最近ニアの話は
「Lは」ばかりだ。


【僕らの青空】


ニアがLの跡を継ぐ為の特殊訓練を受けるようになってから、随分日にちが経つ。
それに伴い、僕らが一緒にいる時間が減る。
自ら個人を棄てようとするニアがよく分からない。
探偵になりたければ自分の力のみでなればいいじゃ無いか。
1から自分で作ってこそ楽しいもの。

「メーロ!ボール あそび しよ!」
遠くから同じ院の子供がボールを高く掲げた。
ニアは相変わらず、Lを継ぐ為の訓練に励んでいて、メロは一人もて余した時間を院の子達と費やす事にする。
「いっくぞー!」
不満をボールにぶつけるようにして蹴りあげると、高く高くボールは弧を描いて舞い上がった。

「ボール、綺麗に上がりましたね」
「L…来ていたのですか」
ニアが一人書庫に留まっていると、気配も無く部屋に訪れたLがお菓子片手にペタペタとニアに近付いて来た。
「はい。初めましてぶりですね。今日は仕事に一旦区切りがついたので。…ニアがとても頑張っていると聞いたものですから」
「…、お疲れさまです」
ニアは少し照れたように下を俯く。
Lは近くの椅子をひいて、よっこらしょ、と足をかけた。
「今のはメロですね。綺麗な放物線を描いてました。」
「メロは運動神経がすごく良いのです」
「そのようですね。それにとても楽しそうです。…楽しいというのはいい事ですね。…ニアは外で一緒に遊ばないのですか?」
言うとニアは眉を寄せる。意地悪ですよ、と呟いた。
「…僕ー…私が運動音痴だと知っていて言うのですか、L」
その顔があからさまに拗ねてます、と言わんばかりなので、Lは思わず吹きだした。
「失礼ですよ、L」
ニアがしかめっ面で注意するのに、しかしLはまだくすくすと笑ったままだ。
やがてLが笑いを抑えると、持参したチョコトリュフを口に放り込み、ぐむぐむと口を動かす。
「これは失礼しました。」
「…謝るのが遅いです、L」
「…。ニアは外で遊ぶのは嫌いですか?」
やはり拗ねたままのニアにLはひっそり笑むと、ゆっくりと質問した。
「…嫌いでは、ありません…」
「…では、皆で一緒に遊ぶのは?」
「……嫌いでは、ありません…」
「微妙なニュアンスですね。それは好きだととっていいですね?」
首を小さく傾げ訊ねると、ニアはひそりと嘆息を漏らした。
「Lには敵いません…。そう、好きです。ただ、内で何かを紐解く方が性にあってるだけです」
「…どれだけ年が離れていると思っているのですか。…そうですか。では今から外で皆と一緒に遊んでくるといいですよ?」
「………。L、私の話を聞いていましたか?どうして、そういう話になるのです」
「おや?違いましたか?ですから、ニアは皆の足を引っ張るのが嫌なんですよね?作戦で補うだけでは嫌なのですね」
「………………」
「凄く羨ましそうに外を見てますよ。メロも寂しそうです。友達は大事にした方が良いですよ」
「……………Lは、」
「はい」
「いえ、何でもありません…。…Lも一緒に行きますか?」
少し考えた末にニアがLを誘うと、Lは鳩が豆鉄砲を食らったような顔で二度程瞼を開閉させた。
「いえ、私はいいですよ。ここで見ています」
「そうですか、でもLは寂しく無いですか?」
そうニアが問うと、Lは破顔した。
「いいえ。今まで友達とお話できましたから」
「!」
「では、行ってらっしゃい、ニア」
「はい。行って来ます、L」
とたた、と消えていく足音を聞いて、Lは窓の外を眺める。
外では合流したニアに、メロが大きく笑った。



…………………………
…あとがき…

ちょっと分かり難いので補足。
ニアは最初の日以来、Lには会っていないのに「Lが、Lは」と言っています。ニアは今までLが解いた事件で一番簡単な物の資料を見せられてます。それで「Lが、Lは凄い」という話になります。
メロは当然面白くありません。
それに気づき、ニアは話すのを止め、二人の間に奇妙な溝が出来はじめます。

ニアは元々天才型なので、与えられた情報を土が水を吸収するように吸いあげます。なのでこの時点でニアは話し言葉に漢字を混ぜるようになりました。
二人はまだ小学生にもなっていないので、読める本が限られていたので、才能はあってもまだ伸び切ってません。なので、メロは難しい言葉は知っていても、漢字は知りません。

ニアの一人称について。この回で『僕』→『私』に切り換えました、一応。でもたまに混じります。

Lの友達。
月に「月くんは私の初めての友達ですから」とか言っておきながら、ニアが初めての友達だったりしたら面白いかな、と。
その場合は「月くんは私の(同年代で)初めての友達ですから」とすると、私がひっそりと笑います(キショイ)

メロ
は色んな意味で出遅れてると楽しいです。
今までは、限られたぬるい範囲だったので、テスト(あるのか?)がニアと一緒で満点。だから、まだ差に気づきません。
そんなワケで、Lの後継ぎ候補を名乗り出るのも二番。Lと友達になるのも二番。(笑)

二番なのに一番なメロが大好きです(笑)

アトガキが長くてすみません…

水野やおき2005.06.18


////next stage////

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