こんな状況だというのに、
 事態は不味くなる一方だというのに、
 気にかけてくれて、嬉しいというのが、本音だろう。


【残酷ピエロを幾度も殺し】


「夜神くん、寝ないんですか」
「ああ、今日はこれを終わらせてからと思ってね」
 いつもならとっくに仮眠を取ってくる、と寝室に下がっている時間にまだ月がいる。
 どうやら、Lがいつ寝るのか観察しているらしい。
 これはもう、今日は観念して適当な時間に切り上げるしかないと思って、頃合いを見て椅子を離れた。
「どうした?」
「いえ、私も仮眠の時間が来ましたので、少し横になってきます」
「ふぅん…いつもこの時間なのか?」
「ええ」
 月が昨日まではきっちりこの時間には眠っていたのを知っていたので、Lはさらりと嘘をついた。
「ただ、最近眠りが浅いみたいですけど、神経が昂ぶっているので仕方のないことです」
 日に日に濃くなり、深くなる疲労と隈の痕の言い訳を追加して。
「そうだな。キラが捕まるまで神経の休まる事が無いっていうのが当たり前の事だろう。だけど、竜崎。プロなんだからきちんとコントロールしないとね」
「ええ、その通りですね。月くんもそうだと思いますから、早めに寝て下さい。では」
 当たり障りなく、言葉を交わして、LはLの寝室に引っ込もうとした。その手を月に阻まれる。
「…なにか?」
 半分だけ閉めた扉の間に、月が割り込ませるように体をこじ入れた。
「…用事っていうか、お前の安眠に協力してやろうと思って。人が傍にいた方が安心しやすいんだよ」
「結構です」
 笑顔の月にきっぱり断って、見据える。
「私は神経質なので、他人が一緒の部屋にいると眠れないのです」
「嘘つけ」
 途端にジロリと睨みつけられて、僅かに扉を押し広げられた。
「メロから聞いたぞ。お前はむしろ誰かと一緒の方が眠りが深いんだってな」
「…それは昔の話です。子供は体温が高いですし」
「それに、椅子の上に座って転寝をするようなヤツがとても神経質だとは思えない。本音を言うと、部屋に戻って捜査の続きをしないように、見張ってやらなきゃと思ってね」
 最後に勝ち誇ったような笑顔を向けられて、Lは溜息を吐いて扉を開放した。


////To be continiued/////

2006.08.31


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