ざわり、とニアは背筋を強張らせた。 見つかった。 第9話『ニアとベット。』 「何も返すものはありませんけれど…」 「気にするな」 「本当に有難うございました」 「…ああ」 朝。 いつものように起きて、メロは服を着替えると、朝のお勤めに向かう為に自室の扉の前に立つ。 「そこのパン、どうせだから持っていけ。食器類も、いるもんがあれば持ってけばいい。…オレが戻るまでに出ていくんだろ?」 彼が確認するように聞くのに、私は「はい」と答える。 「タイミングを見計らって、見つからないように出て行きます。パンは…そうですね、有難く貰っていきます…。…それよりも、遅れますよ。早く行った方がいいのではないですか?」 メロの表情は変わらない。落ち着いた眼差しで私をそこにあるモノとして映していた。 「…そうだな。…じゃあな」 「ええ。さようなら」 彼の部屋にもう何時か留まる私が「さようなら」を告げるのが、何だかおかしくて、心の内でちょっとだけ笑ってしまう。 彼はふいっと視線を逸らすと、いつもと同じ足取りで、聖堂に向かって行った。 「…この部屋ともお別れですね」 一人、残された私は、息苦しさを感じて、胸を掴みながら、部屋を見渡す。 もう、二度と踏み入れることは無いだろう。視界に映すこともないだろう。 それでも、きっと私はこの光景を、彼を忘れることは無いのだろう。 「…ああ、どうして、胸が苦しいのでしょうか…。怪我も治ったというのに…」 もしかしたら胸の病気で、別れてすぐに果ててしまうのかもしれないけど、出ていかないわけにはいかない。死んでしまうのなら、尚更、彼に迷惑をかけるわけにはいかない。 そっと畳んだ毛布をソファの端に置く。 せめて、最後に部屋を綺麗にして行こうと思い、皺になったベットに歩み寄った。 皺になったベットシーツに指を這わす。 「…、…」 綺麗にして行きたいと思ったのに、残り香が強いベットに私は倒れるようにして、身を伏せた。 「…、…こんな気持ち、私は知らない」 くん、と鼻をひくつかせると、体中に彼の匂いでいっぱいになる。 「…離れるという事が、こんなに苦しい事なんだと、初めて知りました、メロ」 少しだけ硬いベットも、とても優しく受け入れてくれる。 私の居場所ではないけれど、ここはとても、彼はとても、優しくて。 「…私が、悪魔でなければ、ずっと一緒にいれたのでしょうか…」 答えは分からない。 けれど、悪魔でなければ、追われることはきっとない。 「…どうして私は悪魔に生まれてきたんでしょうね…」 Next second stage ………………………… …懺悔… すすまねー…。 今更、アレ?とか思ってます、ごめんなさい。 ラストのみは決まっておりますが、どこに行き着くやら分からない感じです。 2006.07.23up …………………… [0]TOP-Mobile- |