全ての表情を知っていると思っていた。
一つだけ知らない顔がある事に気がついた。


【ひぐらしの鳴く朝】


悪戯を仕掛けてみようと思ったのは、多分この夏の熱気の名残と、鼻孔を擽るえるの匂いのせいだろう。
「も、もう解りました」
月の僅かな変化に気付いたのだろう。えるが月の腕から抜け出そうと身動きしたので、月はそのままグッと抱きしめた。
「ら…、っ」
強く太股を擦りつけると、えるがビクリと身を竦め、息を呑んだ。
柔らかい髪の間から垣間見える白いうなじにチュッと音をたてて口付ける。
「月くんっ…!」
えるの悲鳴のような声が上がるのを無視してまだ未発達の胸に触れた。
「ッ止めて下さい!」
今度は大きく振り解きに出たえるを一旦離すように見せかけて、正面から抱き寄せ、えるの唇を塞ぐ。柔らかい唇の感触、体温の心地よさに熱が増長していく。どんどんとその気になって来た。
「ふ…っ!」
汚いとさえ思っていたのに、舌はするりとえるの歯列をこじ開けて咥内に侵入する。
「…ッ、んっ」
いつも甘い物ばかり食べているからか、じわりと月の味覚を狂わせるような甘さが浸透する。
(ファーストキスはレモンの味…なんてよく喩えられるけど…)
何時食べたのだろうか、イチゴミルクのキャンディの味がした。
味蕾を微かに刺激する、甘さ。
「…ン、っん…〜!」
「ッ!」
舌を吸われて、月を突っ張ねる手が縋るような形になりかけた瞬間、えるが月の舌をがぶりと噛んだ。
顔をしかめて唇を離すと、そのまま倒れ込むように月の胸に顔を埋めて、忙しく息を吐く。
「て…手加減はしました…。…が、一体、突然、どうした、の、です」
はぁはぁと息をついて、ゆっくり身を離す。上気した頬と、潤んだ瞳に見つめられて、月は一瞬言葉を失った。
「どうした…って、僕達、付き合ってるんだろ?別におかしな事は無いよ」
「カモフラージュ、じゃ無いですか。…私の事を好きでも無いのに、こういう事はやめて下さい」
ジロリとえるが月を睨みつけた。それに月は苦笑する。
「好きだよ」
「嘘ですね」
きっぱりとした答えの後に恨めしそうにえるは続ける。
「嫌われては無いでしょうが、失望されたのでは?利用価値はあるかもしれませんが、隣りには立たせようとは思わなかったのでしょう?…こんな事をされては、困ります」
分かってるだろうとは思ったが、こうも正確に当てられて、逆に思わず笑ってしまった。
「…うん、確かにね。でも今はー…、今もやっぱり、お前の聞く『好き』じゃ無いんだと思うけど…、でも、隣りに誰かいなきゃいけないなら、それはえるがいいと思うし、ずっと傍にいて欲しいと思う」
大きな瞳が更に開かれて、月を凝視する。
「それに、お前に触るのにも、嫌悪感は無いしね。えるとならずっと上手くやっていけると思ったんだ。お前だって僕の事、嫌いじゃ無いだろ?」
「…そういう話では…」
「僕らいつか結婚もすると思うよ。…それにえる、濡れてる」
すっとえるの背後から割れ目に沿って指を這わせた。ぷくりと柔らかいそこがじっとりと蜜を含んでいた。
「…感度、いいんだな。お前を見てて、初めてこういう事をしたいと思ったんだ。…責任、取ってよ」
くちくちとそこを指の腹で優しく揉む。えるが何とも言えない顔をした。
「それに、お前の悦さそうな顔、見てみたい。…僕の知らない顔があるなんて、許せない」
えるが文句を言う前に、月はその唇を素早く塞いだ。


続く!(エロ注意!)


…………………

一体どんな中学生だという話。
dataup2006.10.05


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