今日も1日、退屈な時間が過ぎて行く。


【ひぐらしの鳴く朝】


「らーぃとvV」
「…どうかしましたか?先輩」
えると別れたらしい、という噂はすぐに広まって、月は以前より熱心なアプローチを受けるようになっていた。
(前より悪いじゃ無いか…)
えると付き合った手前、もう勉強に身をいれたいだの、そういう言い訳の効力は薄い。
まだ同級生は先輩の目もあってそう目立つアプローチは無いが、特に3年生は受験前だというのに再三月に声を掛けて来る。
「映画行かない?チケットが余ってるんだけど」
「…すみません、部活が忙しくて。ほら、先輩達が抜けたばかりでしょう?成績、僕達が落とすわけにはいかないし…」
「そんなのライトだったら大丈夫よ〜vVだから、ね?」
「お話中すみません、夜神くん」
「…何?」
甘ったるい声にうんざりしていた月に、タイミング良く声がかかる。だが、助かったなんて思うまい、今、月がこんな状況に陥ってるのはえるのせいなのだから。
「会話中だって分かってるのなら後にしてくれない?それともライトに未練があるの?ねちっこい女は嫌われるわよ」
(お前だよ)
月のえるに対する声音に助長されたか、勝ち誇ったような言い方をする女に呆れながら、こっそり突っ込む。
何故、己の事になると分からなくなるのか、理解に苦しむ所だ。
「…いえ、そうでは無く。体育祭の実行委員会への収集がかかったのでお呼びしただけです」
「あら、そう…」
「ですが、私的に意見さていただくと、誰の机であろうと周りの状況も見ず、断りもいれず、他人の机を占領するような先輩に、個人的な用事で教室内に居座られるのは迷惑です」
「な、何よ!アンタの方がよっぽど浮いてるわよ!!」
(何だよその切り返しは)
周りの視線に気付いたか、女の顔に朱が走り、大仰に顔を背けると、遠くで困った様子の田中くん(野球部所属・男子生徒・出席番号9番)の机から腰を下ろし、月を睨みつける。
「ライト、女を見る目がなってないね!」
「…」
啖呵を切って出て行く先輩に、曖昧な笑みを向けてから、席を立った。
「じゃ、行こうか」
「はい」
えるのお陰で凍った教室を連れ立って出て行く途中で、毎回席を奪われていた田中がえるに「有難う」と言われているのがやけに耳についた。

続く!(微エロ注意)


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席を勝手に陣取られるのは結構迷惑ですよね(懐かしき記憶より)
dataup2006.11.20


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