『向こう1月、私に触れないで下さいね』
「はあ?!」
その表情と言葉の内容がちぐはぐなのに、思わず間抜けな声を上げるのは致し方ない事だと月は思った。


【ひぐらしの鳴く朝】


仕返しが怖いなと思って、ある程度は覚悟はしていたけれど、この一月は拷問のような時間だったな、と月は思う。
例えば、以前にあった席替えの為に、席の離れてしまったえるに群がる蝿…もとい、男子生徒を撃退するのに苦労したのだとか、(えるに触れないのに、どうやってアピールしろというのか)
運動会の白い体操服とブルマーが眩しかったのだとか、(誰だよ!早くハーフパンツにしてやらなかったのは!!二人三脚とか絶対ダメだろ!)
それでピリピリしている月に「どうしましたか?」なんて顔を覗き込んで来るえるに腹が立ったのだとか、(くそ!そういう事されると男は弱いんだよ!確信犯でもタチが悪いのに、無自覚はもっとタチが悪いよ!)
しかもえるは「僕は約束は守る方なんだよ」とか言ったのに、「約束は守るためにあるんですよ」なんて抜かしたりして悪戯に笑ったりして!(一ヶ月過ぎたら覚えておけよ!!)
とまあ、色々そんなところだ。
そして、今日は一月の約束が解禁して更に3日目の月の家だ。

「…」
月の部屋で二人きり。
家族は月が口車にのせて外出させた。
ひと月もお預けだったのだから、誰にも邪魔されずに、しっかりと楽しみたいし、多少虐めてもやりたい。
月の部屋なら外目もきにせずゆっくりと出来る。
「…月くん」
ベッドの縁に背をつけて、えるがゾクリと体を震わせた。
(体が熱いな)
えるが何を思ってあんな事を言い出したのか、それは想像に難く無かったから従った。
おかしなジレンマがふっ飛んだ月はああでも言われなければ、ストッパーを上手く作動できなかっただろう。
「…んっ」
そして今えるは、月の部屋で悪戯を受けている。
長袖のブラウスのボタンは最初のキスの間に手にかけた。
性急過ぎると分かっているが早く欲しくて堪らない。
細くなめらかな脇腹を撫でながら、薄く開かれた唇の間へ侵入する。
月の精神を鎮め、また昴ぶらせるように、そっと差し出された舌に絡みつける。それにまたえるの体がぴくりと反応した。小さく鼻を抜ける甘い声が月をまた興奮させる。
「何してるの?」
「ぇ…?」
「手」
はぁ、と上がる息を抑えながら、言葉と目線でカーペットの上できゅっと握られた拳を示した。
「廻してよ。今更なのに緊張してるの?」
からかうように笑むとえるの顔に朱が走る。
「ほら、早く」
そんな姿が可愛いらしくて、急かすように腕を取って自分の方へ引っ張り上げるようにして抱き寄せた。
「…月くん…」
二人の為に『一月触らないで下さい』なんて言ったのは月にも分かっていたけれど。
(お前が切り出したのに、なんて切なそうな声を出すんだよ…)
そう思うと心臓が一際大きく≪ドクン≫と波打った。
月の頭を抱きかかえるようにさせたえるの腕に若干力がこもり、熱を持った唇が月の首筋に触れた。
唇を押し当てるだけの幼稚なキスだが、月の髪を掻き分ける指先は狂おしいくらいに情熱的だ。
はだけられた胸元の熱さが月のシャツ越しに滲む。
「痕、やっぱり残って無いね。何か残念だな」
早く触れたくて、少し間を取ってえるを自分の膝の上に座らせた。
すとんと軽い体重が月の両足に掛かる。
つぅっと人差し指で鎖骨から胸までを辿ってふぅっと息を吐くと「…どうせ今日もまたつける気でしょう…」とえるがジロリと月を睨むようにする。
普段は晒さない場所をじろじろと見られて恥じらっている癖に、強がった声音を出すのが何ともえるらしくて笑ってしまう。
「うん、今つけてあげるよ…」
ひたりと感触の良い肌に触れて吸いあげる。
ピクリと伏せ目にしたえるの瞼が震えて、鮮やかな痕跡がついたと同時に瞬きする。
「ほら、僕の証が綺麗についた」
満足げに指先で赤い痕をなぞる。それから今日初めてえるの胸にそっと触れた。
「可愛い下着だね。もしかして僕の為に着てくれた?」
窺うようにえるを見やると、再び頬が赤く染まる。
「…そんな、あまり観察…しないで、下さい」
ふいっと顔を背けるえるの首筋にキスをしながら小さな胸を優しく揉む。
「………ぁ」
えるが首を竦め、吐息を漏らす。
体だけの快感だけでは無く、月という存在に昴ぶっているのだと感じて色んな衝動が突き上げた。
初めての時はあまり優しくしてやれなかったし、
二度目は未遂だが途中まで無理やりだった。
今日はえる自身も月に抱かれる事を望んで、月の腕の中にいる。
この違いは大きい。
随分とご無沙汰で、間には色々あった月としては、早く事を進めたい気持ちでいっぱいだったのだが、目一杯可愛いがってやりたいという思いが込み上げて、ほんの少しだけ月を戸惑わせる。
若さ故の性衝動を凌駕して、今日だけはどうしてもえると丹念に触れ合っていたくなって、深く息を吸い込んだ。
(その気になれば僕は相当我慢強いからね)
何しろ一ヶ月も我慢したワケだし。
そう自分に言い聞かせ、背中のホックを外してブラウスと一緒に手をかける。
小さな胸が露わになって、えるが腕で隠すようにするのを月は上目遣いで咎める。
「何隠してんの。触れないよ」
「ですが…こんな風にされると…私…どうして良いか…」
困った顔で月を見つめるその瞳は、魔力を持っているように月を魅了する。
「…参ったな…そんな顔しないでよ、える。無理やりしたくなるじゃ無いか」
「…!」
「それとも激しくして欲しいの?」
「そ…そんなつもりは…!」
えるがふるふると首を振って、赤くなったまま俯く。
「でも今日はどうしてもゆっくりしたいんだ。全部きちんと見たいんだよ」
「…っ…」
「だから、ほら」
それでも尚、どうしていいのか分からずに身を堅くしているえるの両手首を掴んで広げさせる。
「小さくて、可愛いくて…とっても綺麗だよ」
えるの体がビクリと竦む。
そのピンク色に尖った幼い胸の先を舐め取った。
「ゃっ!」
今度はベロっと小さな山を大きく舐め、硬く尖った先端を口に含んだ。
赤子のようにちゅうちゅうと吸い上げ、飴玉のように舌で転がす。
えるの手首がブルブルと震えて、月から逃げだそうと強く腕を引かれた。
それを牽制するように甘噛みしてやると、一瞬だけ月から逃れようとする動きが止まる。
それから月のズボンがえるの蜜を伝えてジワリと湿るのを感じて顔を上げる。
「気持ちいい?」
銀糸を引きながらえるの乳房を解放してそう囁く。そして抱き寄せて高ぶった己のモノを押し付けた。
「…あっ///」
「…ベッドに移ろう」
月が促すと、えるはこくりと頷いた。

続く!(エロ注意!)


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気合入りまくりでエロ部分が長いです…ウフフ…まだ続きます…
本当はもっと月くんが悶々とする所をもっさり書きたかったのですが…玉砕しました…。
dataup2006.12.07


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