同意が得られれば、幸せになれると思った。
誰よりも認めて欲しかったのに。
否定されて、悔しいわけではない、悲しいわけではない。
なのに、泣きたくなった。


それでも僕は戻れない。


【残酷ピエロは3度啼く】


 キラに逆らう犯罪者を追って、早二月が経つ。それでも未だに正体は依然として知れない。このまま、イタチごっこを続けるだけならば、別に構わないと、今の僕は思う。
 声を大にして叫んでも、前のような社会に戻るはずも無い。キラを消さない限りは。ならば、好きにさせればいいのだ。殺しの道具はデスノート、簡単に捕まる筈も無い。
 相手は不道徳な輩ではない。キラに、キラの思想に逆らう者を不道徳といえば不道徳だと思うけれど、事は人の死だ。簡単に、声高にキラを持て囃す人間よりかは随分とまともだ。きっと時間さえかければ、そいつらもいつか納得する筈。
 キラを否定するのは、Lだけでいい。
「それじゃあ、お疲れ様」
 月はそう言って、捜査本部を後にする。通勤の為だけに買った車で、家路へと戻る。
 暗闇の中の雨は視界が悪い。こんな時間に出歩きしている者がいるとは思えないが、月は注意深く走行する。
「…っ!?」
 その甲斐あってか、倒れている人間を轢かずに済んで、月は胸を下ろした。
 それからはっとして車を飛び降りて、倒れている人間も元へと駆け寄った。
「おい、大丈夫か!?」
 ヘッドライトに照らされた、髪は黒く、いつも隣に見ていたシルエットのように見える。
「…L、L!?」
「…ライ、ト…くん…?」
 ざあざあと降りしきる雨に体温を奪われて、ぼろ雑巾のような姿のLは、死人のように冷たい。
 それにぞっとしながら、月は急いで、後部座席へとLを抱きかかえて移動させた。
「誰に何をされた!?こんなところで一人でっ!!」
 真っ白だったシャツは今は泥だらけに汚れていて、あちこちに赤い裂傷がある。
「………」
 薄く目を開けると、ゆっくりと探るように手を伸ばすLの氷のような手を掴むと、月は自分の頬にひたりとあてがう。
「僕はここだ!誰に、誰に、こんな酷い事っ!!!」
「…私は、大丈夫…です」
「どこが大丈夫だ!?今すぐ医者に」
「いえ…傷自体は、そんな酷いものでは、ありません。だから、連れていってくれるなら、月くんの、家へ」
「バカ言うな!僕の家では満足に手当ても!!」
「…怖い、のです」
「え?」
「…暗闇は怖いのです。何があるか分からない、ですから…、だから…」
 Lの言わんとしている事に気がついて、月は一言「分かった」と低く呟いた。そのまま、運転席に移り、車を飛ばす。
「…月くん。私が悪いのです」
 Lの小さな声が聞こえた。
 月はそれに「そんなわけがあるか」と煮えたぎるような怒りを押し殺し、そう返した。


////To be continiued////

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