ああ、月くん。


【残酷ピエロは3度啼く】


 被害者届けを出すと月が言った。
 Lはそんな事をせずとも、と思ったが、昨晩の月の様子を見て、それで月の気が晴れるならば、とペンを走らせた。
 Lは目が見えないが、視力を失くすまでに字は覚えていたので。
 しかし、あまりいい待遇とは言えなかったが、数度しか逢った事の無いLを育ててくれたのは、彼だ。
 思わず、被害者届けに義父の名前を書いてしまったけれど、このまま月と行こうとする自分は酷い親不孝者に違いない。
 たいした刑ではないだろうが、一言も謝ることもせずに、去るのは流石に気が咎めた。
 だから、月の家を出、盲目のLが唯一覚えた道を辿って長年自分の暮らしていた家へと戻った。
「…ああ、月くん…!」
 光を亡くした両の目から、涙が溢れた。
 何という事を。何という事を。何という事を!!
 鉄臭い匂い。ぬめった床に足をとられた。
 思わず尻餅をついた直後に、ガタンと他の部屋から音がした。
「お義父さん!?」
 一縷の望みをかけて、Lは床を張って扉を開けに行く。
 確かに、人の気配がした。けれど、どんな気配かなんて、気が動転していて気がつかなかった。きっと、目が見えていたら、すぐ傍にある死体にも気付けただろうに。
「…っ誰ですか!」
 膨れる殺気に、やっと気付いた。
「殺そうと思ったら、もう死んでるんだから、嫌になる。だが、オレは運がいい」
 喉が引き攣って、声が出なかった。
 どこからやって来るか分からない恐怖に、全身が強張って逃げることも出来ない。
 本当の暗闇を覚悟した。
 もう、生きているのか、死んでいるのかさえ、分からない。

「ッグあっ!!」

 衝撃のないままに、何かが倒れる音がした。



「残念な事だが、君は運が良かった。容疑者が心臓麻痺で死ぬなんて」
 暫くしてやって来た警官が、そう言った。
 Lは、思わず顔を覆う。

ああ、
ああ…、
なんてこと…!


月くん。
やはり、貴方なんですね。
私の命を助けたキラ、

そして、私に殺しをさせた、キラ。


///to be continued///

……………………
[0]TOP-Mobile-