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■■ サンクチュアリ ■■
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あなたになりたい あなたになりたい 光の中 輝ける あなたに 『サンクチュアリ』 彼の斜め後ろの席が、好きだった。 正午まえの静かな教会。 柔らかい光が、ステンドグラスから射し込んでいる。 ニアの斜め前の席。金色の髪に映る、カレイドスコープのように美しく淡い色。 メロが足を組みかえるたび、揺れて消えて、また揺れた。 ミサの終わった礼拝堂に、ただ二人きりだった。 「あーあ。Lまだかなぁ」 大きく伸びをして、メロがちらりと斜め後ろのニアを窺う。膝の上のパズルに落としていた視線を上げると、ふと目があった。 「…彼は必ず来ますよ」 「分かってる!…ニア、Lのことを、気安く彼なんて呼ぶな!」 強く睨み付けても表情を変えないニアに、メロはフン、とそっぽを向いた。 メロがニアに向ける表情に、笑顔は少ない。ニアを前にすると、メロは必ず唇を結んだ。透き通った真っ直ぐな瞳はいつも、射るようにニアを映した。 …だからニアは、メロの斜め後ろに座るのだ。 その場所からは、ニア以外の人に見せる、メロの無邪気な横顔を見ることができる。講義中の眠たげな横顔を、走り出す前の楽しそうな横顔を、夕暮れ時の寂しい横顔を、見ることができる。 …けれど、ひとつだけ。たったひとつだけ、正面から見てみたい表情がある。 「…Lに会いたい」 ニアの斜め前で、光の射す金色が俯いた。 小さくぽつりと呟いた、メロのひとりごと。ニアには聞こえないと思ったのだろう。 俯いた横顔は、どんな表情をしているのだろうか。瞳を閉じ、柔らかい銀髪に指を絡ませて想像する。 しかし思い描いたメロの顔は、瞼の裏で霞んだままだ。 そして代わりに浮かぶのは、光の中の彼だった。 ほころんだ口元で、優しく名を呼ぶ、光の中の彼。手を差し伸べても遠く、しかしその温かさは指先からじんわりと広がってくる。 光の中で、Lはいつも輝いていた。 ――あなたになりたい。 Lのことを思い出すたび、息がつけなくなる。 はじまりは憧れだった。Lの頭脳に、Lの強さに、Lの優しさに、ただ憧れては胸がつまった。 だけど今は、それだけじゃない。 入り口で微かな音がして、ニアとメロは同時にふり返った。 「…L!」 途端に立ち上がり、開いた扉に走り寄るメロ。その黒服が、ニアの側を颯爽と通り過ぎた。 扉の向こう側。室内より明るい外の陽が、目に眩しくて手をかざす。 そこには、輝きに縁取られたLの輪郭が、光の中で佇んでいた。 「元気にしていましたか、メロ」 思いきり抱きついたメロの金髪を、腰を屈めたLの指先が撫でる。 そして顔を上げたメロの、その横顔を見つめて、ニアは静かに息を飲んだ。 たったひとつ。正面から見てみたいメロの表情。 それはいつも、Lにだけ向けられていた。 綺麗なガラスを見つめるように、柔らかく細められたメロの瞳。 嬉しそうに、ゆっくりとほころんだメロの唇。 そのすべてが、愛おしさに溢れている。 ――あなたになりたい。 また、息がつけなくなる。 Lになりたい。それは呼び名などではなく。 「…ニア?あなたも。元気でしたか?」 優しく差し伸べられた、Lのてのひら。こぼれる光の中で、白く輝いている。 …まだ、足りない。ニアには掴めない。 ――あなたになりたい。 立ちつくしているニアの視界に、メロの金髪が揺れていた。 追いかけているつもりで、本当は追いかけられていることも知らずに。 「……L、お久しぶりです」 息を吐いて小さく囁いたニアの髪を、Lが優しく撫でた。 そのてのひらを、掴まえることができたら。 そしたら、メロのあの表情を、正面から見ることができるだろうか。 ――あなたに、なりたい… 同じように、光の中で、輝けるだろうか。 end. †有難うございました† っっっっ……!!(昇天) 小雨さま本当に有難うございましたッ!(敬礼!) いやー、本当に素敵な作品に骨抜き状態の水野ですvV おおおおお!!!!素敵過ぎる…ッ!!! 何時見ても、小雨さまの作品は、繊細で華麗で、メロメロになります☆ 輝けるようなLの優しさと特別さにもう胸がドキドキです! 教会という静謐さの中で選びぬかれた言葉、ニアの静かでとても強い感情にもー、しこたまやられました! メロのLを思う気持ちにも、顔がにやけてしまいます! だ い す き だ…!! いつもメロの斜め後ろに座るニアに思わず「きゃー!」ですよvV Lが入って来たと同時にぱっとニアの脇を颯爽と通りぬけていく様に「ひゃー!」ですよvV Lの優しい指先に「ギャー」ですッvV ああ!もう、身悶える…!! そんな素敵な作品をプレゼントしていただけて、とっても嬉しいです! そして、我がサイトに掲載する事を許してくださって有難うございます!! まさに小雨さまが聖域でした…! 小雨さまの素敵なサイトには、上部のリンクから! |