12月24日。 街は家族や恋人達へのイルミネーション。 【ひぐらしの鳴く前に】 好きだと言われれば、いいというワケでは無い。だが、嫌な気分はしないだろう。普通なら。 そう、普通なら。 だが、えるは到底『普通』とはいえない状況にあるというのに、そして、あれほど気がぬけないと思った相手だというのに、魅上に思いを寄せられる事が嫌ではない。 あの日感じたような強引さや異様な気配はただ隠しているだけなのかもしれないが、感じられ無かったし、ぱっと見は以前とさして変わらないから。 このひび割れた心には、その優しい時間は薬となる。 馬鹿馬鹿しくてお粗末な話だと思う。自分でも嘲笑してしまうが、時折優しいキスを要求される事が嫌ではないのだ。 魅上の言うとおり、確かに恋とはろくでもないものだと、思う。 恋などしなくとも、生きていける筈なのだ。なのに、何故恋をするのだろうか。 整った心を掻き回す。 「竜崎は一緒にカラオケ来ない?」 「カラオケ、ですか?」 「そっ。今日くらい羽目を外したっていいでしょ?でも勿論従兄に頼んで保護者対策は万全。向こうとこっちの役員と他の数名でクリスマスパーティーね」 「………私は遠慮しておきます」 「えー?あ、そっか。今は会長と付き合ってるんだっけ?二人ともいつも凄く普通だからすぐ忘れちゃうんだけど、どうなの?あの会長と付き合うって何すんの?」 「…いえ、特に何も」 無かった訳では無いが言う必要は無いので濁す。 「やっぱりかー、あの堅物が付き合うってだけでも天変地異だもんねぇ。あ、でも会長、最近少し変わったね。竜崎のお陰かな?」 「え?…私は別に何も…」 「いやいや、変わったって。だって竜崎は会長にでも言いたい事はちゃんと言うでしょ?物怖じないっていうか。夜神くんもだけど、そういうのってやっぱり嬉しいんじゃ無いのかな。会長、少し優しくなったよ」 「…そう、ですか?」 言われてみれば確かに少しは丸くなった気もするが、それがえるに関係していると言われると可笑しな気がした。 「絶対そう!さっきだってカラオケの話聞かれて超冷や汗だったのに『羽目を外し過ぎるなよ』で終わったんだよ?!皆で驚いたんだから!」 「…それは、ちょっとビックリですね…」 規律厳しい魅上にしては寛大過ぎる措置だ。 「ね!ね!絶対竜崎の影響だって!…でも会長は流石に参加しないだろうし、だったら竜崎も参加出来ないよね」 「何を無駄口叩いている」 ガチャ、と背後に数名を伴って魅上が生徒会室に戻って来て、一様に皆がビクリと硬直した。 「終業式にも言われた通り、役員として滅多な事はするな、以上解散」 解散と言った本人は椅子に座って、えるも座ったまま、他の役員が帰って行くのを見送る。 勿論、月も他の男子役員と一緒に出て行った。 これから皆と一緒だろうが高田と会うのだろう。 「竜崎」 「はい」 「戸締まりの確認を頼む」 「ええ」 頷いて、窓がきちんと閉まっているかを一つずつ確認して行く。 すぐに役員が校庭に見えて、高田達の姿もしっかりと目に映った。 「…っ」 高田が月の腕を取るのに息を詰めて視界から逸らす。それ以上見たくなくて、鍵だけを見つめて確認を終わらせた。 同時に魅上が机の鍵をかけ終わる。 「終わりだ」 「こちらも終わりまし…た?!」 グイッと強く引っ張られて椅子に座った魅上の上に横座りする形になった。 「ん!」 頭を固定されて唇を押し当てられる。何度か求められたやり方とは違ってどことなく慰めてやると言われた、あの日のやり方に似通っていた。 その証拠に触れるだけでは飽きたらず、咥内に侵入して来て、強く抵抗する。 「…滅多な事をするなと今言ったばかりでは無いですか…!」 「その滅多な事を活動中にしていたお前に言われたくは無い。…それに少しは待ったつもりだ。お前の気持ちは後でもいい。避妊もする。」 「…でも」 「いくら思った所でどうにもならないだろう。それに高田と上手くいっている。受け入れろ」 「…っ」 冷徹な声は現実を一番よく見定めている。魅上の性格から考えが偏っているのも確かだが、事実だけは今のえるよりよく見つめている筈だ。 (そう、確かに仕組まれたことであろうと、何だろうと…。月くんは高田さんと上手くやってます…) 「私を受け入れろ」 「…!」 やりきれない想いのままキスを受け入れる。 舌を絡められて、ぎゅっと目を閉じる。 いつの間にか引き出された舌を吸い上げられて、背中にゾクッと快感が走った。 (…何て浅ましい…!) 好きでなくとも、関係を持てるのか…と泣きたいような気分になる。 魅上は気持ちは後でいいと言うが、果たして月への気持ちを忘れる事が出来るのか、不安で仕方なかった。 (ずっと好きでいたかった。思いが報われなくても、切なくても、それでよかった…。それでもぽっ…と光りが灯るような、辛い事があっても、思い描くだけで頑張れるような…片思いだけで、充分だったのに。唯一のライバルでずっと親友だったら、ずっと懐(フトコロ)の中に隠していられたのに、諦めなければならないなんて思わずに済んだのに…) 着衣を乱されて、胸元に触れられる。 冷たい唇が触れて思わず仰け反った。 (…こんなセックス、何の意味も無いのに…おかしなものです…それでも体は感じるんですから…) 微かな声を漏らして愛撫の先が移った瞬間、魅上の首に抱きついた。 (…月くんは…こんな私の姿を見てどう思うでしょうか…。…誰にも渡したくないと言ったあの言葉…少しは思い出してくれるのでしょうか) 魅上の指先に翻弄されながら、静かに考える。 (…もし、思い出してくれたとしても…) お気に入りの人形をただとられたく無い、そんな理由ではやはり堂々巡り。 (でも、その前に…嫉妬なんて可愛い気のあるものをやく前に、きっと嫌われる…。知られなければ、魅上とこのまま付き合わなければ、嫌われ無いだけましかもしれなんて、少しでも考える方がバカげてますよね…。) そこまで考えて苦笑した。何故いつまでもこんな事を考えているのだろうか。 もう道は別れたのだ。きっと重なることはないだろう。 (…そう、月くんはプライドとか高いですから…多分もう私の事なんてどうでも良いはず…。ましてや他人が使ったものを受け入れるなんて絶対にない…。二度と友人さえ…) 「…っは、ぁ、会長…」 「何だ」 「私の事、どうお思いです、か?」 「…あの時言った言葉と変わりは無い」 「…愛して、いると?」 「それ以上かもしれないが」 「…っでしたら、お願いが…」 「言え」 「…忘れさせて下さい。忘れさせて、下さい…!」 もとよりそのつもりだ、その魅上の返答をえるは全身で受け止めた。 ………………… ■あとがき ふぅ…!展開早くて申し訳ありません…!フハハハハ!(汗) しかし、何て都合のいい話なんだと、自分自身で、アホがいる!と思ってしまいます。 ああ、でも照L書くのは病みつきになりそうなくらい、面白いです。ウフフvV…でも単体での照Lは想像つかんのだな…まだ(まだ)違和感を感じる 頑張れ!ライト? dataup2007.01.27 next→ …………………… [0]TOP-Mobile- |