「止めて下さい!!!!」
 悲鳴のような声がこだました。
「キラはもう顔だけで人が殺せる!!」


【残酷ピエロを幾度も殺し】


「よし、準備はいいな?」
 月は放送局と一部上部の人間に話をつけて、スタジオにいる護送警官に声をかけた。
 通称キラの潜伏地と、殺し方を判明させる為、Nに正式に許可を貰い、他国の警察が秘密裏に捕まえたリンド・L・テイラーと司法取引を交わし、自分の代役へと選んだ。
(Lと今連絡がつかないというのが、また良かったな。Lだと、もしかしたら止められる可能性がある)
 これが成功すれば、いや、絶対に成功する。そうすれば、月の地位は飛躍的に上がる。上部へと食い込むことが出来る。
 何しろ、Lが出来なかった事を、警察官である月が行うのだから。
「10分前です」
 密かに偲び笑いを漏らしていた所で、スタッフに声をかけられ、気持ちを引き締めた。
「分かった」
 背筋を伸ばし、用意された席へと座った。
 テイラーが映っているモニターのチェックをいれる。
 テイラーが殺され、そして月が生きていれば、キラの犯罪に必要なのが、顔と名前だという事を証明する事が出来る。
 照明が一斉に灯った。
「30秒前…5、4、3、2、1…」
『番組の途中ですが…』
 放映されている画面にも、テイラーの姿が映り、ナレーションがつけられた。
 月は静かに息を吸い込み、同時通訳と称して口を開いた。
「私は…」
『私は、全世界の警察を動かせる唯一の人間、リンド・L・テイラー。通称Lです』
「何っ!?」
 月が思わず声を上げるのと同時に、スタジオ内がざわざわと騒がしくなった。
「どういう事だ!」
 モニター内では、やはり自分では無い声が、滔々と月が考えていたのそっくりに台詞を述べていて、月は怒りに任せて思いっきり机を叩いた。叩いた手から振動が響き痺れたが、そんな事はどうでも良いと思った。この溢れんばかりの怒りを少しでも消化できるならば。
「まあ、こういう事だな」
「誰だ!」
「俺?俺は、メロ。LやNとの仲介役さ」
 突然現れた金髪の男に、月は憎しみの篭った視線を投げつけ皮肉で詰る。
「…天下のLともあろうものが、手柄を横取りか?」
「まさか。Lはお前と、警察の命を助けてやったんだよ」
 Lの仲介役と称した男は、月の視線を物ともせずに、涼しい顔でパキッと音をたてて板チョコを齧った。
「もう、キラは顔だけで人を殺せるようになっている」


////To be continiued/////

2006.08.31


……………………
[0]TOP-Mobile-