「…ゃ、ぃやです…っ」
言葉とは裏腹に、えるの体はビクビクと震えていて。
夕暮れの木の葉から漏れる薄暗く少し冷たい空気が、熱を帯びた体を包み込んだ。

【ひぐらしの鳴く朝】

誰もいないテニスコートのベンチの上で、えるは膝を折ったまま、月の肩口に顔を伏せ、純白の下着をぐっしょりと濡らす。
「気持ち良さそうだね、える」
今はその表情は見えないが、えるの体が快感に打ち震えているのがヒシヒシと伝わって来て、月は乱した上着から覗く唾液で濡れた乳首を舐めながら、笑った。
(予想以上…かな?)
幾ら月が大胆不敵な精神構造をしているとはいえ、事を始めた当初はこんな所でこれ以上を行おうだなんて思わなかった。
見つかったら事だし、初めてがこんな所では流石に可哀想だから。
…だが、そんな思いを綺麗に払拭する程、そそられてしまった。
本当は問答無用で引き摺り倒してしまいたい。その衝動を抑え込んで、余裕を顔面に、行動に貼り付ける。
「ゃ…っ、ぁ、ぁっ」
ゆっくりゆっくり刺激を与え過ぎない愛撫だけを与え続ける月に、えるは絶え間なく全身を痙攣させて、月に縋りつく。
「ぁっ、ゃっ…ンンっんっ〜〜〜っ」
消化出来ない甘く苦しい誘惑に、多少えるの声は涙混じりで、それでも月の望む一言を口にせずにいるのに、ほとほと呆れ果ててしまった。
(早く言っちゃえば、楽になれるのにね…)
それは月とて、実際はお互い様なのだけれど、その事はさっぱりと頭に過ぎりさえもせず、えるの小さな乳房の先端を舌で転がした。
(僕がここまでしてるんだから、お前が少しくらい求める言葉を言うのが礼儀ってものだろ?)
本当に嫌ならば、とっくの昔に逃げ出すくらいの機会はやったし、それ以前にえるが月を拒否するなんてありえない。
多少の意見の相違はあっても、性別の違いがあっても、根本は同じなのだと理解するよりも前に悟ってしまっている。
(だからこんな風に抱きついてるんだろうに…、本当に意固地なんだから)
ぎゅうっと月の頭を抱え込んで、せわしなく息を繰り返している様は、愛しあってると錯覚を起こしてしまいそうな程なのに、それでもえるは月の欲しい一言を漏らそうとはしない。
(もし、ここにいるのがえる以外の誰かで、そいつなら簡単に口に出した言葉だとしても、お前以上に僕の欲しい言葉を知ってる人間なんていないのにね)
「える」
愛撫の手を止め、今にも崩れ落ちそうな体を支えてやったまま、涙に濡れた顔を見た。
「える」
歪んだ眉間に更に皺を刻み、濡れた漆黒の瞳が月の奥を覗き込むようにした。
その黒があまりにも不思議な色だと思って、月もそのままえるの瞳の奥を覗き込んだ。
そうする事で月が思いつく以外の、えるが頑なな理由を見出せる気がしたので。
「…え…」
「おねがい、します」
視線を合わせたまま、数秒。理由を問い詰めるように名前を口にしようとした月を遮って、えるが小さく唇を開いた。
「抱いて、ください」
瞼を伏せて、自らぎゅう、と月に抱きついて、もう二度と言わないぞ、というように体を強く押し付けた。
「もっと、きちんと…私を…」
掠れるような上気した声が、けれども正確に月の耳元へと届いて、想像していたのと実際に言われたのでは、随分と印象が違うものだと、月は思わず瞠目した。その膝に、がくりとえるが崩れ落ちる。
「早くいえばいいのに」
それで、ハッと我に返って、やっと月は優しく笑った。
これでフィフティ・フィフティだ。
我慢するのは大変だったのにそれでも待ったのは、月だけが欲しがるのはプライドが許さないから。
恋愛感情で無くとも好意は持っていて、成り行きにせよ、ただの肉欲以上には欲しがっている。
しかも相手がえるなら、分かりきった言葉だって聞きたくて当然。
「もっと早くいえば、こんなに辛い思いをせずに済んだのに、バカだね」
本当は『抱いて欲しい』とまで言われるとは思わなくて、少しだけ動揺してえるの体を抱く腕に力を込めた。 ただえるは、『イかせて欲しい』とかそういった語彙を知らないだけなのかもしれないけれど、どうせヤる事は一緒だ。
だが、イきたいだけでは無く、他でも無い月と繋がりあいたい。そんな意味の方が嬉しいに決まってる。
「える、こんな所でごめんね」
そこで漸く月はえるの体を離し、古めかしいベンチにえるの背中をゆっくり預けさせ、薄暗闇の中、濡れ過ぎた下着を些か乱暴に脱がせた。
装っていた冷静は、既にほとんど瓦解している。
えるが焦らされたぶんだけ、月も焦らされていて、感情のセーブが巧く働かない。
「そんなに怖がらなくていいから…」
「怖がってなんて…」
「恥ずかしいだけ?」
脱がされて、覗き込まれて。
えるの体が強張るのを感じながら、軽口を叩く。
初めて見る秘部は思ったよりも綺麗で、熟れたような甘々しく蜜を含んだそこに、指を押し入れた。
「ぁっ!」
指を内包する肉壁の圧迫感。けれど、濡れ過ぎた愛液のお陰でヌルヌルと奥にまて導かれる。
絡みつく、熱くて柔らかいナカに、挿れたらどんなに気持ちいいだろうと、月の喉が鳴った。
軽くかき乱す。えるの体が仰け反って、奥が更に濡れた。
勃起した自身が張り詰めて、痛い。
すぐさま指を抜いて、涙に濡れたえるの頬に軽くキスをした。
「える」
慣らすまでなんてとても待てないし、ここまで熟れていれば、容易に入りそうな気がして、月は自分のズボンを下ろし、えるの膝裏を抱えた。
「入れるから」
耳元で囁いて、そそり立った男根をえるの入り口に押し当てた。
「…ぅ」
ピタリとくっつけただけで何ともいえない快感が込み上げて、思わず月は喉を鳴らし、そのままグッと押し入れ、月は熱い吐息を吐き出した。
「える…」
ヌルリとした、だが抵抗感のある割れ目がゆっくりと押し開かれて、月を呑み込んでいく。
「…ぁっ、ぅッ…」
痛いと感じているのか、小さな呻き声と共に、月の背中に回された腕に力がこもった。
その痛みを抱える表情に、更に煽られる。
「える…」
後学にと一人で処理した時とは何と違う事だろう。
「…ぅ、…ぅっ」
けして痛いと言わないえるの、月と同じくらいに熱い吐息が耳にかかる。
何か優しい言葉でもかけてやろうと思ったが、ギチギチと痛いぐらいに締めつけるえるのナカで思わずイってしまわないように神経を集中するので精一杯だ。何しろ月も初めての事で余裕がない。
「…ア…っ!」
奇妙な引っかかりにぶつかった瞬間、えるが一際高い声を上げた。
弾力のある膜が、月に先端を刺激して、思わずトプリと先走りを零して、内心舌打ちをする。
(えるの中で…イく…わけには)
熱を上げていたとしても、出来る範囲と出来ない範囲がある事は承知済みだ。
ナカに出して、妊娠の可能性をあげる事だけは出来ない。
用心しながら奥へ進み、何事も無く全てを埋めきって、ようやく月は先程の膜の正体に気がついた。
(…あ、初めてだから…)
ドクドクと波打つ月の性器が突き破ったのは、えるの処女膜だ。
後にも先にも、これっきりしか無い、えるの初めて。
「える…」
思わずぎゅっと抱きしめてから、浅く息を繰り返すえるの体から少し離れて、その顔を覗き込んだ。
汗に濡れた額にくっつく前髪を掻き揚げて、そのまま額に唇を落とす。
もしも、この感情を当て嵌める言葉があるとすれば、愛しさ、だろうか。
恋愛ではなくても、こんな風に寄り添えば、愛しさを感じるものなのか、と月はえるを見下ろした。
「ねぇ、キスしていい?」
自由な片手で頬を撫でる月に、目を閉じたままだったえるの瞳がゆっくりと開いて月を捕らえた。
何を今更、と揺れる瞳に向かって、もう一度だけ「いい?」と尋ねてみる。
迷うようにえるが瞬きをする。それから小さく頷いたの見届けて、しっとりとした唇にそっと触れた。
「える、キスが好きなんだ」
何度も触れるだけのキスを繰り返してる内に、えるのナカが更に蕩けている事に気がついて、笑いかける。
額をくっつけるようにして囁くと、ピンクに染まっていた顔に朱が差した。
「図星みたいだね」
深く激しいキスよりも、戯れるようなフレンチなキスの方がお好みと知って、月はくすくすと笑った。

続く!(エロ注意!)


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長いよ!
dataup2006.10.28


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