あれから3年と少し。 またそろそろひぐらしが鳴く。 【ひぐらしの鳴く前に】 「りゅーざき!時間変更!今すぐだって!」 「はい!」 高等学部に移って一年目の春。 2年になったえるは再び生徒会役員になって、忙しく動き回っている。 「夜神くん、お呼びがかかりましたよ!私は他のクラスに行って来ます!」 中高大学とエスカレーター式の学園なので、多少顔ぶれが変わったくらいで、特に基本的な役員に至っては同じメンバーだったりする。 「分かった」 隣のクラスの月に声をかけて、えるはタタッと次のクラスに駆け寄る。 「おい、走るな…」 「…あ」 三年生のクラスが一階で二年は三階。生徒会も三階だ。 階段を登って来た魅上に咎められて、えるは笑う。 「見つかってしまいました」 「…どうしてお前はいてもそうなんだ…」 「…だって遅れると不機嫌になるじゃ無いですか。少しでも変更を早く伝えて都合をつけやすくしようという配慮です」 ジッと見上げると、魅上が溜め息を吐く。 「…だからといって走るな。時間の配慮くらいしている」 「本当てすか?」 「…本当だ。だから走らずに手早く伝えて来い」 「分かりました」 魅上がえるの髪をかき混ぜて、先に生徒会室に入る。えるは乱れた髪を直しながら各クラスの代表を呼びに行く。 「竜崎」 「夜神くん」 最後のクラスまで行って戻って来ると月が教室の前で待っていて「どうかしましたか?」とえるは首を傾げた。 「まとめた代議案、持って行く前にちょっと見せてくれる?」 「分かりました。すぐに持って来ます」 今はもう月と話をしても胸が壊れそうだと思う事は無い。 月も何も無かったように接してくる。 そう、幼馴染みでも無く、その他一般の…他人として。 「はい、どうぞ」 「有難う」 手渡したコピー紙を月がざっと目を通してえるの手に戻して来る。 指の先が少し触れて、月が「ああ、ごめん」と素っ気なく謝った。 「じゃ、行こうか。遅くなると睨まれる。特に竜崎と一緒じゃあね」 シニカルな笑みに、ツクンとどこかに針が刺さったような気になった。 その小さな痛みを無かった事にして、昔よりも一層世に対して淡白になったような、そして毎日を持て余しているように見える月を見上げた。 迷ってから、口を開く。 「…シホさんとも別れたんですか?」 「ああ、そんな感じだね。」 「…」 「幼なじみだからって心配しなくても大丈夫さ。皆、下手な別れ方はしてないよ」 「……、」 いっそ邪悪といった面を向ける月に、えるは何か言おうとして口を噤(ツグ)んだ。 「行儀が悪い」 風呂上がりの魅上がリビングの椅子に脚をあげて座っているえるの首根っこを捕まえ、背もたれへと体を後ろに倒させて小言を口にした。 かと思ったらするっと伸ばされた手がTシャツの上からえるの体をまさぐった。 「まあ成長したな…私のお陰だ、感謝しろよ」 この3年の間に、えるの前では多少柔軟になった魅上が軽口を叩いて、あの頃よりふくよかになったえるの胸を揉む。 「ただの、二次成長です…!本当にもう!」 ふにふにと柔らかさを確かめるように揉まれて、えるは眉間を寄せる。 「まだやっているのか?」 「…ええ。やはり修学旅行は…皆楽しみにしてますから…っていつまで触ってるんですか…!」 ずっと胸囲を締めつけているのが苦手になって、かなりの確率で風呂の後はノーブラのえるの胸を魅上はついでのように触っていて、ひっぺがそうと魅上の手にかける。 「…ぁ…」 それでなくとも変な気分になって来たのに、先端の敏感な所を擦られてピクリと反応してしまった。 「私は隈が酷いお前の為に血行をよくしてやろうとしているだけだが…どうかしたか」 「確信犯はタチが悪いです。…まだ途中なのに、はしたない事をしたくなってしまいました…」 「承知した」 魅上が滅多に見せない笑みを見せてえるを抱き上げる。ぼふん、とベッドにあまり丁寧では無い落とし方をされて文句を言おうとしたが、魅上がすぐに覆い被さって来た。 「ん…」 儀式のような軽いキスの後でお互いの攻防が始まった。 どちらが先に相手の体を震えさせるかが最早恒例行事になっている。 触っていいのは首筋から上だけで、後は舌技にかかっている。 魅上は器用な男だが、それはえるだって負けていない。 機械のように精密に魅上が攻めるなら、えるは自由奔放に攻めたてて見せた。 「…ふ」 本日の戦いはえるの負けのようで、身を震わせた後、唇を離してつっと伝う唾液を拭う。 「…今日の所は負けました」 「私に勝とうなんて百年早い」 「フィフティ・フィフティですけどね」 ふふっと笑うとお得意の半眼で睨まれる。 「でも今日のとこは負けですから…ね」 きゅっと唇の端をあげ、身をゆっくりと起こす。 魅上と場所を入れ替わるようにして、その膝の上にちょこんと座った。 風呂上がりだというのにきちんと止められているシャツのボタンをプチプチと一つずつ外していく。 上着を脱がせて堅い体にペタペタ触ってちゅちゅっと唇で触れた。 順当にズボンにも手をかけ、寛げたそこから多少熱を孕んだ陰茎を取り出した。 指を絡めて遊んでいると頭を持ち上げてくるのでうずくまって啄(ツイバ)むようなキスをしてやる。 男性性器に口をつけるなど、最初は抵抗が強かったが、今はさほど気にならない。それよりもとても不思議だ。 血行がよくなって海面体が上昇。それによって起き上がったり膨張したり堅くなったりするのだろうが、理屈を知っていても尚、不思議だった。 観察するように擦り上げて頬にかかる横髪を耳にかけて、完璧に起き上がったものをアイスでも舐めるように下から上まで舐めあげる。 「…んむ」 はぐっとくわえて舌を絡め、今度は歯を立てないようにして唇で圧迫して奥まで呑み込む。 「ん…んむっ…」 足りない分は手で刺激して頭を上下させた。 大きなものが喉の奥を刺激して辛い。顎も疲れるのであまり好きでは無いが、魅上が熱を持て余したように口許を押さえたりするのは嫌いでは無いから、放つまで続ける。 「…っク」 しばらくして、そろそろかなと思って強めに吸い上げると口の中で精が弾けた。 「ん…にが…」 半分以上を呑み込んで、素直な感想を告げる。 「もっと甘かったらいいのに…」 「…バカを言うな」 大雑把に舌で舐め取って自分のズボンとTシャツを脱いだ。 魅上にとっては勝手知ったる他人の体だろうが、自分で脱ぐのはまだ恥ずかしい。 「そんなにジッと見ないで下さい…」 冷たい瞳だが、今は熱狂的な色が掠めて、ねっとりと絡まる視線に、犯されているように感じてしまう。 白い腕で胸を隠すようにしながら魅上を跨ぐ。付き合って初めてのクリスマスに貰った胸元の赤のネックレスと下の下着だけがえるの身を守るものだ。それを、最後だけ魅上の手で脱がせて貰う。 サイドの結び目をしゅるっと解かれて濡れた粘液が糸を引いた。まだ触られてもいないのにおそらくヌルヌルになっている筈だ。以前に自分の指で確かめさせられた事がある。 腕をとられてゆっくりとした動作で乳房に顔が寄る。 「ゃ…ゃ、ん」 乳房を弄られているのに、下が切なくなる。 蜜が後ろまで伝うぐらいに濡れてしまっている。 せめて内股を擦り寄せたいが、跨いでいる状態でそれは無理だ。 自分の下で熱を持っているそれに擦りつけたいと思った。長い指が欲しい。 でも今日はえるの負けの日。おねだりは…しない。 ヒリヒリして来たのにまだ感じてしまう愛撫に時折腰を揺らす。 限界まで愛液を含んだそこから滴って初めて、腰に当てられていた手が降下して開ききっているそこに侵入して来た。 「ぁぅ」 にゅるっと指が一本挿入されて声を上げる。 「ぁ、も…もっと…」 思わず口走ってはっとする。 「ぃ今の…は、っ」 無しだと言いたかったが2本目が入って来て言葉を飲んだ。 徐々に魅上に寄りかかるようになって来るえるの乳房から魅上が仕方ないとばかりに唇を離した。 魅上はえるの胸を弄るのが趣味のようで、暇さえあれば素手が触れている。セックスの最中は主に口での愛撫ばかりされている。 マザコンぽいかな、と思わないでも無いが、特に気にならない。相手がえるでなければここまでしないだろうという、絶対的な自信があるからかもしれなかった。 「は…ぁ」 だから、必然的にではあるが、体を沈めて抱きついた時に唾液に濡れた胸をむにっと押し当ててやる。 高2になった今でもまだ丸みに欠けるえるの、胸だけが魅上の意志に添うように大きくなったのは冗談では無く魅上の愛撫のせいかもしれないなどと、思ってしまう。 「ぁん…ぁっ…ゃだ」 指が3本に増やされて、さっきまでヒリヒリすると思っていた胸が寂しくなって来た。難儀な体になったものだ。 「ぁっぁっ早く…欲しいです…っ」 すっかり甘えきってしまっている。 何度となく「愛している」と囁かれた結果かもしれない。 月の時は…そう、年齢が若すぎたのもあったし、言葉にすると途端に軽くなってしまう囁きを充分に伝えられないと思ったり、伝えてくれないもどかしさに迷ったりと、そんな月の体を受けいれるので精一杯だったのだ。 誰よりも分かっていると思いながら、常に不安で迷い続けていた。 流されてばかりでは無く、もっと真っ直ぐに向き合いたいと思ったし、言葉ではなく肉体に依存する事で妥協したりなんてしたくは無いとは思っていたが、当時はそれでいっぱいいっぱいだった。 あまりに思いが強すぎて愛想を尽かされるのが怖かった。 「キスして…触って、もっと、満たして…っ下さ…い」 貴方の全てで愛して欲しいと懇願する。 「…私の事を愛しているか」 「はい」 「夜神よりも…か?」 「…ええ」 「ならいい」 ぐちゅぐちゅと音をさせながら、柔らかくされたナカから指が抜ける。 「ゃ…っ」 空虚なそこに膨大な質量が隙間無くえるを埋めて行く。 「ぅ、…んっ…魅上さ…」 「照でいいと言っている筈だが…」 魅上の言葉を耳にしながら、その形を意識して背筋を強張らせる。 未だ名前は呼べずとも、優しくきつく魅上を包んで、気持ちよくなってしまう。とても。 「そのうち、に。…それより…、気持ち、ぃ…です、か?」 根元まで呑み込んで、喘ぎを制して潤んだ瞳で問いかける。 「とてもな」 こんな時にでも平坦な声はとてもそんな風には聞こえないが、堅く張り詰めて、脈打つそこは確かに気持ちよさそうで安心する。 最終的なイニチアシブは魅上が握っていたそうなので、表情や声はそれによるものだろうと納得させた。 「…とてもだ」 繰り返されて、えるは笑う。どうやら不安を見越されたみたいだ。 「でなければ朝までしたりしない」 「…それは、勘弁して下さい、ね」 翌日が辛いんですから、と囁いて唇を重ねる。 胸を体温の低い手が包み込む。 入れたまま更に押し付けられて漏れた声は魅上の咥内に吸い込まれた。 ………………… ■あとがき 高校バージョン、しょっぱなからエロでごめんなさーい!!ぎゃひ! そして、魅上が変態ぽくて申し訳ありませんでした。いや…何か魅上って本誌でアレですけど、マザコンぽいなーという独断と偏見で…、はい。 一応、中学生の時よりかはエロ度を上げようと努力したつもりではありますが…。書き手に問題アリです。無駄に18禁です。 次回はようやく、月とえるの二人っきりの会話です…!ふう! もう10話をきりましたが、少しでも楽しんでいただけるようにこれからも頑張ります! dataup2007.02.13 next→ …………………… [0]TOP-Mobile- |