■【裁きの剣】■ 01

大地は灼熱の砂で埋めつくされ、世界は点在するオアシスを中心に栄えた。

誰も気になんてしないけど、そんな世の中の一つのお話。



【裁きの剣】

もしも、と。
それを願わない筈は無いだろう。



「…父さん」
「どうした、月?」
涼しげな目元に少し退屈な色が混じっている。
「今年の収穫高…まとめておいたよ」
「うむ。いつも済まないな」
総一郎は息子から渡された紙の束を受け取り、丁寧な字で書かれた文字をざっと読み取る。
「いや、管轄外とはいえ、これが僕の仕事だからね」
「…そうだな。よし、もう行っていいぞ、月官房官」
「解りました、宰相。では僕はー…」
これで…、そう言いかけた月に総一郎は済まない、と声をかけた。
「?」
「…済まない、伝えそびる所だった。実は著名な旅占い師が今我が国を訪れていてな。女王が余興をお望みだ。お前には客人の案内を頼みたい。…大層な…そのひねくれ者と言うか…一筋縄では行かないらしくてな…」
他の者が女王への謁見を薦めても「興味無いですから」と無碍に断られるらしい。
「…へえ…ミサ…女王が?…うちは占いなんかに頼らなくてもちゃんと栄えてると思うけどね…」
本当に何の障害も無いくらい自分の思い通りに…。
口元の小さな嘲りを一瞬で隠して月は分かった、と返事をする。
「それで女王の不安が少しでも減るっていうのなら、行って来るよ。占い師っていうのに興味が無いワケじゃ無いし…」
「そうか…また済まないな…。」
総一郎が言うのに「いいさ」と答える。
「今この国は凄く平和で僕の仕事なんか殆ど無いみたいだしね。夕方、行って来るよ。その占い師とやらの所に」
それじゃあ、
最後はきちんと礼をとって退出する月に総一郎は一言頼む、と言いおいた。


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