「だってメロはそんな事しないでしょう?」


【悪魔の条件】



メロはソファーにごろんと寝転がりながら、今後の事を考える。
期限は一年。
それまでに、メロがいた時代で機動軍のトップにまで上り詰めた、人間あがりの天使、ニアを産む母体を葬らなければならない。
何度か対面した事がある。
目の前で刃を交えた事がある。
その上で、ヤツの独特の気配を察知出来るのはメロだけだ。
人間だった頃に出会っても必ず分かると明言出来る程、ニアの気は強い。
しかし、『人間だった頃』では不味いのだ。
一度でも呼吸をしてしまうと、それですぐに手を打ったとしても、それは天使になってしまい、逆に、早く天界に上げてしまう事になって、結果的に不味い事になる可能性の方が高くなる。
しかし、生命が宿ってもいない状態で、母体を割り出す事も出来ない。
だから、ニアが産まれたと推測される時期を少しだけ遡って、一年の期限が与えられた。
此方の天使の動向を探りつつ、母体になる女を探さなければ、ならない。
「…あの、糞ハゲ!!」
今から地界はおろか、人間界までもを双肩に背負ったメロの力を削いでしまうような送り方をするとは何事だ。
力がなければ、広範囲を探す事は不可能だ。
ニアが天使として上がったのがいくら『この辺』だからと言って、産まれもここだとは限らないと言うのに。
それでも、時間は待ってはくれない。明日になれば、この足でここを拠点に、それを探し回らなければ、ならない。
メロは、エルが少しネジの飛んだ思考の持ち主で良かったと思った。
『父親に勘当され、家を放り出された。これを機会に、一度逢ってみたいと母親を探している』
あながち間違った説明では無い。父親の術に根こそぎ力を奪われ、放り出された。ニアの母親を探さなければならない。
まあ、嘘をつくのが仕事のようなものだ。悪魔の力を奪われて、思考までぬるくなったかのように感じたが、問題は特に無い。
メロは合理主義者なのだ。
(…ともかく、とりあえず、寝るとするか)
今はひたすら眠かった。
鉛のような重さが一刻一刻とメロの体に覆い被さって来て、夢の世界に誘う。
一つ大きな欠伸をする。
(…本当、分けのわからん女だ…)
あれだけ、肉欲は駄目だのなんだのと、人の頭を殴ったりしておいて、平気でメロを居候させる事に承諾する。
それで、あまりにも無防備なその答えに、メロが疑問をぶつけると、エルは微かに笑って答えるのだ。
一点の疑いも無いというように。
『だって、メロはそんな事しないでしょう?』と。
『私、人を見る目はあるんです』
彼女はそう言い切った。
「どうだか…」
悪魔の自分をそんな風に思うだなんて、先行きの心配な眼力だなあと思う。
「…変な女」
アレが母体という事だけはなさそうだと、メロは思い、目を閉じた。


Next second stage


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…ひとこと。…
夢の同居!(笑)
2006.06.19up



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