真実をお話ししましょう。 私の持っている最大の真実。 知っていました。 知っていました。 私は。 この日が来る事を。 だから、私は。 だから、私は。例え、卑怯で醜くて、それでも。今迄歩んで来た人生を。後悔などしません。 『Call』 「エルッツ!!」 Lはゆっくり唇の端をあげた。 「大丈夫ですか?」 月の動転した声なんて聞いた事などなかったらか、得をしたな、と思った。 「大丈夫だなんて―――確かに僕は大丈夫だがっ」 「そうですか。それなら、良かった。私は死の法則に勝てたのですね」 「なに、何を言ってるんだ!竜崎!!いいから、黙ってろ!すぐに救急車が来るっ!!」 血相を変えて、己の手を握る月に、Lは微笑みかけた。 「いいえ。それは間に合いませんから。それは私が1番よく知っていますから。ですから、その前に。夜神くんに真実をお話ししましょう。」 「馬鹿なことをいうなっ!!すぐに救急車は到着するっ!!まだ、諦め―――」 「夜神くん。そういう事じゃないのです。そういう希望とか、そういうモノは残っていませんから。私は。死神の目でそれを知っていますから。」 「!?」 「何故、私が夜神くんがキラだと確信できたのか、お教えしましょう。もう、気付いていると思いますが。私が、時間でいうなら、そうですね。第一のデスノートの所持者だからです。」 「な、にを・・・」 「私の過去のお話しで故意に切り落としたところがあります。私は、遠い昔にデスノートの所持者になりました。それで、思ったことは分かりますか?私の妹を薬漬けにした―――、彼女を性奴隷とした―――。私だけでは飽き足らず、彼女を辱めた男達に復讐しようと思ったのです。彼女が薬漬けにされていると気付いたときには、もう彼女をつれて逃げるには遅かった。ならば、ならば、せめて。彼女を貶めた奴等を根絶やしにしようと思ったのです。あの、ノートで。」 「・・・・・・・」 「そこで、まあ。あのような組織です。勿論本名ばかりの人間はいません。てっとり早く彼等を始末するのに、目の取引をしました。どうせ、生きているか死んでいるか分からないような命です。半分に減るというリスクなんてどうでも良かった」 「・・・・・・・」 「そして、私は彼等を殺しました。妹の、手を取った。『私が、恐いものを消してあげたよ』と。・・・きっとデスノートを所有したことで運命は変わっていたのですね。妹は、彼女は私を殺そうとしましたよ。私の愛しい人を殺したのだと。」 「・・・・・・・・・・・・」 「彼女が。どういう経過でそう思ったのかは知りません。ただ、強姦というのは、体と同時に心を壊す行為です。彼女がそれに耐えるには、彼を愛してるのだと思わねばならなかったのだと、そう思います。薬でそういう風に仕向けられたのかも。・・・でも、もしかしたら、本当にそう思っていたのかもしれませんけどね。兎に角・・・彼女は泣きました。泣いて、泣いて、私を殺そうとしました。」 瞠目して、声すらない月をLは見つめる。 「私はその時、とても悲しかった。彼女の為と思ってした事が彼女を傷つけるだなんて思わなかった。それが例え、偽りでも、なんだったとしても。彼女が私を殺そうと思うくらい傷ついたのが、悲しかった」 タイムリミットは刻々と近づいて来ている。 月のタイムリミットが、Lのタイムリミットの筈だから。 そうでなくても、じょじょに力が失われていくのが、分かる。 「その時、私は死んでもいいと思った。そう思ったのはきっと事実です。生きたかったけど、死んでも良かった。愛したものの為に逝くのは、醜いエゴだと思います。残されたものの感情などお構いなしの。」 「・・・・・・・・・・・・・」 「でも私は、今もそう思ってます。あの時、私は死神によって助けられました。何故助けたのかは、判りませんが…。そして…私はもう十分生きました。死ぬ予定だった筈の時間からずっと長く。 だから、もういいんです。 私、一度一方的にですが、月くんとお会いしてます。利発そうで、幸せそうで、とても透明で。それが今日終わると知って悲しかった。それ以降、忘れていましたが、キラ捜査で、思いもかけず貴方にあった。貴方の寿命は見えなくなっていた。それで、貴方がキラだと判った。 それから、ともて悲しかったのを思いだしました。羨ましかったのと。 死んで欲しく、なかった。 死んで欲しく、なかったんです。 何故なら、貴方は私の初恋の人だから。 とても、羨ましかった。 とても、悲しかった。 とても。恋しかった。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 月に言葉は無い。言葉になるようなものなど、無かった。 「だから、近づいて。Lとして過ごした日々の中で、少しでも思い出が欲しかった。 判っていたのならば、すぐに検挙も出来た筈なのに。 とても、私は醜い。 罪を犯したその口で貴方を罪だと言っておきながら、再び罪を重ねました。 死刑囚達を見殺しにした。いずれ刑に服する人間だったとしても。 私と貴方は同罪です。 貴方との思い出が欲しかったために、私は彼等を見殺しに、しました。 彼等には彼等の死を悲しむ人々がいるのを知っておきながら。 私はとても、罪深い。 ふふ。きっと私はあらゆる意味で貴方のターゲットですね。 でも。後悔はしていません。 とても、楽しかった。 楽しかったです。夜神くん。 話しもした。かくれんぼも楽しかったです。ケーキを一緒に食べたのも。 テニスをしたのも。 夜神くんをからかうのも。 怒られるのも。 キスを・・・したのも。 夜神くんの、名前を呼べたの、も。 楽しかった。楽し過ぎて、永遠に続けばいいのにと思ったくらい、楽しかった。 ひとつ、約束してください。 私を。忘れないで下さい。 好きになってくれなんて言いませんから。 忘れないで下さい。 私が、私として生きたことを。 その証に、Lの名前を継ぐことを。 全部貴方に委ねます。 出来れば、これから、貴方のゆく道が、茨の道では無い事を。 名前を呼んでくださって、 ありがとう ございました」 彼はそういって、紙切れを取り出した。 指先から滴る血で、名前を3回書く。 「 」 声も無い悲鳴が轟いだ。 ////To be continiued//// 2005.07.07 …………………… [0]TOP-Mobile- |