残酷ピエロは真っ暗なステージで踊り続ける。
糸を切るまで、踊り続ける。


【残酷ピエロは3度啼く】


「月くん」
「…」
「私を助けてくれて、有難うございました」
 濃い霧が、足元から忍び寄ってくる。
「L。僕は」
「ずっと、貴方がキラではないのかと、思っていました。」
「L」
「私は貴方に助けられた。命も、気持ちも。幸せも、貴方が総て与えてくれました」
「…L、僕は」
「それでも、人を殺す能力だなんて、不幸な能力に決まってます」
「でも、じゃなきゃ、お前を助けられなかった…っ!その能力も否定するのか!?」
「自覚もなく、私は義父を殺しました。例え私の命が助かったとしても、私は人殺しです」
「お前をあんな目に合わせた…、殺して何が悪い…っ!」
 喉が切れそうな程に叫んだ。Lは何も見えない目でじっとそれを見ている。
「とても道徳のある人間とは思えなかった!お前をあんな目にあ遭わせたっ!確かにそれの責任は僕にもある…!だが、あんな人間生かしておく価値など、無いっ!!」
 ぜえ、はあ、荒く息を吐く。
 分かって欲しかった。解って欲しかった。判って欲しかった!
 理解してくれなくても、いいと思ったのも、本当だ。
 キラの事など、理解してくれなくとも、僕を思う気持ちだけあればと思ったのは本当だ。
 だからこそ、僕の気持ちだけは理解して欲しかった。
 お前を傷つけた人間に、報いを与えようと思った、僕の気持ちだけは。
 残酷なピエロを演じるのに、辛さは無かった。
 僕一人が道化に徹すれば、世界は優しくなれるのならば。
 涙など、流さずにいよう。辛いなどと、思わずにいよう。苦しいなどとは、けして思わずに。
 キラという神の思考による秩序を守り、遵守しよう。そう思った。けれど、僕も人間だ。
「有難う、私のことをそこまで想ってくれて…月くん」
 僕は僕の中のキラに背いた。
 やって来た一切の事が色を失った。
「でも、私は。貴方を許せません。許すことは出来ません。そして、これ以上貴方が苦しむのも、見ていたくありません。ですから、死神」
 Lの口がゆっくりと開いた。
「私と目の契約を」
『はいよ』
 手には真っ黒なデスノート。
「所有権は僕にある…!何故そんな事をする、リュークっ!!!」
『だって、月。Lの方が過去にいるんだからな〜、仕方ない。』
「きっと、私は貴方の苦しみを解放する為に、出会ったのですね。私が光を失ったのも、全てが今の為にあったのです、きっと」
 Lの閉じられた瞼がゆっくり開いた。
「ならば、今までの苦しみなんか大した事じゃありません。私が光を失わなければ、貴方は無防備にノートを私の前で出してみたりなんかしなかったでしょう。私が世間の事を知らなければ、キラを語ったりはしなかった。一緒にいる事は出来なかった」
 視線が初めて逢った。
「ならば、とても幸せです。」
 Lが微笑む。一番幸せそうな笑顔で。


「やっと、貴方の姿を見る事が出来た…」


///to be continued///

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