僕には、竜崎えるという幼なじみがいる。
別に近所に住んでいて、一緒に学校に行ったりしたワケでは無いけれど、長期の休み中、僕らは日がな1日、ずぅっと一緒だった。
僕は緑の匂いがする封書の中身を取り出しながら初めてあった日の事を思い出していた。


あれは、まだ僕が小学2年生の頃の話だ。
その当時から大人びていた僕は、理路整然とした思考を持っていたからか、まだ我が儘いっぱいの同年代の子と一緒にいる事に多少辟易していた。
妹のサユはまだ手がかかり、とても甘えん坊で、可愛いとも思ったが、自由が制限される事、勉強の邪魔をされる事には少し憤りを感じていた。
…まあ僕も自分で思った以上に子供だったって事だ。
そこで、祖母の「遊びにおいで」という言葉に甘え、僕は両親を説得して、田舎にある祖母の家を一人訪ねたのだった。


(…東京よりか涼しいけど、暑い…)
無事に駅についた事を公衆電話で母親につげ、2時間に一本しか無いバスに乗って、目的の停留所で降りるだけとなった午後二時の事だった。
クーラーも効かせない、窓をいっぱいに開けたバスは、結構快適で、森林をすり抜けて来る涼しい風に月は目を閉じて、一人旅を満喫した。
運転手との「一人でおばあちゃん家か、偉いね」などという他愛無い会話を続けて二十分足らず過ぎた所でアクシデントが起きた。
プスン、とエンジンが切れ、走らなくなってしまったのだ。
「ゴメンよ坊主、少しだけ待っててくれるかい?」
年配の運転手がバスを降りてバスの点検を始めた。大人しく待っていられたのは、最初の三十分だけだった。
「ねぇおじさん」
いくら涼しい片田舎とはいえ、走行しないバス(しかも日向に止まってしまった)はかなり暑い。
しかも一向に直る兆しを見せないバスと、今後の事を考えると、歩いていった方がマシだと思えた。
「僕、このまま歩いておばあちゃん家に行くからここで降りるよ」
荷物をしっかり背負って、告げる月に運転手は慌てたが、説得の末、運転手が折れた。
子供の足で歩いて二十分程度、大人では十分程度で月が降りる停留所まではまっすぐで迷いようが無い。
「気をつけてな」
との見送りの言葉を受けて、月はどんどんと歩いて行った。
途中、林を迂回せずに突っ切ろうと思ったのは、祖母が心配しているかもしれないと思ったからだ。
しかし、いくら小さな林でも土地勘の無い者が入るべきではない。
思ったよりも暗く、左右の分からない林の中で、複数の子供の声がした。
「…!」
良かったと思い、月は小走りに走って行く。
少しずつ、声が大きくなり、どうやら諍いを起こしているようだと見当がついたが、今更臆してなどいられない。
そのまま突き進み、ぱっと明るい円形状に開けた場所に出た。
強烈な太陽が眩しく感じる。
…と、声の主である数人が走って逃げて来るのが見えた。皆一様にいがくり頭で、わんぱく坊主といった体だ。
「…そこのアナタ!そいつら止めて下さい!」
「えッ?!」
その後ろからぐんぐんと迫って来る黒髪の少年に思わず月は声をあげた。
瞬時にどちらに味方するのがいいか考えて、声の主のお願いを叶える事にした。
どうせ放っておいても逃亡者達は捕まるのだろうから。
「…止まれ!」
道なき道ではあるが、獣道は存在する。その月がいる道を塞ぐようにして立つと若干逃亡者達はスピードを緩めた。
反対にぐん!と追跡者が近づく。
「待ちなさいと何度言いましたかッ!!」
怒りの籠もった声が聞こえると同時にいがぐり少年達が蹴り倒された。
黒髪の少年が首謀者らしき人物の手から何かを取り戻すと、傷がついていないか確かめてからほっと溜め息を吐いた。
そしてギロリと恐らくは加害者であろう少年達を睨みつけた。
「私、気が立ってます。これ以上蹴り倒したくなる前に私の前から消えて下さい。」
そうして月は捨て台詞を吐いて逃げ帰る少年らを尻目に、自分が正しかった事を確認してから黒髪の少年に目を向けた。
普通日本人は皆といっていい程黒髪・黒目だが、少年の髪と目は、世界中の黒を集めたかのような色だった。
「さっきは有難う御座います。私は竜崎える。えると呼んで下さい。見かけない顔ですが、道に迷われたのですか?」
それが幼なじみ、えるとの出会いだった。


月はそのえるからの手紙を読んで、密かに微笑んだ。


ねくすと・すてーじ

………………………
・あとがき・

…あれ?
何でいつの間にかシリーズになっちゃってんの?!なっちゃってんの?!(動揺)
何でNEXTとか言ってんだ、私。
最初の動機は、エロが書きたかったとゆー…
エロのえの字さえ…っ


2006.09.07


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