「…キラが現れてから犯罪は激減したからと言って…」
 反感がなくなるという事は、無いものだ。


【残酷ピエロは三度啼く】


「夜神さん、ようこそいらっしゃいました」
「いえ、まだ勝手も分からないような新人ですが、どうぞ宜しくお願いします」
 もう警察はキラ逮捕の為に動いてはいない。
 少なからず、そういう非公式の組織はあったようだが、それももう時間の問題だろう。
「それでー?犯人の手がかりは少しも?」
「ええ。かなりの知能犯らしくー…。今特別チームを作っているのですが…」
「…それに僕も…、という事でしたね」
 『僕も』…も何も無い。キラに警察データは全て渡すようにしてある。そこで、キラである僕が選んだ人間で特別チームを作ったワケだ。
「…そうです。では、もう集まっている方々に顔合わせをしましょう」


「まぁ、こんなものかな…」
 初の顔合わせ、今後の方針も決めて解散になった後、ホテルに戻り月は息を吐く。
『月ー…このりんご酸っぱいぞー…』
「ははっ。お前が明日を待てないって言うからじゃ無いか。もうホームシックか?」
『そんなんじゃ無いが…ジューシー?なリンゴが食いたい』
「分かったよ、リューク。明日リンゴを買いに行こう。流石にルームサービスには無いからね」
 フルーツを頼めば中には入っているのかもしれないが、そんな非効率な事はしたくないし、リュークとて、切ったりんごが出て来ても不満だろう。
 だから、そう言って月はバスルームに入る。今日の出来事を考えた。
 優秀と言われる者達ばかりを集めた。
 ノートのルールも死に神の存在も知らない奴らに出し抜かれるとは思わないが、能力は分散させた方が良い。しかし、そこに自分が加わるなら、動向をチェックするのにも優秀な者を集めた方が効率的だ。そこに月が加わる口実にもなる。
「…けど。そんなに期待出来そうに無いな…」
 頭が切れる人間が総て警察に入所するわけじゃない。まだ全部に顔を合わせたわけではないが、だとしてもこんなものだろう、と月は熱い湯で汚れを落としながら目を瞑る。

刺激が足りない。

 上手くいかないと腹は立つが、人類の神になる…という偉業さえ意のままになり過ぎて、それが少し面白く無い。
 良い人間ばかりの世界を作りたい…と思ったのは間違い無い事実だが、退屈していたのも事実。
 今回の事件は地元警察では歯が立たなかったらしい。相手はキラに逆らう反逆者であるから、楽しむ・楽しまないー…も無いのだけど。
 思って、ふとLの顔が浮かんだ。変わった顔の変わった奴。
 あまり表情の動かない、けれど不思議と退屈しないー…。
「…明日からならいつでも、か。」
 頭も切れた。もし、Lなら何と言うだろうか…と考えて楽しくなる。
「お休み、リューク」
 バスルームから出て、頭も半乾きのままベッドに転がった。
 キラの捌きは朝に済ませた。第二のキラも、いる。
 今は楽しい気分そのまに眠ってしまいたかった。
『月―。明日はリンゴなー。』
 リュークの声が聞こえて、月は「ああ」とだけ呟いた。
 明日は何を買っていこう。



////To be continiued////



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