−COUNT5− なあ。 俺を見てくれよ。 俺だけを見て。 それで・・・。 俺だけに色んな表情みせてくれたら。 嬉しいのに。 なあ。 犬飼。 俺には時間が無いのだから。 「おい、猿」 うとうと・・・うとうと・・・・ 「猿っ!」 あー、なんか犬飼の声が聞こえるよ・・・。何でだ?犬飼は俺と同じ教室じゃねーのに。 それとも沢松の声を俺が勝手に犬飼の声に変換しているとでもいうのだろうか? ごめん、沢松。友情は薄かったわ☆(てへ☆)って嘘々。 お前の事親友と書いて家畜と呼ぶだけの仲ではあるよ。 っていう事は・・・? 本当に犬っころの声なんか? 例えば・・・?部活の最中・・・はねーだろ・・・そんな暇無いっつーの。 だったら、俺が犬飼に声掛けられるスチュエーションってどんなところだ? あ。 分かったサボリで屋上で寝てたときかも。 あー。これっぽいなー。うん。昼休みって線もあるし。 っていうか、早く起きなきゃな・・・。犬がきゃんきゃん騒ぐから。 「さ〜〜〜〜〜るっ!!!起きろっ!!!!」 あ。ほらほら。思った通り。なんて短気な犬なんでしょう・・・。 大丈夫、直ぐに起きるから。 ちゃんと起きるから。 そんな大声出さなくてもいいっつーの。 「む〜〜〜〜。うるせ・・・・」 俺はやっと声を出した。 「なんだよ・・・。もう次の時間かよ・・・?」 「は?何言ってやがるクソ猿」 俺の寝ぼけた合いの手に、犬飼はワケが分からないと言った風な声で返してきた。 「寝ぼけてんじゃねーよ、猿。鍵返しにいくんじゃねーのかよ」 「うあ?・・・・?あ〜〜〜〜!!そうだった〜〜〜っ!今何時だよ?!犬飼っ!今何時?!っていうか〜〜〜!腕痺れた〜〜〜!う・・・・じんじんして動かせね・・・」 「は?やわな腕だな。・・・とりあえずまだ6時30分だ・・・。まだ余裕だろ」 「・・・これは鍛えりゃどうにかなるってもんでも・・・・俺は無いと思うんだけどな〜〜。まあ、なれりゃ大丈夫なんだろーけど・・・し・・・痺れる・・・喋るのも揺れて・・・」 「はあ。全く世話のやける猿だな・・・。ったく、荒療治だ・・・」 「なんか嫌な予感がするんですけど・・・」 俺が冷や汗を掻いて犬飼を見ると犬はにやりと愉快そうに笑った。にやり・・・と。 「ほら」 「ぎゃあああああああ」 犬飼はにやりと笑うと俺の腕をぎゅっ☆と握った。 電気が走るような痺れが脳内に駆け抜ける。 「慣らせ」 「ひゃおううううううう!!」 「これは血行が悪くてこうなってんだろ?揉めば・・・」 「やめろおおおおおおお」 俺はあまりにもの感覚に床に小さく丸まるようにしてしゃがみ込んだ。 「ほれほれ・・・」 「この・・・っ性悪犬〜〜〜〜」 「何とでも言え。俺は痛くも痒くもねえ」 そりゃそーだろうよ、痛くて、微妙に痒い気もするのは俺だっつーの。 でも犬飼に揉まれて腕の血行が良くなって来ているからか、普通に耐え忍ぶのよりも早く痺れは去って行ってるいるような気がした。 「ふふふふ」 犬飼の仕打ちに痛みとか何だとかが、去っていったのを確認して、俺は密やかに笑い声を上げた。 「なんだ猿。きしょいぞ」 「はははは!もうその攻撃も効きませ〜ん!!何故なら俺の腕は軽やかに回復したからだ!!どうだ!ざまあみろ!」 「何がざまあみろ、だ。俺は一滴たりともざまあな感じはねーっての。っていうか、とりあえず、人の恩を攻撃とか言いやがって。お前が素早く任務につけるようにナイスな俺が気を利かせて、お前の腕の回復を促してやったって話だろうがよ。どこが攻撃だ。あ?」 高らかに笑う俺に犬飼がその黒い顔に逆光の為か、影を落として真っ黒にしながら詰めよって来る。 「う・・・うう。だからって・・・あんな回復促進のし方は〜〜〜〜っ。っていうか早く鍵を返しにいけるようにするんだったら俺の腕が痺れる前に・・・いやむしろ俺が寝入ってしまう前にさっさと出てくりゃいいんじゃねーかよ〜〜〜」 恨みがましく頭脳を働かせて文句を捻り出すと、犬飼は呆れたような表情で嘆息した。 「何言ってやがる・・・。俺は5分で上がって来た。その僅か5分の間に寝こけ、あまつさえ、腕を痺らせたのはお前の落ち度だ、猿。違うか?!」 「あ〜〜〜。う〜〜〜。悪かった・・・・よ。寝こけて・・・」 「それだけか?」 促すようにふふんと迫られて俺はぐっと詰まった後やけくそ気味に言った。 「ご〜め〜んっって!!!私が悪う御座いました!親切な(感じもしないでもない)コゲ犬様のご好意を素直に受け入れなくてごめんなさいねっ!!」 「・・・誠意が感じられねえ」 これだから猿は・・・と嘆息されて俺はぷうっと頬を膨らませた。 「もー!もー!何て言えば気が済むんだ!このお犬様は」 「人間、もとい猿の最低限な社会のルール」 「・・・むうっ!だからっ。ありがとうな!」 「・・・良く出来たな・・・・猿にしては」 犬飼のくそむかつく誉め言葉(?)に俺はぎっと睨み付けようとしたけれど、それは失敗に終った。 バカヤロー! そんな顔で笑われたら、何も言えなくなっちまうじゃねーかっ!反則犬〜〜〜!! っていうか思わず顔を俯けてしまったりするじゃねーかっ! そんでついでに顔も赤くなりそうになっちまったりするんだよ! どうでもいいけど、いつまで腕握ってんだよ! 気になるんだよ! 「っていうか、こんな事してる間に刻々と時間が〜〜っ!早く鍵返しにいかねーと!」 「おう、行ってこい。お猿のおつかい!」 「きいいいい!!っていうかマジそんな事いってる場合じゃねえ!早く出ろ!犬っ」 俺から犬飼の手を振り解けるはずも無く、犬飼に自然な風に見えるように離してもらって顔が赤いのとかを悟られないようにぐいぐい犬飼を部室の外へと追いやる。 自分の鞄も引っ提げて犬飼を押出すと速攻で俺は部室の電気を消して、鍵を閉める。 「じゃあまた後でな!犬っ!!っていうか俺の荷物もあわよくば見張っているがいい!番犬冥!」 そう言って俺は自分の荷物を犬飼に押し付けるとダッシュで校舎の方へと向かって行った。 なあ、犬飼。 お前ちょっとだけ、俺に色んな顔みせてくれるようになったよな。 俺だけをその琥珀の瞳に映してくれる時間もつくってくれたよな。 へへへ。 何?笑うなって? きしょい? し方ねえだろ? 人間嬉しかったら笑うし、哀しかったら泣きもするぜ。 まあ、お前は怒ってばっかだけどな・・・。 でも、楽しい時には笑ってた。 アレ反則だぜ? だってもっともっとって望んじまうじゃねーかよ。 ただ、俺は振り向いてくれるだけで良かった。 犬っころがまあ、怒ったり・・・まあコレは一発クリアだけど、苛立ったり、時には楽しそうな顔をみせてくれたら・・・尚嬉しいんだけど。 だけど、 俺・・・。 俺・・・犬飼に・・・・ ////To be continiued///// …………………… [0]TOP-Mobile- |