■【裁きの剣】■ 22

「なんだって?」


【裁きの剣】


「ですから、女王にお会いしてもいいですよ、と言いました」
Lを自分の屋敷に連れ戻してから間もなく10日が過ぎようとしていた。
同じ寝床で荒い息を整えていると、不意にLが呟いたので、一体どうしたのだと月は少し体を起こしてLの顔を覗き込んだ。
まだ濡れて潤む黒い瞳が遠慮もなく月の瞳を覗き返して来る。
「このままここに居着くのに、上手く無いかと思いまして」
「…そう、か」
「おや、もっと喜んでくれると思ったのですが?」
「いや嬉しいよ?」
確かに嬉しくはあったのだが、思わずどもってしまった月が笑顔で押し隠すと、Lの懐疑的な視線がコトの次第をを追及しようと月の奥深くを探りだそうとするものだから、目を逸らす。
「…本当にアナタという人は酷い人ですね。見た目とその柔和な仮面に皆さん騙されるんですよ」
「…どういう意味だよ」
思わずムッとしてLに視線を戻すと、赤く色づいた唇の端が上がっているのが目に止まった。
(気に喰わない)
この男は幾ら組み敷いた所で、自分の思惑通りに動かない。
そこを求めていたのだとしても、やはり小さな攻防では優位に立たないと気が済まず、月はLの弱みを突くべく首筋を舌でなぞりながらもう一度「どういう意味?」と聞き返した。
「…そういう、意味ですよ。全く、少しは罪悪感に駆られてはどうですか?」
一度ふるっと身を震わせたLに頭を叩かれ、覆い被さった体を足で追いやられる。
「隠し通せると思いましたか。女王と寝て来たでしょう」
「……」
途中から悪い予感がしたものの、Lは余所者だ。国の誰もが気づかない事がLに知れるとは思わず、一瞬押し黙ってしまった事が肯定になってしまって、月は「いや」と言葉を濁した。
「ミサのことは…」
「ああ、そういえば、ミサさんというお名前でしたね」
「……」
(墓穴を掘ったか…)
「全く往生際が悪いんですよ、月くんは。迎えに来た時点でどちらかを選ばなくてはならないのに、両方、ですか」
「いや、だから…ミサのことは…」
むくりと起き上がったLにしどろもどろ。何ていうべきか思案していると、月の胸にLの手のひらがあてがわれる。
「私と国とさぁどちら?」
ドクン、と一つ。心臓が大きく脈打った。
思わずどうもくして唖然とLの顔を見やったが、前髪に遮られて、その表情を見いだすことは出来なかった。
「冗談です」
驚きにされるまま、Lに押し倒された。
「簡単に自分の信念を曲げるような男なら、私は今ここにはいなかったでしょう」
どさりと敷布に倒れ込み、月に跨ったLが不敵に笑うのが、目に入った。
「けれど、いつか。心の底から私だと言わせてみせますよ」

本当に。
Lはいつも月を裏切ってくれる。
月が考える予測の殆どを。

「お前だって相当酷いんじゃない…?…っ…」
興奮に、少しだけ頭をもたげた月の雄を、Lが2・3度擦り上げた。
「そぅ、かもしれませんね…。目的の為なら手段は選びませんし…」
立派に勃ち上がった月のそれにLはゆっくりと埋めてゆく。
「…ぁ…っ、…んぅ」
月の胸に片手をつけて、Lが喉もとを無防備に晒す。

噛み千切りたい。

そんな衝動が全身に駆け回って、月は酷く動揺した。
こんな獰猛な欲求が自らの内に潜んでいた事を初めて知った。
(この喉元をかっ切って、喰らってやりたい。Lの全てが僕のモノになるように、一滴残らず)
だから月は体を起こし、月の凶暴さを全て飲み込んで甘い吐息を吐くLの腰を抱き寄せ唇を奪う。
Lの中の凶暴さも飲み込むように。



To be continiued



…あとがき…
王様になって、全国土を支配する事が月くんの望みなので、ミサとの関係は続行中です。うおおおおいい!
全部知っていて、不敵に笑うLが書いてみたかったワケです。
data up 2007.07.12


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