えるからの手紙の内容は来学期から、つまり夏休み明けから、月と同じ学校に通うというものだった。
えるとは小学二年生からの幼なじみだが、実は五年になってからは逢っていない。祖母が亡くなったからだ。
(本当に久しぶりだ!)
月は自分の心が踊るのを感じた。えるは唯一月と対等に話の出来る同じ年の子供だった。
えると一緒ならば、あまり好きでは無い虫取りだって面白かったものだ。
「らーいと!転校生がうちのクラスに来るらしいぞ!」
そうして迎えた二学期初日。級友の持って来たニュースに月は「そうみたいだな」と頷いた。実は今朝担任に聞いたばかりなのだ。
「うわー!さすが月!情報はっえぇなあ、敵わねーなー」
一番に知ったと思ったのに、と嘆く級友に、月は苦笑する。
「実は僕の幼なじみでね。まあ幼なじみと言っても祖母の家でのだから、こっちに住んでたってワケじゃ無いんだけど…」
「なぁんだ、そっか、んじゃ敵わねぇのも無理ないか。…で?可愛い?」
「…はぁ?」
「え?何?そんなに微妙なの?」
「いや…男に可愛いとか…変だろ…」
「え?!女の子じゃ無いの?!」
「違うよ」
「転校生って言ったら女の子だと思ったんだけど…違うのかー…」
月はそそっかしい奴だなあ、と級友を眺める。
確かに転校生といえば、想像するのは異性というのが通例だろうが、月にとっては同性のえるの方が嬉しい。
女子には同級生にもそこそこもてているし、近所の高校生にもラブレターをもらった事すらある。
けれども、全く、ちっとも掠りもしない価値観を持った相手と、一緒にいるなど時間の無駄としか思えないし、彼女ともなると、気を使ったり、手を握ったりしないといけないのだと思うと気が滅入る。キスなんかねだられたりしたら、なんて思うと益々ぞっとした。他人と唾液交換するなんて、汚らしくて考えたくも無い。
「残念だったな」
月は微塵も今考えている事など顔に出さず、しょんぼりと肩を落とす級友を慰めて、体育館に向かう。
全校集会でも、転校生が入るクラスが発表されて、クラスメイトが賑わいを見せた。
そして、二学期、初めてのホームルーム。
担任が竜崎の名前を呼んで、僕は思わず口をぽかんと開けた。
濃紺の襟、白いブラウス、…同じく濃紺のプリーツスカート。
「竜崎えるです。皆さん初めまして」


牧場は続く〜よ〜
どーこま〜で〜も〜♪


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あとがき。
あんまりLっぽくない予定ですすみません。
引っ張ってすみません…。
…月ってちょっと潔癖症っぽいですよね。(キスなんて汚らしいと思いながらLの唇を抑えがきかず貪るといい…!(笑))
2006.09.10


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