■【らぶラブらぶ】■ 08

… side アーサー …

夕食を済ませてシャワーを浴び、アーサーはベッドに座るとくあっと欠伸を漏らした。体が心地よく気だるい。
ぐーっと背筋を伸ばしてパタリとベッドに倒れこむ。今日はなんというか不思議な一日だったな、とアーサーは思った。休日に本田とお茶をすることはあったが、それでもお互いの家であって一緒に外出はしたことはない。何故か。そんなものはそもそも両手で足りるくらいしか一緒に過ごした事がないからに決まっている。
アーサー自身忙しかったし、小学生の頃に本田が病気でクラスが遅れてしまった。普通クラスが離れたというだけで疎遠になるものなのに、学年が離れてしまっては余計に仕方のない事だろう。
兎も角そんな感じでアーサーは友人と休日に外出した事がない。だから今日の事は全てが未知の領域で。
(…楽しかったな…)
ほんとに色んな事が刺激的だった。
アーサーの休日といえば、学校では習わない事を勉強するか、社交界などに連れだされるかのどちらかだ。それを不満に思ったことはなかったが、今日一日で休日の過ごし方の見方が少しばかり変わったのは事実だ。
フランシスなどがアホのように遊びまくっている行状を見るにつけ見下していたものだが、この一日を体験した後では「息抜きは大切よ」というフランスの言も成程一理あると頷くことが出来た。
だからと奴のもう一つの主張。色恋は人生の最大のスパイス、なんて戯言を言ってほいほいと恋人を変えるのは全く理解できないけれど。
布団に潜り込んで今日預かったイルカのぬいぐるみを引き寄せる。抱き枕兼用のぬいぐるみは抱きしめてみると心地よい抱き心地でアーサーはうっとりと目を閉じた。
今日は休日だったのでルートヴィッヒに夕飯の支度を任せてしまったが、明日からは頑張ろうと思う。それがこの家に来た条件の一つなのだから。
寝るには少し早い時間であるけれど、もう家督の為に深夜まで勉強する必要もない。勉強は嫌いではなかったが、今は新しい生活がある。その為に早く寝られるというのなら、それはそれで結構な事だ。
住み着いたばかりの部屋だが、実家にある自分の部屋よりも居心地が良い気がするのに不思議な感覚を覚えつつ、アーサーはゆっくりと目を閉じた。
(明日やることは…)
家事もそうだが、学校の事もきちんとやりたい。
秋までは生徒会の役目がある。それまでは早寝早起きをして、頑張ろうと想いながら、アーサーは心地よい疲れの中、意識をふっと手放した。


というワケで朝である。
ぐっすりと眠れてスッキリ目が覚めると、とてもいい気分になれる。それだけで、今日という一日が順調に進みそうな気がするのだから、単純なものである。
アーサーは目の端を擦ってからうんと背伸びをした。カーテンを開けてまだ陽の登り切らない薄い闇を見つめる。
昨日の天気予報では晴れると言っていたから、もう少しすれば太陽も顔を出すのだろうけれど、流石に今は暗いから、カーテンを閉めて、電気をつけてベストを着用する事にした。
夜寝る時に外している胸を隠す為の専用のベストを着用せずに部屋の外に出るのは非情にまずい。面倒臭い事ではあるが、一度パジャマの上着を脱ぐという行程は避けられないだろう。
(まあ、制服に着替えてから洗面でも別に構わねぇんだけどな)
そう思いながらもやはりこう制服が汚れたりするのが気前が悪いので、アーサーはパジャマのボタンに指をかけた。
前ボタンを外して、露わになったその膨らみを見下ろす。あばらが浮いているというのに、胸は緩やかな曲線を描いている。大きくは無い。しかし小さすぎるともいえないだろう。ふにふにと自分についているそれを揉んでみると、こぶりではあるが、しっかりとした脂肪の感触を伝えて来て溜息をつく。学園生活を送る上では不便極まりないものである。こんなものは無用の長物である…が。
(まぁ、でも今となっちゃあ、あるにはこしたことねぇ…かな?)
まじまじと見下ろしながら、これからの事を考える。卒業したあと、不本意極まりない事態に陥ることを避ける為にここに来たのだ。有体に言えば有力な嫁候補である事で自分の身を本家から守って貰うという算段である。上手くいけばどちらかの嫁になってバイルシュミット家を支える、出来なければ社員として働く…という約束を彼らの父親と交わしたのだが、社員として働く、というのは避けたい事態であった。それではアーサーにとって後ろ盾が弱すぎる。結婚も婚約もしないようだと踏まれれば恐らく連れ戻されるだろう。そうなればバイルシュミット家にとってマイナスだ。
この話を持ち出した時に「どっちも駄目だったら私のようなおじさんでよければ結婚しようか?」などと笑っていたので、そういう事になるのだろうと予想はしている。冗談交じりではあったが、本気だろう。慈善事業ではない。多少なりとも旨みがなければ、アーサーを手元に置くなどという事はやっていられまい。何しろ下手に重用して技術だけ盗まれて逃げられる可能性だってある。
(別にそれでも構わねーけど…)
アーサーは構わなくても、周りは構うだろう。その結婚が仮面である事はお互い承知している。恐らく手を握る事さえないだろうが、それでも周囲…特にここの兄弟は気にする事は間違いない。
だから、出来れば。兄弟のどちらかの相手に収まったほうが風波が立たなくて良い。
アーサーは軽く溜息をついて専用のベストを着こんでパジャマを着用し、そしてカーディガンを羽織った。今は流石にそこまでしないが、制服のズボンを穿く時にはショーツの上からトランクスを穿いて偽装もしている。用心にこしたことはない。
なるべく音を立てないように気をつけながら洗面所に移動すると、シャコシャコと歯を磨きながらぼんやりと目の前の鏡に映った自分を眺めてみた。
今日も絶賛垢抜けない。
(…でもなぁ…これじゃ不味いんだろうなぁ…)
卒業するまで、女という事がバレてはいけない。これは絶対である。そんな事になれば保護者の権限で療養などと名目をつけて幽閉されるのがオチだ。もしかしたら一生そのままかもしれない。アーサーには心配して乗り込んで来てくれるような友達もいないし、本田は友達ではあるけれど、親友という仲でもないから期待などできない。
だから、バレるわけにはいかない。そのような意味では垢抜けなく、可憐な女っぽく無いのは有り難い事なのだが…。
(誘惑しろったってどうすりゃいいんだよ…)
チッと思わず舌打ちをする。最終的には彼らの父親が控えているとはいえ、兄弟どちらかの結婚相手に収まるのが理想的である。そこに恋愛感情がなかろうと構わないが、兄はともかく弟の方は超がつく程純情である。政略結婚などというのは望まないだろう。
(んで、兄の方の好みはエリザベータだろ?)
絶望的だ。どんだけハードルが高いのだろうか。
怒ると怖いが、ローデリヒの横で笑っている彼女はとても綺麗でとても可愛い。美人でグラマラスで外見だけでいうとアーサーの好みのタイプである。性格でいうと、リヒのような淑やかな女性の方が好きなのだが。
(まあ、俺のタイプはどうでもいいとして…)
エリザベータである。
(ぜってー無理だろ)
腕組をして鏡の中の自分をみつめる。垢抜けないというか、芋臭いというか。芋は兄弟の好物らしいが、芋臭いのは特に好きでもないだろう。
ましてやエリザベータなんて高嶺の花である。自分の容姿とスタイルを検分してちょっと笑ってしまった。
せめて乳はもっとあるべきである。乳というか、全体的に肉付きがよろしくないのでまるみが欲しい所だ。まあ、今まるみが出来ても困るのだけれど。
(どーしろってんだか…)
がりがりと頭を掻いて溜息をつく。
学園には女だとバレてはいけないけれど、兄弟のどちらかといい雰囲気にはなっておくべきだなんて、笑えるくらい無理難題だ。
アーサーには恋愛経験も皆無であれば、交友関係だって猫の額ほどの範囲しかない。自分の性格を考えれば、そもそも二人と友達になるのだって難しい。
ここ二日の兄弟の態度をみるに、そこまで嫌われてはいないように思えたが、アーサーは学園の鼻つまみ者である。好いて貰えるとも思えない。
アーサーは再度重苦しく息を吐くと鏡から目を離した。
とりあえず、誠実であればどうにかなると思いたい。後はベストで隠れる程度くらいならばバストアップするように努めるべきだろう。
そんな事を思いながら口を漱ぎ、髪を梳き終わった頃に、二階の扉が開く音がした。
「おはよう」
アーサーが次のルートヴィッヒの為に洗面所を整えていると予想通りルートヴィッヒが洗面所に顔を出した。
確か昨日はアーサーに少し遅れて起きて来たので今日もそうだろうと踏んでいたがビンゴだったようだ。
どうやら弟の方はとても早起きらしい。朝にジョギングがてら犬達の散歩をするようだし、洗濯や簡単な掃除も朝にやるようで、交代のようだが勿論朝食の支度もしているようだった。
(なんつーか生真面目だよなぁ…)
女の子であれば外見はちょっと厳つそうな感じが残りそうな予感はしたが、凄くいいお嫁さんになりそうだなぁ、などと思いながらアーサーも朝の挨拶をし返した。
「ああ、おはよう。早いな」
「お前こそ」
ほんの少し寝ぼけた声にアーサーは口角を上げる。きちっとしたルートヴィッヒといえども寝起きはこんなものらしい。前髪を下ろしている姿は歳相応な感じがする。先日は変なことを言われて濁されたが、家にいる間くらいこっちでいればいいのにと思わなくもない。アーサーはタオルを手渡した事に対する礼を聞きながら口を開いた。
「朝食の準備は40分後でいいんだよな?」
「ああ。」
あどけない仕草でこくりと頷かれてアーサーはちょっと微笑んだ。ムキムキと厳つい顔をされているより、寝ぼけた感じで隙がある方が可愛げがある。
アーサーは了承を告げて洗面所を後にして部屋に戻ると、カーテンと窓を開いた。薄らと太陽の光を浴びて、新鮮な空気を肺の奥まで吸い込んだ。まだまだ寒いがすっきりとした水色の空がとても気持ちいい。
「うん。今日は晴れそうだな」
ニュースで確認していたが、どうやら予報通りのようだ。洗濯物は外に干して行っても大丈夫だろう。
アーサーは気合を入れて外の庭木に水をやる為に部屋を出た。


「サラダの用意をして貰えるか?」
一通りの用事を済ませて、約束通り朝食の手伝いの時間になると、アーサーは大まじめに頷いた。
初日大失敗してしまったアーサーに任せられているのは、鍋を用意したりする以外には当面サラダのみだ。
しかし、サラダといえども緊張をする。アーサーはまな板にのっているきゅうりを見て目を細めた。包丁を握る手に若干力がこもる。
「………」
レタスはいい。手で千切るだけで済むので気が楽だ。きゅうりもまだいい。問題はトマトだ。
「そんなに緊張するな。」
そんな事を言われても、緊張してしまうものは仕方が無い。刺繍でこまごましたものを縫うよりも簡単そうに思えるのに、なかなかどうして難しいものだ。
アーサーは呼吸を整えると、きゅうりに包丁をいれた。なんだか体に余分に力が入る。ヘタを落としてゆっくりではあるが斜め切り落とす。全神経を集中させて無言で取り組んで、途中で息をしていない事に気がついた。
一度手を離して大きく息を吸い込む。なんだかやけに疲れる作業だ。ルートヴィッヒはよくもこんな作業を素面で軽やかに出来るものだと隣を見やった。
二つ下のルートヴィッヒは慣れた手つきでヴルストを炒っている。なんか向こうの方が簡単なような気がするのだが、包丁を持ちたいと言ったのはアーサーだ。今更そっちがしたいというのも子供のようで気がひける。
仕方なしにまな板に視線を戻して、なんとかきゅうりを全て切ることに成功して体の力を抜いた。
しかし最後に控えしは、トマトである。
「大丈夫か?」
ヘタを取る際に握りつぶしてしまったのは記憶に新しい。どうも手に持って包丁を入れるというのは、まだアーサーにはレベルが高すぎるようだ。
「全部切ってしまってから落としてもいいんだぞ?」
「いや、くりぬいてみてぇ」
決意を込めて言い切ると、ルートヴィッヒは眉尻を落とした。どうして初心者に難しい方法を教えてしまったのかと思っているようだ。しかし、基本はこうだが、と言われたらやるのが男というものだろう。と、いうか本当は一番やりやすいやり方でやるのだっていいのだけれど、なんかくりぬく方が料理が出来ます!という感じがして格好いいと思ってしまったのだ。実のところ。
「気をつけろよ」とだけ言って黙認してくれたので、アーサーは気合を込めてトマトを見つめる。包丁を入れる前から手に力が入る。何か今にもトマトを握り潰してしまいそうで気が気じゃないが、そんなことは成長というステップの前では些細なことだ。
「…お前何してんの?」
いざ参らん!とした所で声をかけられて、アーサーは殺気立った視線をギルベルトにやった。そこには未だ寝起きのままの格好のギルベルトが呆れた顔をして突っ立っている。
「見て分かんねぇのかよ。トマトのヘタを取るんだよ。邪魔すんな」
「いや、そんな射殺しそうな目をしてするようなもんじゃねーだろ。見てて恐ろしいぜ」
ふあっと欠伸をしながらこちらに向かって来たので思わず包丁を向ける。ギルベルトがうおっと慌てた声を出した。
「ちょっ、おまっ!」
「あ、アーサー!包丁を人に向けるな!」
ルートヴィッヒにも諌められてはっと我に返った。確かに包丁を突きつけるのはまずかった。慌てて包丁をまな板の上に置く。
「…わ、悪ぃ。つい」
「ついで包丁を向ける奴がいるかよ!マジ心臓に悪いぜ!」
非難されて思わず唇を尖らせた。悪いとは思っているが、不用意に初心者に近付く方だって悪いに決まっている。
「お前が急に寄って来るのだって悪いだろ!」
「あー?だからっつったってよぉ」
はぁ、と溜息を吐かれてアーサーは不満げにギルベルトを睨む。ギルベルトは肩を竦めてもう一度アーサーに近付いてきた。
「なっ、なんだよ!これは自分でやるんだからな!」
「分かったって。でも手伝うくらいいいだろ。恐ろしくて見てらんねぇ」
トマトを守るようにしながら距離を取れば、ギルベルトはそう言ってアーサーをまな板の前まで連れ戻し、アーサーの背後から腕を伸ばした。
「とりあえず、一度トマトを寄越せよ。今にも指が食い込みそうじゃねーか」
「………」
ほら、と手の平を突きだされてアーサーはしばし考える。何をするつもりかは知らないが、やらせてくれるつもりはあるようだ。肩の力を抜いて無言でトマトをギルベルトの手の平に乗せると、彼はそのままアーサーの手に自分の手を重ねて来た。自然体の距離もより近づいて、密着といってもいいほどに体がくっついた。
「こんくらい」
「は?」
トマトを持っている方の手を重ね合わせた手に押しつけて「持つ感じ」とギルベルトが言ったので小首を傾げた。すぐに合点がいって「…ああ」と頷く。どうやら手取り足とりレクチャーしてくれるらしい。
「これ以上力入れんなよ。完熟ものだったら一発でアウトだぜ」
言われてコクリと頷いた。どうにも心もとないくらいの力だが、隣のルートヴィッヒも何も言わないのでそういう事なのだろう。
(…畜生。なんか悔しいな…)
どうやらギルベルトもそれなりに料理が出来るようである。なんだか負けた気分で不貞腐れながらも、教えてくれるのならばそれに従う他はない。
「んで、次は包丁な。とりあえず握ってみろよ」
言葉に従って包丁をむんずと握ると肩に力が入るのが分かった。ギルベルトがおいおいと苦笑する。
「もっと力抜けねーかよ」
「………」
指摘されて意識して力を抜くように務めたがギルベルトは「うーん」と唸っている。しかし、これ以上力を抜くと包丁が落下しそうで怖いのだ。
「まぁ、仕方ねーか…」
何度か離しては深呼吸して握るのを繰り返していたが、途中で妥協したようだ。ギルベルトは肩を竦めると、両手をアーサーの手の上に重ねてゆっくりと動かした。
「自分で動かすんじゃねーぞ」
「…分かった…」
包丁の角がゆっくりとトマトに食い込む。固唾を飲んで見守っていると、昨日ルートヴィッヒに見せて貰ったお手本よりもぎこちなくはあったが、少しずつ刃が沈んで行った。
一周回って、命令通り親指を伸ばしてヘタに添える。くっとヘタが取れて思わず後ろを振り返った。
「…あ、危なねぇぞ…」
「あっ、悪い!」
嬉しさに顔が緩む。包丁をまな板の上に置くと、オムレツを作り終わったルートヴィッヒにトマトを見せびらかした。
「今日は潰れなかったぞ!」
「昨日は潰したのかよ」
ケセセと笑われて、むっとしたが今回の功績に目を瞑ることにする。ルートヴィッヒが「良かったな」と苦笑したので、「次は一人でやってみせるからな!」と豪語する。
コツが掴めた、とまでは言わないが、恐らく握り潰すことはしないで済むだろうとにこにこしていると「続きすんぞー」と間延びた声で促された。
「ん?」
「トマト置けよ」
どうやら最後まで手伝ってくれるらしい。まな板に置いて切るぐらいは出来るのに、と思ったが、まあレクチャーされた方が加減が分かり易くていいので、言われた通りにした。
「あー、そんな感じ。余計な力が抜けたじゃねーか」
褒められたわけではないが成長した事を指摘されると、心がむずむずとした。きっとしまりの無い顔をしているはずだ。
今度もうまく包丁が入ってアーサーはびっくりする。今しがたきゅうりを切った時とは大違いだ。しかしこの男、見た目と普段の生活態度に反して教えるのが結構うまいではないか、とアーサーはほんのちょっとばかりギルベルトの事を見直したが、
「俺様の栄誉を称えてこのトマトは俺のもの〜♪」
綺麗に切り終わった途端に端数になったトマトを行儀悪くひょいと口の中に放り込むのを見て「お前なぁ」と呆れた。なんというか子供のような奴だ。ルートヴィッヒの方がよほど落ちついている。
「つーか、顔洗ってねぇんじゃねーの?」
思わず口を出さずにはいられないほど、危うく見えたのだろうとは思うが、それとこれとは別の話である。アーサーが指摘すると、「そうだった」といわれたので「さっさと洗って来いよ」と背中を押しだした。
ルートヴィッヒがコーヒーを淹れているので、アーサーはテーブルを整える。朝食が済めば、アーサーは洗い物を済ませて洗濯物を干してから学校である。今まで忙しい時を除いて朝は生徒会室に寄った事はなかったが、放課後を有効活用する為に今日からは粗方の用は朝に済ませる事にした。セーシェルやフランシスにはどうした風の吹き回しだと言われるだろうが適当に濁しておこうと思っている。そもそもこの二人でさえ常時生徒会室にいるわけではないからしばらくは気付かないだろうけれど。
朝食を食べ終わって、予定通りに事を進めると、アーサーはギルベルトを置いて学校へと向かった。


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