ああ、どうして、また。


【残酷ピエロを幾度も殺し】


 Lが何度目かになる確信を抱いて数日、寸暇を惜しんで資料の山に埋もれていた時だった。…ニアからワタリを通じて連絡が入ったのは。
 一層深くなった隈を擦ってから視線もあげずに「はい」と声をあげた。
『一連の死には何か関連があるというのは私とメロも同じ意見です。しかし、この段階で犯行が個人だと特定してもいいものでしょうか…』
「いいんです。必ず同じところに行き着くと思いますが、これは個人の犯行です。しかし、直接手が下せるわけではない。証拠はある、鍵は必ず存在する。今までの死傷者のリストから見るに、犯人は日本人。そこまで特定してもいいと思います。また後で新しい資料を送ります。そして、前回も言ったように、まだ警察にはこの事は秘密にしておいて下さい」
『…分かりました』
「もういいですか」
『いえ、事後承諾になりますが、人員の補充を私とメロの独断で行いました。今、添付ファイルを送りましたので、一応確認してください』
 ニアの声とほぼ同時にスクリーンを切り替わり、ぱぱぱっと補充要員のデータが画面に写し出された。
「ええ、大丈夫だと思い―…」
 ます、という語尾が喉につっかえて、思わずLは言葉を詰まらせた。息苦しさを覚え、ぎゅっと胸元を握り締める。
 苦痛に顔が歪む。不意打ちを食らった気分だ。
「…やがみ・…らいと…」
 出来るだけ見ないよう、聞かないよう、考えないようにして来た。
 嫌いになったわけじゃない。だから、切ない。
『「L?」』
 ニアとワタリの声が重なった。
『彼に何か問題が?』
 自分に協力してもらう配下にあたる人間はなるべくL自身が決めていた。特に日本に関わる捜査の場合には。
(デスノートに気をとられて配慮を怠ってしまった…)
「いえ」
 少し考えれば分かる事だったのに、よりにもよって、デスノートが関わる事件に首を突っ込ませてしまうとは。
 だが、ここで撤回するよう求めても、ニアは承諾するかもしれないが、彼はけして承諾しないだろう。むしろ、もっと躍起になってこちらの懐に飛び込もうとする筈。
(…それよりも、…私が怖いのは…。)
「ただ、彼を私にはけして、少しも、近づけないで下さい。その配慮をお願いします」
『L、知り合いですか?』
「違います。」
 ニアは今きっと、その目を細めて常日頃にないLの態度を窺っているのだろう。
 その様子を思い浮かべて、Lは少しだけ力を抜いた。
「違います」


////To be continiued/////

2006.08.31


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