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【ライアー】 夏が終った。 これで、最後の夏。 甲子園への土を踏んで、僕等の高校生最後の夏が終った。 「今迄有難うございましＴａ！」 １・２年代表で虎鉄がそう締めくくった。 明日から彼が『キャプテン』になる事になる。 そして今日のこの時間まで僕が、キャプテン。 3年の引退式に僕はいつもの笑顔で謝辞を述べる。 「これからも皆、大変だと思う。僕らはもう野球部員ではなくなってしまうけど、野球がラブなのには変わりは無い。困ったことがあったら、何でも協力するから・・・。頑張ってくれたまえ」 そう締めくくって、中には泣きそうになっている部員とも目が合う。 その一人一人に頷きかけて僕は一つ咳払いをした。 「ありがとう、皆。・・・さあ！もう今日は解散だっ！お疲れだったね」 最後の日を皆で整備したグラウンドを眺めてから解散の言葉を述べる。 「おう、牛尾、お疲れだったな」 羊谷監督の言葉を聞きながら深く頭を下げた。 「本当に有難う御座いました。僕らが、あの地までいけたのは、監督のおかげです」 「・・・ったく。何いってやがる。・・俺ぁこういうのは苦手なんだよ・・・。・・・ま、皆の努力のお陰だろう。それで・・・お前は帰らねーのか？」 一人一人去って行く部員を見つめて『今日は僕が鍵をかけたいんだ』と我侭を言った僕に快く応じてくれたんだとそう、話す。 「・・・お前らしいな・・・。それじゃあ、あんまり遅くならないようにな・・・。俺は帰るから。鍵は・・・・明日の朝までに返してくれれば、いい」 それにまた深く礼をして『お疲れ様でした』と声をかける。 グラウンドには、僕一人になった。 皆で整備したグラウンドにもう一度、トンボをかけ始める。 これで最後なんだ。 それぐらいはしたい。 それにこれに没頭でもしないと、今にも崩れ落ちてしまいそうだ。 もう、僕はキャプテンではなくなる。 だからと言って、今迄積み上げて来たものがなくなるワケではないのだけれど。 白紙に戻るのでは無いけれど。 無くなるのは変わらない。 長い、長い夕陽が闇色に染まっていく。 広いグラウンドを一人で均すせば当たり前だ。 僕は一人荒い息をつきながら黙々と、トンボを整地していった。 ここで、最後だ。 最後の一片をかけて、終ってしまった。 そう、いつかは終る。 やはり、我慢が出来なくて熱くなって来た目頭を覆う。 それから、その場に仰向けになった。 「・・・・くん・・・・」 終ってしまった。 キャプテンであった日が終った。 彼と話した最後の言葉は何だろう、と思い出す。 確か猿野くん達と一緒に「ありがとうございました」だったはず。 キャプテンと後輩。 その関係が終った瞬間。 僕は嗚咽も無く、泣くことをやめた。 まだ、ボール磨きが残っている。 目を開けて起き上がった。 後ろから冷たい感触が頬に掠めた。 「っわ！」 僕は心底びっくりして後ろを振り向いた。 「・・・お疲れ様っす」 続く≫ ≪new[3] NOVEL back≫ [0]TOP。 |