終わりというのは、あっけない程簡単にやって来ますよ。
 例えば、無実の罪で亡くなった方にしても。

 一度汚れた手は真っ白になる事はありません。絵の具のようなものです。一度色を混ぜると真っ白になることは無い。そのようなものなのです。
 Lとして動いてしても。もうその手は真っ白になることはありません。



『Call』




 どうして、そんな話しをしたんだ、と月はLを責めた。
 これでは、もし死神の目を使う自体に陥ったとしても、だ。そんな事は起きないだろうが。もし、陥ったとしても、彼を殺せなく、なる。
 とんだ罠だと思った。
 素晴らし過ぎて、卑劣過ぎて目の前が真っ赤になった。
 だからこそ。もしも。Lに逮捕されそうになったとしたら。
 そういう自体が起きれば、月はLを殺してでも神になろうとするだろう。
 そのような子供が、そのような目にあうような社会にしないために。
 もう、二度と、間違えないよう。
 慎重に。
 だけれど、その日が来るまでは、せめて。

 吐き気のするような愛情に。
 僕は答えようと思った。


「ああ、竜崎。うん?留守電か。珍しいな。最近はこっちに来ないから、少し寂しいよ。仕方ないから僕から行ってやろう。何か差し入れを持って行こうか?なんでもいいよね。竜崎はケーキならなんでも食べるから。
 あ、そうだ。ここで言うような事じゃないけどさ。流河も竜崎も。Lだな。頭文字が。Rでもいいんだろうけど。何かのポリシーかな。今日、行った時に聞かせてくれ。
 もしさ。それがLであるっていうメッセージなら。僕は今もお前の本当の名前を呼んでいることになるね。竜崎。竜崎。
 竜崎。欲しいものがあったら、僕がそっちにつく前に連絡してくれ。一時間くらいでそっちにつくから」
 一気に頭の中で整理して、月は留守録が切れる前に言い切った。
 言い終わった少し後に録音できる時間が終わる。
「それじゃ、ケーキ屋に寄って行くかな。そういえば、あいつらが竜崎にリベンジするとかって言ってたな。ケーキバイキングでリベンジなんて本当大胆だ。きっと流河が本気になったら店一軒のケーキなんて無くなってしまう・・・」
 前、今度一緒にどうですか?といわれた時に断った月だが、一度Lが皆を圧倒するぐらいに食べているのを見るのも一興だと思った。その場面を想像して軽く笑ってしまう。
「さて。やっぱり竜崎はショートケーキが1番なんだろうな」
 あれは夢の食べ物だ、と言っていたLを思いだして、やはり、笑う。
 最近笑うことが多くなったと思う。
 月の手は、血に汚れていて、地獄にでも落ちる覚悟は出来てはいたから、些細なことで笑うことなんて無かった。
 それ以上にこの世に心から微笑ましい事が存在しているとは思わなかった。いや、思っていたからこの世をそういう優しいだけの世界に変えようと思ったのだが、自分がそういう体験をした事は無かった。
 Lに会ってからは、己と渡り合えるスリルから笑んだ事はあっても。こんなに柔らかく笑える日が来るとは思わなかったのだ。
 そんな自分が不思議だ。とても。
「すみません、このショートケーキを二つと…後は適当にお勧めのやつを5個下さい」
 オーダーして、保冷剤もいれて貰ったケーキの箱を下げて月は店の外に出る。


 時計を見た。
 少し店は混んでいて、(Lはなかなか味に五月蝿いから美味しいと評判の店に行くと時間がかかるのだ。)多少時間が経ってしまったが、これくらいならば予告通りにつくだろうと思った。
 今日もLは月の買って来たケーキを頬張るのだろう。
 美味しそうに。
 幸せそうに。
 思って、Lのいるホテルへと向かおうとする。
 ここからならば、歩いて行ったほうが早そうだ。
 しゅんしゅんと横切る車の風が生ぬるく、ケーキが溶けてしまわないかと少し心配になる。
 そこで一応、道路側で無い方の手に持ち替えた。


 顔をあげる。



 Lの言葉が脳裏に過ぎった。






 終わりというものは確かにあっけなくやって来るようだ。












 ああ。一時間で到底つきそうにない。




////To be continiued////

2005.07.07


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