STAGE:1
【僕とボディーガード】#7



 果て無い、と思える程のカーチェイスが終わりを告げたのはそれから1時間走行した後だった。


 郊外へと向かう途中で、Lが速度を落としてついにはエンジンを停止させた。
「まさか、燃料切れか?!」
「いいえ」
「だったら!!…いや、…説明してくれるか」
 突然の停止に驚き問いかけに、Lの即座な理不尽な声が聞こえて、月は声を荒げそうになるのを必死で抑えた。同じ失敗を二度もしたくない。
「…そうですね。大体行き先は分かったので、追うのを止めました。このまま相手を追い詰めるのは得策ではないので。…おそらく相手は夜神くんが思ったのと同じく、燃料が切れて追えなくなったのだと思うはず。緊張を解いて逃げ込んだ先で粧裕さんを助けだす事が可能です」
「そう…か」
 微かにLの視線が柔らかくなった気がして目を伏せた月に、「それで」と言葉が続く。
「分かってる。ここで降りて待ってるよ」
 その先回りをして降りて離れようとする月の腕を掴んで、Lが違います、と囁いた。
「こんな所で降りられても困ります。それでは夜神くんを守る人が誰もいなくなってしまいますので、私は貴方から離れることは出来ません。ここまで来れば、他のボディーガードや、それこそお父様に全てお任せするのも手だと思いますが、どうしますか」
 さっきなんて、僕をあっさりおいて行った癖によく言うよ、と言いそうになったが、頭の中にある事実が閃いて押し黙った。バイクの隣に立って、初めて月は真っ直ぐ真正面からLの顔を覗き込む。
 風に吹かれていつもよりもボサボサの頭はなんだか滑稽に見え、人より若干弧を描いた猫背はやはりどう見ても優秀なボディーガードには見えない。
 けれど、奇妙だと感じたその瞳の奥の深さを、今はっきりと感じて、月は唇をきゅっと引き結んだ。
 数秒考える。
「父達に任せて無事に助け出せるかな」
「どうでしょう。おそらく大丈夫とは思いますが」
「…長丁場になるだろうね?」
「そうでしょうね」
「…お前に任せたら、どう?」
「今すぐに行けば、あるいは」
 じゃあ、と口を開きかけたのをLが制する。
「ですが―」
 きゅっと上目で月を見上げて、いくばくかの逡巡を表すように自身の唇に指を押し当て少しなぞった。
「早期解決の鍵は夜神くんにかかってます。私を信じて囮になって貰えますか?」


to be continued★


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・あとがき・
なんだか中途半端だったので、本日は2話アップでした〜

2007.06.13 update


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