恋とか愛とか
形ななって現れれば簡単なのに。


【ひぐらしの鳴く前に】


「もっと…淡白な、方だと…思ってました…何でそんなに、体力…余ってる、んですか?」
日付を越えて、25日の明け方。ワタリに初めて『友人の部屋に泊まる』と嘘をついて外泊した。
それに良心が痛まないわけではなかったし、幾ら奔放な性格といえども、良識も持ち合わせている。未成年の―中学生の子供がしていい行為ではないことは十分に承知していたが、それでもここに留まる事を選んだのは、一重に逃げ場が欲しかったからに違いない。
だから、魅上の家に招かれて、『泊まらないか』と誘われた時には、本当に驚いて、魅上の正気を疑ったのにも関わらず頷いてしまった。
外泊が出来たのは魅上が一人暮らしだったからだ。母親は数年前に事故で亡くなったらしく、今は後見人の叔父が、殺風景だと感じる大きな部屋を与えたらしかった。
(こんな所で一人暮らしをしてたら、根性が悪く…いえ、曲がって…、いえいえ、ひねくれて…、ええと…内向的になっても仕方ない事かもしれませんね…)
しかも、生前も女手一つで育てる為に、母親は魅上にはまり構ってやれなかったみたいだから尚更こんなに不器用になってしまったのかもしれない、とえるは思う。
まあ、えるも人の事はいえないのだが。
「…ゃ、っん!」
五月蝿いとばかりにかき混ぜられて、掠れた声を上げた。
いくらえるの体力が人並み以上あるからと言っても、これでは憑り殺されてしまう。
今までのスケジュールはこうだ。
生徒会室から魅上の家へ直行し、また一度交わって、昼食兼、夕食を食べて(ケーキも食べた。えるが半分以上平らげた)、その後風呂に入って、一緒のベットに潜った。
そこまではまあいいが(本当はよくないが)、そこからが大変だった。
……寝かせてくれない。
せめての時間稼ぎに魅上の事を色々聞きだしたので、この一晩で魅上に対する知識が否応なしに深くなってしまった。
まあ、これから本当に付き合おうと云うのだから別段構う事はないのだが、流石に辛い。
「ちょ、ぅっ…ン…ゃっ…ぁっ、もっ…、ゃ…っ…むっ!」
果てしないと形容してもいいくらいに疲れているのに、体が律儀に反応して魅上の背中に力の入らない指で爪を立てる。
唇を塞がれる瞬間、微かにだが魅上が笑った気がして、少しだけ鼓動が強くなった。
「むっ…んっ、んっ、ふっ、んっんぅぅ!」
唇を塞がれたまま、揺さぶられる。抱きすくめられながら突き上げられて、身に染み渡った快感で狂いそうだった。
軽い痙攣を起こして、唇を塞がれたままぐったりする。
「流石に少し寝た方がいいだろう…」
魅上が呟きながらえるを解放する。やっと自由になってひゅっと息を吸い込んだ。
安堵にそっと息を吐いて目を閉じると、隣の魅上が起き上がって衣服を整えだしたので、泥のように重い瞼を仕方なく持ち上げる。
この上、服を着なければ寝られない潔癖症なのかと思えば、起きなくていいと止められた。
「お前は寝ていていい」
「貴方、は…」
「今日の分の学習をこなしていない。怠るワケにはいかない」
「……」
思わず脱力して、さっきよりも重くなった瞼を気合いでこじ開けた。
「では今日の分の睡眠は…」
「必要ない」
キッパリと答えられて、目眩を感じる。
確かに1日くらい寝ずとも大丈夫かも知れないが、体にはよくないと思う。
「そんな事無いです。特に成長途中は睡眠が必要です。…勉強がしたいのならこんな時間になるまでしなければいいのに」
呆れたように非難すると、逆に何を言ってるんだ、といわんばかりの表情で見下ろされた。
「忘れさせろと言ったのはお前だろう」
「………え」
「忘れたのか」
「………いえ」
だからこんな時間まで…と、瞬きの隙間から魅上を眺める。少し、というか、随分と的を外していると思うのだが…。
「…何を笑う」
だが、そこがツボに入って笑ってしまった。
律儀過ぎる。
「…いえ…。でも、そういう事なら尚更行かないで下さい。私を抱きしめて眠ってくれないんですか?」
微笑みながら言うと、少し怯んだ様子で後退るので、何を今更…と魅上の袖を引っ張った。
「勉強なら朝起きて、ご飯を食べて、それからにしましょう。貴方の体も心配です。いいでしょう?」
ゆっくりと起き上がって、シーツで体を隠しながら今度は魅上の手を引っ張った。
まるで棒きれのような動きでベットに戻った魅上が、困惑したように固まったので、そのまま寝かしつけて覆い被さる。
これでもかというくらい型にはまっている癖に、思い込みは激しいし強引な癖に、変なところで消極的。
(何てアンバランスな人だろう…)
「では、お休みなさい」
戸惑った手がえるの体にかけられるのを感じてから、目を閉じた。



…………………
■あとがき
恥ずかし過ぎて、穴があったら入りたい勢いです。あわわわわ!
妄想もここまでくると、手に負えません。Lという人物の面影がどこにも存在しないよ〜〜〜〜う!!!(涙)じょびじょば〜〜〜!(涙)
…恥ずかしい!!!!!
見よ!この鳥肌を!!と今修正している時は思うのに、一心不乱に書き綴っている時はノリノリだったなぁ…などと遠い目で振り返る今日このごろ。
それでももっと照がえるにペースを崩されているところを書きたい所存ですが、次回が終わればいきなり高校生に突入します。
…もっと丁寧に書いても良かったかな…
dataup2007.02.02


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