いつからこんなに強く想うようになったのか。
そう問われても明確な答えは出せない。
だが、惹かれたのは、おそらく初めて逢ったあの瞬間から。


【ひぐらしの鳴く前に】

「っぁ…んっ」
月の執拗な程の愛撫を受けて、えるの体はすっかり出来上がってしまっている。
文化祭の事前の打ち合わせの為、先日揃って生徒会の書記となったえると月は、備品のチェックの為に今日は使われていない体育館の地下倉庫にやって来た。
だから、今する事は備品のチェックだ。
数は揃っているか、損傷は無いか、そんな事を調べて報告書に記入し、生徒会室に戻らなければならない。
キスをしたり、ましてやセックスなどしている場合では無いのだ。
二人とも、それはよく分かっている。…解りきっている。…が、案の定、そういう展開になってしまった。
浅ましいこの体は、最早触れられずとも潤んでしまう。
「える…」
耳元で囁かれただけで、えるはその行為を許してしまう。
「…ら、いと…くん…」
隠しポケットに(抜き打ちの、持ち物検査の対策用で、月の自作だ。器用な事だが、何もこんな所で発揮しなくても、とえるは思う)ゴムを常備させた月が既に慣れた手つきで装着して侵入してくる。
途方も無いアツイ熱が潜り込んできて、えるは月にしがみつく。
きっと今、月は満足そうに笑んでいる筈だ。独占欲の強いらしい月は、可愛げの無いえるが月にだけにそういった行動をする事を好む。
「…っは…ゃ、そこっ」
えるは身を震わせる。一定のリズムで奥へ突き立てたる月の質量が愛おしくて堪らず、猫のようにその身を擦りつけた。
こんな事が出来るのは、こうして抱き合っている最中だけだ。素面では恥ずかし過ぎてそんな事出来やしない。
「…、…える…っ」
それに応えるように、えるを支えた月の腕の力が強くなる。
でも、それは月とて同じだ。こんな風にがむしゃらに抱き寄せるのは最中だけ。
おあいこだ。
「える…」
まだ声変わりの半ばの、高めの掠れた声に、心と体がこれ以上なく熱くなるのを感じた。
また滲み、キツく月を締めつける。
そうする事で一層月の熱を感じてしまい、愛しさが募るのだ。
この気持ちのゴールが見えない。
「ぁっ、ぁっ、ぁっ」
刻まれるのと一緒に声が溢れる。
脳を犯すこの熱が恨めしい。
「ゃっ、もっ、ひっ、アッっ―――!!」


(まだ…熱いです…)
壁に体を預けたまま座り込んだえるは、支度が終わったらしい月の後ろ姿を眺めたまま、未だ体に力が入らない。
イったばかりだというのに、まだ求めているらしい。自分の浅ましさに辟易してしまう。
「…えーる」
何しているんだ、とばかりに素面に戻った月が近付いてくる。
「そんなによかったの」
少しばかり呆れたようなこの顔が憎らしい。
物足りないと感じるのは、この綺麗な顔が、歪むのを見ていないからかもしれない、とえるは思う。
そして、そう思うのは、月の部屋で一緒になった時の、「心臓が破れそうだ」と言ったあの顔が忘れられないから…なのだろう。きっと。
余裕なんて以前からなかったに等しいが、今は装う事すら困難になって来ている。
「える?」
(もっともっともっと足りない。全ての理が入りいる隙間など無いくらいに埋め尽くして欲しい…)
言葉にして言うのならおそらくこんな所だ。えるの望みは。
いや、それよりももっと激しいものかもしれない。きっと心の奥底では犯して乱して粉々にして欲しい…そんなくらいに思っているのだと、思う。
(…こんなこと、思うなんて…)
人を好きになる気持ちは、理解出来るが、果たして自分のこれは正常なのか疑問が残る。
(物語とは違うから…)
物語はどうしても舞台を盛り上げる為に脚色が入る。
燃え上がるような恋も、狂気なまでの愛情も、えるにはそれが本当の事かどうかなんて分からない。
自分以外の誰かもこんな風な思いを抱えているのかと、はたして自分は正常なのかと、いつも繰り返し考えてしまう。
(もし、誰もが持ちえるものだとしたら、どうやってこの想いを制御すればいいのでしょうか…)
「…すみません、すぐに手伝いますから。早く戻らないといけませんからね…」
えると月の処理能力は普通より早いし的確で寄り道も無いから、急げば他の皆に遅れを取る事は無いだろうと思う。
だが、それは今すぐに取りかかっての話だし、そもそもえるには月に続きの行為をねだるなんて真似が出来ない。
「分かった」
月も早く戻らなければならない事は分かっているので、えるの事を忘れたように作業に没頭し始めた。
その背後でえるはひっそりと持て余した甘やかな吐息を吐き出した。


…………………
■あとがき
えっと、一応第2部?が始まりです。える視点での月Lなエロから始まりました。…あははは〜。
もっとLの視点から月くんとの甘やかな日々を綴りたいものですが、すぐに事件です、姐さん!(笑)
途中から何話か月くんが出てこなくなるので、月くんすきーさん月Lすきーさんには本当に申し訳ない…
dataup2006.12.23


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