■■ 『L、空を見て』 ■■


2007.07.18
‡吹き溜まり‡ / 最桜さまから戴きましたvV

『L、空を見て』


「…L?」

声がしたような気がした。
それも泣き声。
しくしくとか、そんなおとなしい声ではなくて。
幼い子供が感情のままにわんわん泣いている、あんな感じの声。
それが僕にはどうしてもLの声に聞こえてしまった。
あの鈴を転がしたような可愛い声(注・恋の為せるワザ故)でLが泣いているのだとそう思ったら、僕はもういても立ってもいられなくなっていた。



「酷いです…っ」
「いや、だか…」
「あんまりです!」
「L?」
「っ!」
「か、神…!」
「照、お前ここでLに何をしているんだ!」

僕の方に向けられていたLの小さな背がびくんと震え、何故こんな場所にいるのかわからないが僕を神と崇めてついて回る死神、照の表情がぎくっと引きつったかと思ったら、今度はほっとしたかのように引き歪んだ。

「…L、泣いてるのか?」
「……」

僕はLの肩越しに照を睨みつけながらLにそう声をかけた。

「…L?」
「…泣いてなんか、いません」

小さな肩は小刻に震えている。
きっとこっちを振り向けばその目は涙に濡れてるんだろう。
本人は隠しているつもりだろうが、ここに来てからずっと、しゃくりあげるLの声は僕にしっかり届いているし。

「L」
「…私、泣いてません」

思わずこっそりと笑ってしまった。
どうやらLは相当の意地っ張り。
泣いているくせに、泣いてないと嘘をついて涙が治まるまで時間を稼いでる。

「L」
「しつこいです月くん、私は」
「うん、わかった」
「っ…」

Lの腕をつかんで引き寄せて、その顔を覗いて見れば案の定マシュマロの様な頬を透明の雫が伝い落ちる。
Lはきょとんと僕を見た後、きゅっと唇を咬みうつ向いてしまった。

「これは…今雨が降ってきて濡れてしまったんです」
「うん、そうみたいだね」
「…ら‥」
「それなら傘を差さないと。風邪ひいちゃうよ」

可愛い嘘をついている最中も、その雫はぱたぱたと地面に落ちていく。

「お天気雨には対応できません。だっていきなり降るんですよ?」
「反論はしないよ。L」
「‥はい」
「傘なら僕があげる。だから空を見て」
「…空‥ですか?」

そうしたら涙は止まるからと。
僕はその言葉を心の中で付け足した。

「…空と同じ色をしてます」
「うん」
「お星様は桜色ですね」

堪えるように咬み締められていた唇がふっと緩んだ。
僕がLの頭上に広げた傘は空色の地に大きな星をあしらったもの。
それを見てその涙はやっと止まったらしい。

「月くんはなんだか凄いですね」
「何が?」

それまでぎゅうっと衣を握りこんでいたLの手に傘の柄を持たせると、上を向いたまま傘をくるくると回して更に明るい表情になる。
思わず抱き締めたくなったのは言うまでもないが、僕はその思いを押し殺してLを見ている。

「私にくれるお菓子やリボンや傘を、一体どこに隠しているんですか? いつもぱっと目の前に現れるので、まるで魔法を使っているみたいです」

魔法、ね。
まったく、どこまで可愛いんだか、この天使は。

僕はLの黒い髪を一筋指に掬うと、そっと口付けた。

「僕の翼は色々な場所と繋がっていて、いつだって必要なものに手が届くんだ」

そんな子ども騙しな話も丸ごと信じてしまうらしいLは、きらきらした目で僕の背中にある黒い翼を眺めてる。

「雨の原因はこれ?」
「…」

そんなLの足下であのこんぺいとうを入れた硝子の小瓶がこなごなに砕けて光を反射させていた。
こんぺいとうも最早食べられる状態には無い。
Lの向こうで照の顔色がさっと変わり両手をばたばたと振り始めた。
成程、漸く状況が把握できた。

「この星は僕の翼を通して責任持って空に帰すよ」
「…本当ですか?」
「うん。だからLは空を見てて」
「…はい!」


硝子まみれのこんぺいとうを照に拾い集めさせて僕は再び空に向かい翼を広げた。

「お星様を拾ってくださってありがとうこざいます、てるてるさん」
「…てるてる?」
「っ、あはは!」


眼下に、徐々に小さくなるLの目はいきなり笑い出した僕を見て、またきょとんと真ん丸になり瞬いていた。




†有難う御座いました†
幸せ…。
水野です!!ななな〜んと!【吹き溜まり】の最桜さまから『天使と死神』の9話をいただいてしまいましたー!!!きゃーー!!!(ジタバタ)
もー、超絶かわいいえんじぇるるに癒されまくり、めっこりはまり、脳内お花畑咲き乱れです!!…でイラストこさえて贈らせていただいたのですが、
こんなに素敵な作品を書いてくださって、嬉しさに発狂寸前です!!!うふー!!
イラストに梅雨時期だから、ということで、傘を書かせていただいたのですが、その傘を最桜さまがお話の中に織り込んでくださったんですよー!!!
しかも、勝手につけてしまった照のてるてるまで使用してくださって…!!
もえしぬ。
うれししぬ。
傘をくるくるさせてるえんじぇるるが、泣いてませんと意地っ張りなえんじぇるるが、愛しすぎて、ヘブンゆきです!!
最桜さまの素敵サイトへは、↑から行けますから…!この愛らしい3人は日記で連載されてあります♪
本当に本当に有難うございましたー!!!(涙)
例によって、みせびらかしますぜ!!(すみません、石を投げないでください…)