傷が癒えれば、ここを出てゆく。


第6話『二人の食事』


 彼が修練を積んでいる間は、私は一人でぼんやりと過ごす。
 常に神経を張り身の危険を考えずにいられる事はとても、幸せなことだと考える。
「本とはとても興味深いものですね」
 簡単な読み書きは母から習っていたので、彼が薦めてくれた本に読み耽った。
 他にする事もなかったので、彼の提供してくれる本を読んで、部屋を簡単に掃除するくらいだ、私の出来ることといえば。
 本を読み終えて、彼が帰ってくる前に暖炉に火を熾した。
「メシ」
 彼の足音が聞こえたかと思うと、乱暴に扉が開かれる。
 もって来たトレイからは湯気が立っていて、それがとても美味しそうに思えた。
「食べようぜ」
 教会の人間は通常食堂に集まって食事をする。彼もその例外では無いが、こうして自分に与えられた食事を持って、私がいる部屋まで戻って来る。
「ほら、パン出しとけって言ってるだろーが」
 言いながら、彼は戸棚の中から彼自身のお金で購入したパンとカップと皿とフォークを手早く並べて自分のものと折半し始める。
「私はパンだけでも十分ですと言った筈…」
 呟く私の言葉に彼はチラリと視線をやっただけで、作業する手を止めることはない。
 きちっと半分にし、トレイをずいっと私に突き出してジロリと睨んだ。
「病人がアホな事を抜かすな。だから、テメーは白いんだよ」
「…いえ、これはあの、天然なんですけれど…」
「うるせえ。俺の親切が受け取れねーって言うのか」
「…何かどこかで聞いたことのあるような酔っ払いの文句のように聞こえますが…、そういう問題ではなくて」
「じゃあどういう問題なんだ。俺は外でも物を食おうと思ったら、食えるんだ。お前はさっさと傷を治すことを優先しとけよ」
 言って、彼は私の膝の上にとっととトレイを置いて、自分は勉強机の上に本を広げて食事を始める。
「…」
 私が彼の好意を諸手を挙げて受け取れない、理由は幾つかある。
 何の恩も返せないのに、長々と彼の食事と財を削らせるような事は出来ないという事。
 この生活に慣れてしまって、元に戻った時に抑制するのが大変だからという打算。
 そして、毎度と言っていい食事の回数ほど、部屋に下がる彼の評価が落ちるのではないかと思った事。
「いただきます…」
 私はポツリと呟いて、彼の与えてくれた食事へと手を伸ばす。
 彼はもう既に文字の虜となっていて、返事は無い。

 確かに、彼の言う通りに傷を治すことを最優先にさせなければならない事は分かりきっていた。いつまでここにいられるか分からないというのもあったし、それに彼の負担になり続けることも出来ないとも思うから。

 それで私はやはり機械的に食事を口に含む。
 芳しい匂いが口いっぱいに広がる事実を覚えないようにして。


Next second stage


…………………………
…懺悔…

なんてゆーかニアメロニア?
てゆーかカップリングですら無いような気がしてきました。
エロがなければカップリングとは呼ばないのだろーか。
キスがなければカップリングとは呼ばないのだろーか。
当初はその予定があったりなかったりだったのですが、今はどう転ぶかわかんねーや。(あは☆)
次はやっとLたんの登場の予定。いや、やっぱり絶対出てくるよ。出ないなんてありえないよ、私の連載にLたん必須だよ。
2005.11.30 水野やおき

日記での連載形式をとっておりましたが、移しました。
2006.06.08




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