬無い。
先週、イギリスが素直に礼を言えるように誘導してやったのは、他でも無いプロイセンである。
(…敵増やしんじゃねーか…)
しかも相手は最愛の弟と、可愛いイタリアちゃんである。
イギリスがプロイセンとの事をベッドの上の戯としたからには、プロイセンは正当な主権を盾にして『他の男にそんな可愛い顔見せるなよ』などと言って自分の腕の中に囲う事は出来ないのである。そんな事をしても敵を撃退できないままイギリスに逃げられるだけだ。
(…くっそー…)
プロイセンが一人楽しくテーブルと友達になっていると、少しよろよろとした足取りで、イギリスの元を追われたらしいイタリアちゃんと弟の二人がプロイセンの両脇に腰を下ろした。
そしてイタリアちゃんもプロイセンと同じようにべたっとテーブルに突っ伏した。
「ヴェー…。びっくりしたよー。プロイセンがイギリス好きになったっていうの、分かった気がするよー…」
うあー、とイタリアちゃんが呻く。
(うあー…)
イタリアちゃんの呻きを聞いて、プロイセンも内心同じように呻いた。
これなはい。泣きそうだ。
「…イギリスのああいった笑顔というものを初めて見た…」
こちらは左隣の弟の言である。突っ伏したまま鬱々とした視線を向けると、弟はどこか挙動不審な動きで酒を煽っている。
二人とも、完璧にイギリスを意識しているようだ。性別が変わっただけでそんな、と言いたい所だが、それが切っ掛けで惚れ込んでしまったプロイセンが非難出来ることでもない。
(ちくしょー…浴びるほど呑んで忘れてぇー…)
しかし、そんな事をしても意味は無い。プロイセンの気持ち的には一時の平穏が訪れたとしても、現実問題はマイナスになる事うけあいだ。
うかうかと目を離したらフランスにお持ち帰りされた挙げ句、とって食われかねない。むしろプロイセンにとっ捕まらない為にイギリス自らついて行きそうで怖い。幾らイギリスに拒否されたからと言って流石にそれを容認することは出来ない。もしもそんな事態になりそうなら力づくでも家に連れて帰る腹づもりである。
結論、前後不覚になるのは拙い。
(つーか、マジ何考えてんだよ…)
今のイギリスはプロイセンから離れる為なら何でもしそうな気配があった。でないと、プロイセンの言を退ける為にフランスの手を借りたり、プロイセンが退出するのを見送ったりはしなかっただろう。
(すげぇ不安そうな顔してた癖によ…)
どうにもイギリスの思考を上手く把握出来ない。
愛情を受け取るのが不慣れだというのは、プロイセンにだって察することが出来る。それくらいは理解する事が出来る。だからプロイセンも自重しようとしたのだし、実行もしたのだ。
ちょっとした暴走で4日間避けられたのは苦い経験だったが、それでも最終日はイギリスから近寄って来た。それは怯えながらも二人の関係をあれで終わりにしたくないという意思だったはずだ。
だから、煽られて、我慢しなかった。責任をを取らせる形で手を出した。
時期尚早の感が無いではなかった。イギリスの準備はまだ整っていないと分かってはいた。が、プロイセンの言葉に嬉しそうに反応したり、ソファに座ってジリジリと距離を詰めようとしたり、『一緒にいたい』と言うイギリスを見ていれば、勝ち目はあると思った。しかし、どうやら読み違えたらしい。
だが、何を?どこを、読み違えたというのか。
好きだと認めさせて、とろとろに溶かして、確かに甘い恋人同士になった筈だった。
朝だって口喧嘩はしたけれど、他愛ない戯れのようなものだ。万一にも拒否されている感じは無かったし、会議の途中だってイギリスはプロイセンに見惚れていた。普通、あんなに熱心に見られていれば気がつくだろう。そして、なり立ての恋人をそんな風に見るのはおかしな事ではない。
だから、『カワイイヤツ』なんて思いながらも、会議中だったからちょっかいを出さなかった。弟とイギリスの仕事の邪魔をするつもりは毛頭ない。
プロイセンはフランスやアメリカではないから、からかうのなら会議が終わって二人きりになってからで構わないと思っていた。何しろイギリスの恋人様だ。上手に甘やかしてやれた筈だった。
そしてそのまま一カ月は蜜月を過ごせると踏んでいたというのに。
(…一緒にいたいって言ったのは何だったんだよ…)
『呪いで手が離れない』という口実ならば、プロイセンが再びイギリスの地を踏んでもおかしくない。イギリスが特に呪いの期限を言わなかったから、プロイセンはそれを『もっと一緒にいたい』というメッセージだと受け取った。それで、会議中なので崩れそうになる顔をキリッとさせるのに苦労したほどだ。
それなのに、イギリスは『イエスとは言っていない』などと言いだした。
『好き』も無かったことにされてしまった。
イギリスは、どこまでを無かった事にしてしまうつもりなのだろうか。
なんだか、天国から地獄に突き落とされた気分だ。
口の中が酒とは違う苦さで満たされていて、眉間に皺が深く寄る。
どこに拒否される要素があったのか、プロイセンには全く理解できない。
咄嗟に言ってしまったのなら、別にいい。それくらい許容出来る。それだったら安心出来る。イギリスが面倒臭いのは今に始まった事ではないのだから。
だから、もしもイギリスが咄嗟に言ってしまっただけだと言うなら、プロイセンは今すぐにでも抱きしめて、キスをするだろう。心臓縮ませるなとちょっとだけ批難はするかもしれないが、それで終わりだ。
けれど、プロイセンへの気持ちを認めながら、それでも尚逃げようと思っているのだとしたら、どうすればいい。
プロイセンの勘は、どうも後者を指しているように感じている。だから今すぐイギリスの手を引いてこの場からエスケープ出来ない。万一フランスを盾にしてこの場から逃げられたら、困るのだ。
(なあ、仕事人間の癖に会議中に見惚れるくらい、俺様の事、好きだよな?なのに、なんでだよ)
聞いたわけではないから、プロイセンの杞憂かもしれない。けれど、悪い予感は消えない。イギリスの後ろ向き思考が感染ったのだろうか。
それなら、いい。それならば。だが、違うなら…。

プロイセンが『はぁ…』と再びその口から幸せを逃すと、
「あー…そっか、プロイセンって失恋したんだっけ」
その重い溜息にイタリアちゃんが反応した。
いや、してねぇよ!とは言えなかった。だって相手はイタリアちゃんで、しかも公衆の面前でベッドの上の戯言にされてしまったのはつい先ほどの話だ。今延々と悩んでいた話でもある。
直接的に振られたワケでは無いし、イギリスは「イエスとは言ってない」と言っただけで、「ノー」と言ったわけでは無い。しかし…
(振られてるのとあんま変わんねーっていうか…)
だから、言葉に詰まった。凄く悲しい。
「あー…そうだったな…。今夜は付き合うぞ」
弟の、その優しさが今は辛い。
プロイセンはじわっと滲みそうになる涙を抑える為にぱちぱちと瞬きを繰り返した上で言い訳をするようにぼそぼそと声を絞りだした。
「…いや、俺様、まだ完全に振られたワケじゃ無いし…」
そう呟くと二人して「えっ」と意外そうに呟く。
「…えー…。でも、そうかぁ…。結局イギリスどっちが好きかって言わなかったもんねぇ。それってどっちも嫌いじゃ無いって事なのかな」
「…そうとも取れるな」
「さっき凄く顔が赤かったから、嫌いじゃないより、どっちも好きなのかなぁ?それってまだ決めかねてるって事?」
「…まぁ、すぐには決められない問題ではあるだろうな。兄貴との事は泊まりに行った初日を含めたとしてもまだ一週間しか経っていないのだし…」
「フランス兄ちゃんとは喧嘩ばっかりしてたもんねぇ。それにフランス兄ちゃんはいつも誰か連れてるしさ。仮にフランス兄ちゃんがイギリスの事好きで、イギリスもフランス兄ちゃんの事が好きだったとしても、恋人にっていうのとはちょっと難しそうだよねぇ。プロイセンにしたってまだ『急に言われても』って感じなのかな?」
二人の言葉にプロイセンは横っ面を叩かれたような気持ちになった。
プロイセンはイギリスが悪女みたいな感じになったみたいだと評したし、悪友も同意したが、イタリアちゃんや弟から見ればプロイセンが先走ったように見えるらしい。
まあ、以前から国同士としての付き合いがあるとはいえ、そういう関係になってからたかが1週間である。だが、恋に落ちるのは一瞬あれば可能だし、体の付き合いも出来ている。お互いに好意を持っているのだからと、付き合うのは当たり前だと思っていたが、フランスのように短いアバンチュールを愉しむというのならともかく、イギリスのように粘着質な性格の持ち主に、恋人として末永くお付き合いしろと迫るのは、言われてみれば些か早いような気もしてきた。
『好き』の比重が同じだとしても、受け取り方は違うのだろうか。たかが一週間だけど、プロイセンはこれから長い付き合いをしていけると誓える。でもイギリスにとってはされど一週間、なのかもしれない。
そんな事を考えていると、弟が重々しく口を開いた。
「…もう何百年と生きている事だしな…。切欠があれば、その…肉体的に関係が…まぁ、出来ても不思議では無い、が…、付き合うとなると、勝手が違うのかもしれんな…」
人と一生を共に過ごせない以上、国の恋愛は刹那的だ。相手が国だとて、政情によっては敵対する事もある。つかず離れずの距離感を保つか、敵対する事も含めてそれでもそれ以上のものを育むのかは確かに一夜で決められるような内容では無い。
それが傷つく事に敏感なイギリスなら尚更。
きっとその瞬間の気持ちだけでは決められない。
「国同士の恋愛は、人間の結婚と似ているのかもしれねぇなぁ…」
とプロイセンが溢すと両脇の二人はチラリと此方を眺めてから頷いた。
「…そうかもしれないな。当人同士で決められる事ではあるが、それは周りを巻き込むものだからな」
「すぐに別れちゃう事もあるけど、普通は死ぬまで一緒だもんね。そう気軽にするもんじゃ無い…かな」
「…イタリアちゃん…」
イタリアちゃんの声のトーンがすっと下がって、プロイセンはハッとした。イタリアが誰を思いだしているのか、分かった。
プロイセンの頭に自分が可愛がった弟とそっくりの顔を持つ彼の事が思いだされた。
イタリアが好きで、イタリアちゃんが大好きだった、幼い姿のまま消えていった彼の姿が脳裏をよぎる。
あの頃の二人はまだ幼くて、その恋の形ももっとやわやわとしたものだったろう。だが、神聖ローマが言っていた「一緒になろう」はまさに人間の結婚と同じ意味を持っていた。
それを断ったイタリアちゃんには、イギリスの気持ちが少しは分かるのだろうか。だが、いつもは明るいイタリアちゃんが瞬間とはいえこんな顔を未だにするのだ。プロイセンは口を開くことが出来なかった。
少ししんみりとした空気を打ち消すようにイタリアがいつものようにヴェーと鳴いた。
「…イギリスの胸やーらかかったなぁ」
『ぶっ!かはっ…!』という盛大に酒を吹き出す音が左隣から聞こえた。プロイセンも飲食の途中だったら吹き出してただろう。相手はイタリアちゃんだが、明るい話題に切り替えたかったにしてももう少し他に何かありませんでしたか、と言いたい。唐突過ぎる。
「…イ、イタリア…お前…」
げほげほ言いながら弟がイタリアちゃんの名前を呼ぶ。その背中を叩いて介抱してやっていると、イタリアちゃんがテンションを上げて意気込んで言った。
「さっき、なんかイギリスが俺に隠れるようにしたんだけどね!そんときこう、ふよって!イギリス絶対ノーブラだよ!」
酒が鼻やら気管やらに入って大変そうだったのでその辺に置いてあったチェイサーをやったら、今度はその水をごぱぁっと吹き出した。聞いた事も無い不思議な音と、苦しさだけでない弟の顔の茹だりようにどうしたもんかなぁとプロイセンは思う。
「顔埋めたら幸せになれそうな感触だったなぁ。」
天使のように麗しいイタリアちゃんは伊達に長年欧州を生き抜いてはいなかったらしい。色事に関しては弟より上だったようだ。
「ねぇ、プロイセンぱふぱふした?」
と無邪気に聞かれてプロイセンは戸惑ったまま「いや、まぁなぁ…」と馬鹿正直に答えてしまった。イタリアちゃんは
「いいなぁ」
と凄くナチュラルに返してくる。物凄くどうしていいのか分からない。
「イギリスさっき凄く可愛いかったなぁ。イギリスまだ意中の人は決まって無いんだよねぇ。俺を男にして下さい!って頼んだらダメかなぁ…」
どうしてか、駄目だといい辛い。何だかさっきまで鬱々と悩んでいたのがバカらしい気がしてくるのだからイタリアちゃんは不思議だ。
やっと落ち着いた弟が「イタリアぁあぁあ!」と叫ぶまで、プロイセンは何もいえないでいた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇side 西

「なぁーにやってんだあいつら」
イタリアがうろちょろと逃げているのを見ながらフランスがワインを煽る。スペインはサングリアを口にしながら、間に挟んだイギリスをチラ見した。
先程とは打って変わっていつもの仏頂面である。
まぁ、にこにことされても怖いだけなので構わないのだが。
「…それにしてもよぉ隠しとったなぁ、自分」
「…だから、俺も知らなかったんだっつってるだろ」
「…ほんまかぁ?」
「信じられないなら別にいい。好きに思えよ」
ここですぐに匙を投げるのがイギリスのイギリスたる由縁である。
「そーさせて貰うわ。しかしほんまけったいな事になってまぁ」
ジロジロと上から下まで眺めると、イギリスが不愉快だ、と硬質な声で牽制した。だが、その程度で引くスペインではない。
細かくそのフォルムを観察する。なんだか少し大きな服がとってもけしからん感じである、という結論に辿りついた。肩幅があっていないので実態よりも小さく見える。袖があまったりしているのは彼氏シャツのようで目に毒だ。腕を組んでいるせいで胸元が強調されているのも宜しくない。
「前から細っこい奴やと思っとったけど、えらいコンパクトになってもうて…」
「…悪かったな、貧弱で」
トゲトゲとイギリスが吐き捨てる。
「そういう意味や無いんやけど…、まぁむちむちとはして無いやんなぁ」
どう考えてもスレンダーなタイプだろう。
「何言ってやがる」
「いや、イギリスとはいえぎゅってしたら折れてしまいそうやなぁ…と」
言って、言葉通りぎゅっとしてみる。腕の中で「何すんだ」と殺気じみた声がしたので、ぞくぞくして「久しぶりに親分のベッドに招かれてみぃひん?」と尋ねると呆れたように「節操なしめ」と罵られた。
「イギリスほどやあらへんよ」
と応対すると、ふんっと鼻を鳴らしたので自覚はあるらしい。
「…誰がお前となんか」
吐き捨てるように言われて、スペインは笑う。そんなのはお互い様だ。でも、欲しくなる時はある。思いだすことも、また。
スペインはイギリス女王がスペイン王子(結婚生活中に王になった)と婚姻関係にあった数年間に思いを馳せる。
イギリスと関係を持ったのは主にその間だ。王が戴冠式に帰郷するのと同時にイギリスがスペインの手元にやって来たので、共に暮らし、そして体を重ねた。
勿論、上が結婚したからと言って国もそういう関係にならないといけないという事は無い。だが、上司達の仲をカバーするようにイギリスと関係を持った。
現在、互いに黒歴史になったワケだが、だからと言って、本気になりそうだと思った当時の気持ちに嘘はない。
限りなく不本意そうな顔をしてスペインの家にいたイギリス。『仕方なくだ』と言って掃除や仕事を手伝ってくれた。たかだか1、2年の思い出だが、それが悪いものでは無かったから、余計にイギリスの事を憎く感じたのかもしれへんな、とスペインは思った。
だが、その気持ちすら過去のものだ。
今、多くは期待していない。ただかつてのように蕩けた翡翠を一時でいいから自分の支配下においてみたいだけである。
「えー?ちょっと一晩くらいええやんかぁ…」
するっと腰のラインを撫でるとイギリスの体がびくりと竦む。小さく漏らされた吐息はもう色を含んでいて、しかしその後に続いた「テメェ沈めんぞ」というドスの利いた台詞は昔と同じで素直では無かった。
何の遠慮もしないスペインに対して呆れ顔を晒しているフランスに向かってへらりと笑いかけると、スペインはイギリスの耳に「ベッドの上なら歓迎や」とめげずに囁く。冗談半分、本気半分。上手くいけばそれでヨシ、の提案だったのだが…。
「……………」
(ん?もしかして好感触やった?)
イギリスが難しい顔をして悩んでいる。フランスに言わせればこういう時のイギリスはろくな事を考えていないらしいが、今回は一体何を考えているのだろうか。
「…スペイン」
「なんや?」
「いつまでひっついてやがる!」
これはもしかしてもしかするんやないか、と思っていると聞き慣れた可愛い子分の声に惜しくも遮られた。
ちぎー!という鳴き声と共にべりりと引き剥がされる。
「ろ…ロマーノぉ…」
情けなく愛しの子分の名を呼ぶと、再びちぎー!と鳴いたロマーノがスペインの頭に拳骨を食らわして来た。
「お前レディに対してなんていう振る舞いだ!カッツォ!」
ポコポコと蒸気を上げているロマーノに「ええー」とスペインは痛みに涙目になりつつ、残念な視線を向けた。
「レディって言ったってイギリスやで?」
「イギリス様でもだ!つーかお前下手したらボコボコにされ…、……、あ、いや…す、すみませんイギリス様、今すぐこいつを回収するのでスコーンだけは勘弁して下さい…コノヤロー」
突然のロマーノの登場に呆気にとられたイギリスが、次の瞬間吹き出した。ロマーノがひっと悲鳴を上げてスペインの後ろに隠れる。
それを見て、イギリスが表情を崩した。
「…なんちゅー顔しとんねん」
眉尻は下がっている。でも、口元は上がっている。
スペインは目の前にある複雑な表情にむっと顔を顰めて、イギリスの額に容赦なくデコピンを喰らわせたのだった。


※改稿:2011.08.20 詳細12話後書き


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