「くそッ!何なんだよ、アイツは!!」


【ひぐらしの鳴く朝】


部屋に着いた途端、月は鞄をベッドに叩き付けて、苛立ちを吐き出す。
勿論、今家には月しかいない。
「不愉快なのはどっちだ!いきなり喧嘩ふっかけて来やがって!!」
他の者も感じる事だろうが、正論は静かに告げられた方が、より感に障る。
えるの言葉が全て正しいとは言わないが、あれの言っている事は確かに正論だ。
欺瞞と言われば腹は立つが、月の言動は確かに相手の事を慮んばかっているワケでは無い。そちらの方が楽だからだ。
「言いたい放題ズケズケ言いやがって…!自分は友人と呼べるヤツすらいない癖に!」
こちらに来る前だって、えるに友人がいたという話は聞かなかった。常に一人を好み、相手の歩調に合わせるのを好まないえるには人の事など言えないのに。
「しかも、何が『そうですね』だ!最後思いっきり抱きついたのはアイツだろ?!よくも平然と…!」
(そうだ、ついこの間の話だぞ?!)
えるとは幼い頃から色々と言いあったが、今日以上に腹が立った事は無い。
(優しくしてやろうと思ったのに…!)
月もえるもお互いに対人関係に問題を持っていた事は分かっていた。それでもお互いに深く言い合わなかったのは、道徳じみた説教をする必要が無かったからだ。
自分で分かっててやっている。生き方をそうそう変えられる訳が無いし、それを分かってくれる人間に、もう出逢った。
それ以上望む事があるだろうか?
世間は一人では無く、もっと多くと分かりあえる努力をしろと言うだろうが、月はえるだけで充分だったのに。
(…何で今更…!)
やはり、女だと分かった瞬間に全てを失ってしまったのだろうか。
(…クソッ!)
ぽっかりと空いた穴を塞ぐように、月はベッドにうずくまった。

続く!


…………………

月の場合、必要が無ければ、聡さはあまり発揮されないんじゃないか…という妄想がよく働きます。
特に私の中の月は、自分の感情とかには意外と鈍そう…?です。
因みにピュアはすぐに気づくのですが、ノートを持って無い月は、私の中で凄くグレー(笑)
dataup2006.11.17


……………………
[0]TOP-Mobile-