どさっと、倒れこむ音がした。


【残酷ピエロを幾度も殺し】


「L!!」
 立ち上がった瞬間、ぐらりと視界が揺れて、Lは椅子の上にしがみつくようにして倒れ込んだ。
「…すみません、ワタリ」
 慌てて近づいたワタリの手をとって、ゆっくりと起き上がる。
「L、もう何日もきちんと寝てらっしゃらないのでは…」
 目の下の隈を一層濃くし、数段やつれたように見えるLの顔を、ワタリは心配そうに検分した。
「大丈夫です、きちんと仮眠をとっていますから。今のは少し油断しただけです」
「…L」
 渋い声音で、ワタリはLに静かに言い募る。
「どうしてそんなに生き急がれるのですか…。特にこの事件に関しては、些か理性を失っておられるように感じます」
「…しかし、」
「いいえ、L。確かにこの事件は前代未聞の大量殺人事件です。今でも数多くの犠牲者が出ている事でしょう。それも、類を見ないスピードで。放っておけば、取り返しのつかない事になることくらい私にも分かります。一刻も早く、事件を解決しなければならないのは、分かります。ですが、L」
「…私はまだ倒れたりしませんし、万一私が死んだとしても、後継者にはニアもメロもいますから大丈夫です。ワタリには迷惑をかけますが――」
「そういう話では無いのです…!」
 安心させるように囁いたLの手をワタリは強く握って小さく頭を振った。
「そんな話ではありません。ニア、メロの後継者も大事です。ですが、私はただ、L、貴方が心配なだけです――、恵まれない幼少時を送り、義父を殺され、そして目が見えるようになったのは良かった事でしたが、それと引き換えにするようにLの全てを犠牲にして、生き急いでらっしゃるLが、心配なだけです」
「…ワタリ…」
「どうか、この老いぼれの言う事を少しはお聞き入れください。多少休んだからと言っても大丈夫です。貴方のいうように、今はニアとメロという素晴らしい後継者がいるのですから―」
「…分かった、有難うワタリ」
 今にも涙を零さんばかりの表情で訴えられて、Lは頷いた。ワタリには迷惑ばかりをかけていて、確かに体の方も悲鳴をあげそうなくらい限界に近づいている。
「では、少しだけ眠ります。何かあったら起こしてください」
 言って、ベットルームへ足を運ぶ。体に鉛を仕込んだかのように重かった。
「リューク、私の寿命が見えますか?」
「ああ、見えるな」
「この事件を解決するぐらいまで、生きられそうですか?」
「さあな」
 Lはそうですか、と呟いて眠りに落ちた。


////To be continiued/////

2006.08.31


……………………
[0]TOP-Mobile-